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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第1章
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【第1話:笑顔の必要がある】

船内の居住スペースは最小設計のユニットが組まれていた。

あくまで外縁星系開拓用に設計された船なので、快適性は二の次で資材を大量に持ち込むはずだった。

二人の寝室は共用で、そのままキッチンでもありリビングでもある。

別室はシャワーとトイレだけだ。

ちなみにトイレとシャワーは同じボックスが変形して対応する。

今はベッドは片付けられ小さな二人用テーブルセット一つと、ミニキッチンが壁にある。

ジュノが淹れたお茶が香り高くヴェスタに提供される。

ふたりの体格は似ていて、すこしジュノがスマートくらいの差だ。

外部探索用のガーダーを外すと保護スーツは、ブーツと首・腰回りに細いリング状のガーダーが残るだけで、ぴったり張り付くので残りは身体のラインをそのまま示す。

下着も付けないので色々とデザインを浮かばせてしまうのだった。

脱ぐ時はブーツとこの二本のリングを外すだけで、身体を覆う白い保護膜はすべてそこに収納可能だ。

今の二人のように、任意の部分を素肌にも出来て快適な着心地だ。

ジュノはブーツ+七分丈レギンス+ノースリーブのような姿で、滑らかな琥珀色の肌をだしている。

白い陶器にも見えるカップで湯気のあがる紅茶をヴェスタに手渡す。

「ありがと、ジュノはお茶いれるの上手だよね」

受け取ったヴェスタも薄着にしており、ブーツ+ショートパンツ+チューブトップで露出過多にミルクのような白い肌。

船内の空調を切っているので、少し暑いのだった。

「えへへ‥‥ママが好きだったの紅茶」

そういってヴェスタの向かいに座るジュノは照れたのかちょっと頬を染めて笑った。

少しだけお茶を楽しむ時間を挟んで、方針会議は続いた。

「ここまで設備が無いとなると‥‥設備を作るための素材、その素材を精製する設備と‥‥きりがなくなるね」

ジュノの声には不安はあるが悲嘆はない。

ジュノは泣かない強い子なのだった。

「そうね‥‥アイカ、復旧までのプロット任せるから、ティア‥‥つまり脱出計画ごとの目標だけちょうだい」

ヴェスタが船内AIたるアイカに指示をだした。

『現在のティア1への目標は木材を20トンです』

ちょっとだけ考えるヴェスタ。

「並行して進められる目標と必須の目標をだして」

ヴェスタの指示にジュノが困ったように言う。

「待ってよヴェスタ‥‥20トンは簡単じゃないよ?重機もないし、トラックすらない」

「あ‥‥そっか」

ヴェスタも思い至る。

「あたしデッドリフトなら120kgまでいける!」

「つよ?!」

ジュノの宣言にヴェスタは驚いた。

『運搬を想定するのでしたら、あまり参照できない数字と思われます』

アイカのマシンヴォイスはとても感情豊かに再現される。

AIの性格かもしれない。

こめられたのは皮肉だった。

「くぅん‥‥がんばるものジュノ」

「うんうん、ありがとうね。アイカ意地悪いわないのね」

『了解いたしました』

人間よりも表情のあるAIの声だった。

こめられたのは「元気になってよかった」だった。

「アイカに心配されるようじゃダメね、もう少しゆったりすすめましょう」

落ち着いたヴェスタの声には力がもどった。

「二人でやらないと、伐採も運搬も効率悪いけど‥‥船体側のタスクもあるよね?」

『そうですね、現状は一人の人足で2日分あります』

アイカの回答に考え込むヴェスタ。

「偵察もいちどしてきたいな」

ジュノの提案は戦闘リーダーとしての責任からだろう。

ジュノはあまり射撃戦が得意ではないが、近接戦闘が得意だ。

ヴェスタは戦闘自体が得意ではないのでジュノがリーダーだ。

ヴェスタはきりりと眉をあげる。

「悲観的になればいいともいえないけど、楽観では生き延びることすらできない」

ジュノはこまり眉

「だって‥‥これからずっとここで生きていくのよ?つかれちゃうよ‥‥そもそも人出がたりないよ?」

ヴェスタは思案する。

こういった状況断片から最適解を導くのはヴェスタの得意分野だ。

「‥‥そうね。ねえアイカ?戦闘用の義体はないの?」

船の制御AIたるアイカの電子音が答える。

「ティア2に進めば最低限のものは準備可能です」

ヴェスタもジュノも視線をかわし、しょんぼり。

「そこに至る人出が足りないのよ‥‥」

「そうだよねえ‥‥なんだかお腹がすいたわ」

ジュノはお腹に両手をあてて眉をさげた。

「ご飯を食べたら、一旦偵察して船体側タスクだけしよう。採取は明日から始めましょう」

「りょーかい!」

『可能な限りバックアップいたします』

ここはキャップテンとして笑顔がいるなとヴェスタは思う。

ヴェスタが笑顔になり、ジュノもにっこり笑えた。

アイカの声にも少し安堵がまじった。




アイカが出してくれた武装は電磁発射式のハンドガン一丁だった。

「は‥‥ハンドガンか‥‥まぁ軽くていいわね」

ヴェスタはたらりと汗が落ちる。

「うん‥しかも一丁しかない‥‥あたしのナイフも一本あるけど」

ジュノのナイフはチタン合金のサバイバルナイフで、刃渡りが15cmほどだ。

『現状の仮想的は防具のない人間を同数までと想定しています。これ以上はプロジェクト進行に影響が大きいと判断しました』

アイカの声にも申し訳ない響き。

「せめてライフルくらいは‥‥」

ヴェスタの意見にアイカが答える。

『現状ですと少なくとも鉄と錫と銅くらいないと無理です。偵察しながら探索もお願いします』

うんうんとうなずく二人。

「ヴェスタがもって。私より射撃上手だし」

ジュノは防具を付け、腰のガーダー後ろにナイフも装備した。

ヴェスタがアイカに尋ねる。

「弾丸はこれで全部?」

電磁式ハンドガンの弾はニードルバレットで、直径2ミリ全長30ミリの針のような弾丸が銃把に30発入る。

『そのマガジンで終わりです。鉄が手に入れば増産可能です。威力が落ちますが銅でも作れます』

マガジンを抜いて装填を確認したヴェスタが銃把にガチャンともどした。

セレクターを確認して呟く。

「3点射までできるのね‥‥ジュノのバックアップがつとまればいいけど‥‥」

「がんばろうヴェスタ。まずは色んな事に慣れていこうよ!楽しもう!」

ジュノの明るい声にすこし勇気をもらうヴェスタ。

「そうね‥‥それくらいがいいわねきっと!楽しみましょう、このトラブルも」

ジュノの笑顔はとても魅力的で、ヴェスタは自分には無理だなと思いながらも微笑みを返した。




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