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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第13章
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【第127話:当事者の二人】

召喚状がきて首都マヤカランに呼び出された。

7日後の日付で王城に出仕するようにと、リステル=ウルヴァン宛に来た。

爵位を書かないのはただの後見人として扱いますよ、との意味だろう。

マナミの教えてくれたように騎士爵に叙する予定なのだなと、それだけでも読み取れた。

男爵家後見人ではなく、リステル個人に評価を付けるという意味だ。

「まあ‥‥予定通りなのかな?騎士に取り立てると?」

リステルは皮肉な笑みでマナミをみた。

「そうね‥‥もし上手くいったら男爵もあるけど‥‥なにしろほとんどの戦果がリステルについただろうし、”大勝利”と宣言したいよね王家としては」

王家としてはもともと男爵家に任せた領地なので、男爵までは痛くない話なのだろうしとマナミは考える。

そこで前回の謁見時の流れを思い出し、複雑な顔になるマナミ。

「‥‥たぶんリステルは気に入られているだろうし」

マナミは少し不満そうにそう告げる。

リステルはにこっと笑い。マナミの手を取り出かけようとする。

「ふふ、そうだといいけどね!さ、行こう!王都でも仕事は山程あるよ!」

そういって手を引かれると、マナミも少し笑顔になるのだった。

領主の館から港まではずっと下り坂で、ぐいぐいと引くリステルのせいで最後には手を繋いで走り出す二人。

「ちょっと!リステルひっぱらないで!」

「あはは!下りは勢いがつくね!」

仲良く走り去る領主とその腹心のすがたに、すれ違った住人達も笑顔が伝染するのだった。

ふたりとも楽しそうに笑っていたから。

事前に予想できていたので、準備は万端なのでその日のうちに出港するリステル達だった。




王都までの航路は順調だった。

なにしろ一度全ての魔物を討伐しているので、魔物達も怖くてこの航路に近寄れないのだ。

海域のボスともいえるクラーケンまでがリステルによってたおされていたから。

今回は旗艦のフリゲート一隻で来ていて、残りは仕事を頼んであった。

フリゲートは快速で北上し、今は西に回る海流にも乗り、帆船とは信じられない速度で王都に向かっていた。

いつものように船長室でくつろいでいたリステルとマナミだったが、突然マナミが驚いた顔で固まる。

「どうしたの?何か問題でも?」

リステルはもうマナミが式からも情報をもらっていることを察して、尋ね教えてもらっていた。

この海域も王都も帝国すら監視下に有ると。

「ヴェスタ達が動いたわ‥‥VTOL機で移動している‥この進路なら大陸に上陸するつもりね」

リステル達の船も今夜には王都に着く予定だ。

すっと真面目な表情になるリステルがマナミにたずねる。

「ねえ‥‥嫌なら答えなくていいけど‥‥マナミの言ってた仕事ってヴェスタ達のこと?」

リステルが心配そうに聞いた。

「‥‥そうよ。これはリステルに接触したそもそもの理由なの。力を貸してほしいのもその件よ」

マナミは使命を伝えるのにまだ躊躇する。

じっとリステルを見て告げる。

「もしも‥‥リステルが彼女達に恩義や親愛を感じているのなら、手伝えとは言わないわ」

それはそもそもリステルに接触した意義に反する言葉だった。

リステルはあまり悩まずに答える。

「そんな仲が良いわけじゃないよ‥‥知り合いってだけだし。理由は聞いてはダメ?」

マナミは少し苦しげに顔を歪める。

「ごめん‥‥私も知らないのよ‥推測はできるけどね」

そう言ってマナミは覚悟を決めた。

リステルとこれからも協力していくには、ここはごまかせないと思ったのだ。

「依頼者と直接接触しているのはAIKA-02という私の姉だわ。私は姉から指示されて動いているの」

リステルはただうなずく。

「依頼者の身元も目的も教えてもらってないけど‥‥していることを見れば想像はつく‥‥負荷実験ね」

マナミもじっとリステルを見つめる。

「依頼者は私達AIKAシリーズのAIを準備できる立場‥‥おそらく開発元かその上位者。私達AIKAシリーズは特殊なAIなの‥‥銀河連邦の管理下にないAIなの」

リステルはマナミを教師に、すでに現在の銀河系全体の情勢までふんわりと理解していた。

そのスケールはまだ想像でしかないが、この星の外にそういう世界があると学んでいたのだ。

AIにたいする規制や管理についても一般常識の範囲は理解していて、マナミの言うことが違法でそしてとんでもない話だとは解った。

「‥‥私、誰にも言わない。マナミが困ることはしないよ」

戸惑うマナミが心配しているだろうと、そう告げるリステル。

マナミはびっくりしたように眼を一瞬見開く。

「ありがと‥‥そこは心配してなかったけどね。ヴェスタ達と共にいるAIもAIKAシリーズ‥‥それもオリジナルともいえるプロトタイプなの。その性能評価か、さらなる開発のための負荷実験と推理したわ」

今までアイカやヴェスタ達に仕掛けた嫌がらせの内容をみれば解った話だ。

入植当時から、命は奪わず嫌がることだけをする。

最初は生命存続の危機を味あわせた。

次には人間としての尊厳に関わる負荷。

次はある意味虐殺とも取れる行為を共用した。

少し前にはさらにスケールを上げた戦争に関わらせた。

負荷を掛けているのだと。

「‥‥今回の指示はね」

長い沈黙をやぶりマナミが告げる。

「ヴェスタかジュノどちらかを攫って軌道に上げることなの‥‥その先にどうなるかは聞いていない」

推理した先ならわかるけどと心の中でマナミは思う。

AIKA-01から大切なものを奪う気なのだと。

リステルは表情を変えずじっとマナミを見る。

深い知性を宿すリステルの瞳は、そのマナミの想像すら理解していそうに見えた。

ふっと笑って答える。

「協力するよ‥‥その約束だったし、私はマナミの役に立ちたい」

にこにことするリステルの表情に嘘はないのだろう。

なんだか騙しているような気分になるマナミ。

「軌道に上がった後に良いことは多分起きない‥‥命すら危ういと私は想像するわ」

これで手持ちのカードは全部だと言わんばかりに、マナミもほほえんだ。

うなずいたリステルは告げる。

「そこはきっと想像しないほうが健全だね‥‥二人で忘れちゃおうよ」

そういってとんと肩をたたくリステル。

「とりあえずこちらの予定を進めながら、ヴェスタ達の目的を探ろう」

リステルはすでに当事者の口調で話す。

マナミは何かが救われた気持ちと、何かを捨てさせた悲しみを同時に感じた。

「うん‥‥ありがとうリステル‥‥」

(そしてごめん‥‥)

マナミの心にも複雑な負荷がかかっていた。


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