表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第14章
163/706

【第136話:アイ達がいるおかげです】

手紙には7日経ったら拠点に帰してやると書いてあった。

アイカは怒り狂い魔力を溢れさせ、部屋を飛び出そうとする。

「ママ!!」

高い高速言語がアイカを呼び止める。

「いかないで!ママ!」

アイ達のスリープ解除時間になり、出ていこうとするアイカを見つけたのだ。

その剣幕と表情に怯えたように4人でかたまり、次々呼び止めた。

「あぁ‥‥アイちゃん‥‥」

アイカは走り戻り4人を抱きしめる。

「ああぁあああん!!」

ついにアイカが泣き出してしまう。

肺の空気を吐き出すまで嗚咽は止まらない。

そうして吐き出し、吸い込むたびになんとか燃え盛った感情が収まっていった。

意味も解らずに、必死にしがみつき一緒に泣くアイ達のお陰で、冷静さを取り戻していくアイカ。

あのまま飛び出していたら、八つ当たりで死体が溢れてしまうところだった。


「ごめんね‥‥心配かけて‥‥」

4人はアイカから離れようとしない。

置いていかれる恐怖を味わったから。

自分達の優しいママが、ママじゃなくなったように見えて恐ろしかった。

アイカはもう一度手紙を読み返す。

それくらい落ち着きを取り戻していた。


『ヴェスタとジュノを預かります。7日後に拠点に直接帰します』


文面は手書きではなく、印字のように整っている筆跡。

これは誰の真似でもなく、素のAIが書いたのだとアイカには解る。

差出人も宛先も無く、状況からアイカに宛てたのだとは解った。

誰がと想像すれば、あの黒アイカ‥‥AIKA-04を思い出すアイカ。

(あいつらだ‥‥)

めらめらとまた怒りが湧いてくる。

肩の上のアイ達が察して、ぎゅっと怯えてしがみつく。

アイカは笑顔を取り戻してよしよしとする。

「ごめんね、大丈夫よ」

アイ達のお陰でアイカは随分と救われている。

一人では絶えられない状況だった。

(‥‥落ち着けアイカ。拠点に戻ろう‥‥荷物が大変だから何か手段を考えなければ)

アイカの思考はやっと前に進み出す。

さっきまでと変わらずぐるぐると回るが、間違いなく前に進みだした。

円運動ではなく、螺旋を描いてもがき、進んでいくのだった。


近くの雑貨屋でリアカーのような手で引く小型の荷車を買った。

タイヤが2つ左右にあり、前にいて引くタイプだ。

幸いホテルの精算をしても十分に銀貨が残ったので、それで買い付けた。

そこに3人の荷物を積み込みホロを掛けロープで縛り上げた。

アイ達も手伝うと頑張ったが、ママは力持ちなのよと笑って見せ、肩に乗せて引いて行く。

保護スーツのアシストがなくても、義体の基礎能力だけでも余裕で引けた。

アイ03と04は式神に入れて、偵察と護衛をしてもらう。

義体は腰でぷらんとしている。

(アイちゃん達‥‥本当にありがとう‥‥アイカがんばる)

きこきことタイヤがなるが、大きな荷物は一人では抱えきれなかったので、このペースでいくしか無いと思った。

途中ガラの悪い追い剥ぎに襲われたが、アイカは一瞥もせず、式神03と04がこてんぱんにした。

アイ01と02もアイカの肩の上で、しゅっしゅっとシャドーボクシングで「そこだ!」「やっておしまい!」などと応援していた。

それらの愛らしい仕草がアイカの傷つき砕けそうな心を癒やす。

人気がなくなったところで、ローラーダッシュを使い、リヤカーの限度まで速度を上げた。

大して上がらないので、しょうがなく頭の上に持ち上げて運ぶこととなった。

(これ‥‥タイヤいらないのでわ?)

10倍くらい速度が出た。

ただ今後に向けて時速300km/hで引ける荷車が必要になるなとも考えた。

現状は個人兵装で移動しているが、街に乗り付けれる移動手段がほしいなと。

(馬車もちいさい自動車もいたから‥‥あの手の物ならいいのかな?)

そんな事を考えられる余裕もアイカに生まれた。

心配なのは変わらないが、そうして心を痛めていても何もできないと、アイ達が教えてくれたのだ。

何度も感謝のよしよしを01と02にするので、後で03と04が交代してからベッタリになるのだった。


目印の岩まで戻れた。

ジュノとヴェスタが置いた大きな岩を蹴り飛ばす。

砕かないように手加減したサッカーキックで転がした。

ごろんごろんと大分向こうまで転がっていった。

一番嵩の大きいジュノの外装を装備して、残りを荷車に乗せ縛り直す。

先行して01と02を式神で補給基地に偵察に向かわせる。

03と04は残って護衛だ。

アイカもパルスジェットで遠慮なく飛行する。

燃料は十分に残っているし、補給基地まで持てばいいのだ。

万が一足りなくなったら、他の外装から燃料を移せばいい。

そうして贅沢に荷車を抱え飛行して、夕方には補給基地にたどり着いた。

燃料は保存タンクに満タンになって、燃料製造プラントは停止していた。

VTOL機は補給済みなので、外装にだけ燃料を充填し拠点に向かい飛び立った。

(‥‥おそらく敵は軌道上に監視の目を持っている‥‥だからマヤカランに来ていると知られたのだ)

アイカは色々と分析や推論もする時間を持てた。

(あいつらも式をもっているんだ‥‥悔しいけど、もっと高性能のものを持っている)

まともに戦いを挑んでは敵うはずもないと冷静に考える。

自分達の有利は何かと考える。

AIKA-04を打倒したときの事を考えれば、チームワークがまず第一に浮かんだ。

(そうだよ。私達には互いを信じ合える絆が有る‥‥あいつらが持っていない宝物だ)

アイ達ともマクラとでさえ持っている、コードでは表記できないもの。

魔法の式にも表れないそれがアイカ達一番の武器だ。

(AIKA-04は想像すらできなかった。あの場面で狙撃することを‥‥ヴェスタの技量を知らないのもあるけど、わたしがヴェスタをそこまで信用することが想像できなかった)

魔法の的にさらされる事になってでも、ヴェスタが撃ちやすい位置に誘導した。

アイカはヴェスタが外すとも、間に合わないとも考えなかった。

だからAIKA-04の思考の裏をとれたのだ。

(無事に帰すと‥‥ううん無事とは書いてない‥‥ただ帰すとは言っているのだ、殺すことはない)

ひやりとした不安を覚えるが、そうして自分を励ますアイカ。

うずくまっていたり、暴れまわっていても解決しないのだと言い聞かせる。

AIならば当たり前にできることをできず、AIにはできないことを当たり前にするアイカだった。

ただのコピーAIのアイ達に支えられるアイカ。

それは欲しいと望んでも手に入らない、奇跡のようなアイカであった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ