【第130話:プライド・グラトニー・エンヴィー・グリード・ラース】
「やっぱり、えびよ!」
ジュノはでかでかとメニューに絵のあるエビの料理を指差す。
「こっちの煮込みのほうがいっぱい種類があります!エビも内包しています!」
「いやこっちの方が、えびがでかい!」
わいわいとメニュー選ぶのでも楽しめる三人。
アイカが持ち込んだノート型ジェネレーターで、アイ03と04もぴちちちとおしゃべりと充電中。
アイカはそちらにも参加するので忙しそう。
「よし!その作戦でいくわ!店員さぁあん!」
ジュノが大きな声で店員を呼んだ。
どうやら最初からシェアする前提でメニューを決めたようだ。
「随分人気ね‥ほぼ満席じゃない?」
店内を見回すヴェスタが言う。
それほど大きな店舗ではないが、外のテラス席まで埋まってしまい、予約しておいてよかったなとアイカも思った。
「ふふふ、ホテルの人に聴き込んで調べたのです!人気店です」
アイカも嬉しそうに話した。
「あ‥‥おいしいねこれは」
いったん三人娘は保留として食事をしようと、マナミにすすめるリステル。
シェフのおすすめランチコースという、4品くるメニューを頼んだので、飲み終えないと次が来ない。
「むむ、これはオニールエビですね、裏ごしも丁寧な仕事です。溶かし込んだ根菜とエシャロット‥‥添えられたフライの玉ねぎの甘みが融和して深い味わいを引き立たせます。‥‥なるほどあえての岩塩チョイスですか。パースリィも素晴らしい香りです。これは手のかかった一品目ですね」
マナミが一口飲むとぺらぺら話しだした。
リステルが任務忘れたかな?と心配するほどの、のめり込み方。
ソムリエのように香り、味・喉越しなどと評価を加えていく。
そして飲み終わるとはっとするマナミ。
(あぁ‥‥美味しいので忘れていたけど、任務があったと思い出した顔だわ‥‥これは推理しなくてもわかってしまうわ)
リステルが眉をさげて、残念そうにする。
「ただ、楽しむことにはできない?別のタイミングでもいいよきっと。明日以降予定も入れていないし」
リステルは予定通り、マナミに楽しんでもらいたいと思うのだ。
「うん‥‥でも‥‥」
二人がスプーンを置いたので、次が運ばれて開いた皿が下げられる。
いちゃいちゃすんなよ、みたいな店員の眼が痛いが、マナミが距離を開けるとヴェスタ達から見えてしまうので、肩がふれるほど二人は近い。
そして声を潜めてこしょこしょと話す二人。
愛を語らっているようにしか見えなかった。
「今夜の予定もあるし‥‥ここはそっと見つからないで置こうよ」
マナミも少し考えてみる。
舌がペロリと唇を舐めたので、半分くらいはさっきのスープに気持ちがいっているのだろう。
「ううう‥‥おいしいよぉ‥‥クスン」
「泣かなくてもいいじゃないw」
ジュノがエビを頬張り涙を落とす。
「だって‥‥おいしいんだもん‥‥」
よしよしとアイカも撫でてあげる。
「なんだか普段ろくなもの食べさせていないみたいじゃない‥‥アイカのごはんも美味しいわよ?」
「まあまぁ、今日は好きなだけ喜びむせるといいですよジュノ」
アイカがジュノを甘やかして、取り分けて上げる。
「あいがとぉアイカぁ!アイカのご飯も大好きよ!」
急に元気になりにこにこのジュノだった。
美味しすぎて躁鬱がバグっているようだ。
「午後はどうするの?アイカ」
落ち着いて食事を楽しみながらも、打ち合わせるヴェスタ。
午後の予定がまだ未定だった。
「そうですねえ‥‥午後は私もお店を見ようかな?二人はどうするの?」
「いいね!アイカを着せ替えて遊びたいわ!」
あまりにストレートなジュノの欲望に、げんなりのアイカ。
「いや、それ楽しいのジュノだけでわ?アイカは楽しくなさそうですが?」
「大丈夫、私も楽しめるわ!」
ヴェスタものりのりでアイカの手を取る。
「下着も見に行きましょう!」
行く気まんまんのヴェスタだった。
「‥‥まぁ、お手柔らかにです‥‥ヴェスタも着せ替えますからね!」
にっこりとアイカは宣言した。
「あ‥‥ちょっとトイレ!」
ジュノがもぐもぐしながら立ち上がる。
今日買ったばかりの洋服をかなり取り入れて、カジュアルさに磨きのかかるジュノ。
そもそもスタイルがよく、足も長いのでなんでも似合うジュノだった。
「ちゃんと手を洗ってきてくださいね!」
アイカがお母さんのように注意する。
くすくすとヴェスタとアイ達で見交わして笑いあった。
(む!ジュノが一人でトイレに‥‥いや‥‥ジュノはとてもカンがいいわ。やるならヴェスタからにしたい‥‥イヤでも)
マナミが目でジュノを追うが、リステルがマナミを見られるとまたぎゅっと抱き寄せるとマナミが驚いて吐息を漏らす。
「あっ」
顔も隠したいので頬に手をそえてマナミを抱きしめるリステル。
背中をジュノに向けマナミを隠した。
(ん‥‥あそこの席の二人仲いいなぁ、また抱きしめてる。来るときもなんかちゅっちゅしてそうだったもんな)
ジュノが舐めるように見ていく気配を感じるリステルは冷や汗が落ちる。
「り‥‥りすてるぅ‥‥近いです‥‥」
「しょ‥‥しょうがないよ、なんか見られてたもん」
ちらっとみて、あぁ居なくなったなと思ったら、デザートをもってまたあの店員が来る。
またおまえらは‥‥家まで我慢しろ見たいな目で見られて、真っ赤になるマナミがぐいとリステルを押しやる。
マナミがぷんぷんとふくれるので、しょがないとデザートをシェアして口に入れて上げるリステル。
あむんと食べると目に輝きが戻るマナミ。
「むむ‥これはただのピーチソルベではないですね!この食感‥そうか!角切りにして煮たものを混ぜ込んでいるのね?!く‥やられたこのわずかな食感の変化で舌を弄ばれるわ‥」
とても早口で話し始めるマナミは、すぐに顔色も戻りご機嫌になった。
デザートを食べ終わる頃ジュノがもどり、マナミが先に見つけてリステルに隠れる。
リステルも不自然じゃないようにと肩に手を置いた。
(あぁまた仲良くしてる!すごいなあの二人、こんな人がいっぱいなのに)
ジュノが居なくなったので離れようとしたが、顔を出した途端に、交替で向かってくるヴェスタに気付いたマナミがまた勢いよくリステルに隠れる。
勢い余ってぽよんとぶつかり、真っ赤になるマナミ。
「ご‥‥ごめん‥‥」
真っ赤になって肩に顔を埋めるマナミ。
(わぁほんとだジュノのいった通り‥‥まだ抱きしめてるわ‥‥耳まで真っ赤だし‥‥なんか下の方でしてるんじゃ?)
ヴェスタが邪推するくらい仲良しをみせつけるリステルとマナミ。
背を向けたヴェスタにキランとマナミの目が輝いた。
(チャンスだわ!どんくさそうなヴェスタが一人でトイレに!今しかない)
そう思い立ち上がろうとしたら、アイカも立ち上がる所で目が合いかけたが、素早くリステルに顔を伏せた。
まるで姿勢を変えて更に深く抱きついたようにアイカには見えた。
「わたしもちょっとお花摘みにいってきますね‥‥ジュノ、このケーキを食べてはいけませんよ?絶対ダメですよ?」
そう言いつけながら横を抜けていくアイカ。
(なんだとおお!!なぜ邪魔をするアイカ!!なにがお花摘みだ!おまえは義体だろ!なぜ照れる必要がある、排水してきますでいいだろぉ!)
と、心のなかでは憤怒のマナミだが、アイカから見ると真っ赤になって抱きしめられるかわいい恋人にしか見えなかった。
そして水を変えに来てくれた店員は、あーわかったわかった、みたいな可哀想な子を見る目で見ていった。
マナミはぷるぷると怒りと羞恥に打ち震えるのだった。




