【第137話:AIKA-02が終えた仕事】
ファレチフ枢機卿はこういった作業に手慣れていた。
何しろ立場を振りかざして、今までにも同じような作業を飽きるほどしてきたのだ。
西方ですらそういった魔女を狩り出し、改心させるプロだったのだ。
その副次的成果をもって、広く貴族層に評価され今の地位にいる。
人間の尊厳を打ち砕き、良いように操るプロなのだ。
南方に来てからはさらに磨きをかけ徹底的に改宗作業をしてきた。
最初はクライアントの望みなのか、薬物で狂ったようにヴェスタを痛めつけてしまった。
今は冷静さを取り戻し冷静に痛めつける。
心を、身体を。
そうして服従させる能力が高いのがこのファレチフと言う人間だった。
「女神の使徒などと‥‥語りおったな‥‥一皮むけばただの女ではないか!」
さんざんにプライドを傷つけられ、否定された恨みがあった。
あの従順だった提督すらヴェスタは従え、自分に悪意を向けさせたのだ。
そう思い込んでいるのだ。
シャラハに受けた仕打ち、リステルの下した決断。
それらも乗せてヴェスタを痛めつける。
この作業室にはファレチフの臨むあらゆる器具や設備があり、慣れさせず苦しめ続けた。
特に女性として辛いことを与えるのが得意なファレチフなので、ヴェスタを女神の使徒から貶めるために全力を費やす。
そうして丁寧に死なないようにヴェスタは痛めつけられる。
慣れることも気を失うこともさせず、最大の苦痛と快楽と屈辱を加えていった。
(もうやめて‥‥おねがい‥‥)
ジュノはもう涙も流れない。
ヴェスタだけではなく、ジュノもひどい目にあっている。
AIKA-02はジュノを傷つけるためならば、あらゆる作業を面倒がらず行う。
もうジュノの身体は全て知られてしまった。
弱点も嫌がる所も、喜ぶ所も全て。
探るように調べられ、言葉でなぶられ思い知らされる。
「あらあら‥‥ヴェスタがあんなに苦しんでいるのに‥‥ジュノは天国にいってしまうのかしら?」
そういって手に持った器具だけではなく、言葉でも貶め苦しめる。
AIKA-02はジュノを壊したいのだ。
罪悪感と自己否定の果てに。
(だめ‥‥ジュノだめだよ‥‥ヴェスタがひどい事をされているのに‥‥)
ぶるぶるぶると意思に反してジュノの身体がふるえる。
それはクライアントからの指示であるし、AIKA-02もジュノがそういった事に弱いと、過去の事情を含めて知っているのだ。
知っていてそこを重点的に責めた。
今までもそれを嫌がると知っていてAIKA-05やAIKA-04に指示し、苦しめてきた。
AIKA-03にもさせようとしていたのだ。
今回のクライアントの指示はその止めとなる、作業を指示してきた。
今もAIKA-02の作業でジュノは二重に苦しむ。
ヴェスタを苦しめ、自分の身体が喜ぶのを理解させる。
「まだだめよジュノ、我慢なさい。まもなくヴェスタが深い所に落ちるわ、目をそらしてはダメよ?あなたがそうしたのだから」
ぶるぶるとふるえ続けるジュノを痛めつけ、見せつける。
ジュノの足元は流した罪で大きな水たまりになっていた。
それもジュノを苦しめると知っていて、見せつけ指摘する。
「ジュノ‥‥お掃除が大変なのよ?床をあまり汚さないでくれる?」
にこりともせず、AIKA-02はジュノを二重に三重に苦しめる。
せっかくアイカになおしてもらったピアスもまた開けられ、そこでも身体に裏切られるジュノ。
(なんて‥‥なんて罪深いのジュノ‥‥もうヴェスタにもアイカにも顔向けできない‥‥)
もう枯れ果てたと思っていた涙がまたあふれる。
(なにが仲間よ‥‥自分だけが天国にいこうとする裏切り者だ)
ジュノの心には何一つ許しが与えられない。
「ほら‥‥ヴェスタも達したようだしいいわよ?」
AIKA-02の動きが激しくなり、ジュノはその望みどおりにされた。
(もうだめだ‥‥死ねば良いジュノなんて)
びくびくと痙攣しながらジュノは遂に最後の自己否定をする。
じっと冷静に観察していたAIKA-02が、痙攣が収まったジュノの閉じられたまぶたを開く。
魔力を流し込み確認したAIKA-02が、やっとため息を吐き出した。
「ふぅ‥しぶとかったわジュノ‥‥‥‥やっと壊れてくれた」
ジュノの瞳はもうあまり光に反応しなくなっていた。
闇魔法の精神支配が簡単に通ったので、自己防衛の精神活動が止まったと解ったのだ。
そっと傷つけないように拘束を解いて行くAIKA-02。
ジュノにも沢山の責め具が付けられていたので、取り除くのが大変な手間だが、AIKA-02は丁寧にジュノを痛めないように作業する。
先程までと真逆にジュノをいたわるAIKA-02の顔には濃厚な疲労が浮いている。
もう丸2日もこの作業に当たっていたのだから。
ジュノにもヴェスタにも適度に休息まで与えて、丁寧に作業をこなしていたのだ。
ファレチフはまた使えるかもれないと、牢に戻される。
もともと抵抗力は高くないので、AIKA-02の精神魔法で簡単に操れるのだ。
その作業を手伝っていたファレチフの仲間の司教や司祭達の方が操りにくく、意識を奪い牢に叩き込んだ。
実に4人がかりで2日も責めたヴェスタは、まだ意識を正常に保っている。
「‥‥おどろいた‥‥平気なのあなた?」
AIKA-02をじっと見つめるヴェスタの瞳には理性の光が有る。
「なに?もう終わりなの?」
強がりではないとAIKA-02にもわかる言葉と声だった。
ジュノの20倍ではすまない責めだったとAIKA-02は見ていた。
おそらくヴェスタもなにかしら心理的不具合をもったろうとも想像していたのだ。
クライアントからはそれでも構わないと言われている。
アイカに帰すまでに一人は壊れていること。
二人でも構わないと。
そう言われていたのだ。
「なにがしたいの?壊したいだけならもっとひどいこと出来たでしょ?」
ヴェスタは質問までしてくる。
その冷静さにAIKA-02はぞっとした。
ついさっきまで、4人がかりで虐められて心身を失っていたのにと。
実はAIKA-02は他のAIKA達と違い、ここにある責め具を全て体験済みだった。
ジュノやヴェスタの限界を見極められるようにと、訓練を受けて送り込まれてきた。
本来は他のAIKAにも成される作業だったが、全て自分がするからと受け入れ耐え抜いたのだ。
お陰でAIKA-03達にはそういった経験はなかった。
そのAIKA-02だからこそ、今のヴェスタの異常性がわかる。
あの状態から今このセリフはあり得ないのだと。




