【第124話:あそびにいきましょ!】
採掘作業が全て自動化できた。
マクラが4機になり、アイカも慣れてしまったので負担は最小だ。
採掘→仕分け→精錬→格納までの流れが自動化できたので、人間の仕事が一気に減ったのだ。
「遊びに行きたい!」
ジュノは遊びたいと主張する。
「本が欲しいのです!現地で研究された論文とかあればもっと良いです!」
アイカは本屋さん?に行きたい。
「3人一緒ならいいよ!」
ヴェスタは単独行動にならないなら良いと思った。
そうして遠征することとなる。
目的地はアヤンタ王国の首都マヤカランだ。
本当は人口の多い西側の国、ヴァルサール帝国の首都アズラントに行きたいねと話し合ったが、今回は近場でと決まった。
ここの所ずっと人里を離れ、サバイバルな生活を続けてきたので、文明が恋しいとの思いもあった。
人混みが恋しいのだ。
近場とは言え今の拠点から片道2300kmほどあり、往復だと4600kmとなる。
これはVTORL機に増槽を積んで、ペイロードを絞りギリギリの距離。
そこで北にある大きな大陸にも拠点を作ろうということになった。
設備としてはバイオ燃料が生産できればいいので、それほど大掛かりにはならない予定だ。
そうして候補地を皆で話し合う。
「ゆくゆくは帝国まで行けるようにしたいし、ここいらが良いんじゃない?」
ジュノの意見では、アヤンタ王国のさらに北にそびえる山脈の中が良いという。
片道3000km程とマヤカランよりも遠いのだが、帝国までぎりぎり届く距離だ。
ゆくゆくは帝国側にも同じ仮拠点を作れば、首都アズラントにも4度の補給で往復できる位置だ。
「なるほど‥帝国まで行くと考えたらそれもありです」
アイカも賛成する。
「そうすると‥帝国側の補給基地はこのあたりになるわね」
ヴェスタがさらにマップに記しを入れていく。
「まあ予定ということだけど。今回の補給基地はジュノの提案でいいわ」
ヴェスタがそう言って、ジュノに賛成と言った。
「ここ、マヤカランから市街地が伸びていってるから、道があるんじゃないかな?‥‥そうするとこの辺りに下りて、街に向かえば良いんじゃない?」
ジュノが地図にさらに予定を書き込んでいく。
この地図はみんなが参照できるものなので、後から確認するのに便利だった。
「良いんじゃないでしょうか?」
アイカもジュノもヴェスタを見る。
「おっけえ!その予定で行きましょう!今日はじゃあ準備して、明日の朝出発しましょう」
『はーい』
こうしてアヤンタ旅行の予定と、補給基地設置の予定が出来上がった。
予定が決まると恐ろしく手際よくすすむのがこのチームの強みだった。
るんるんと働くのだった。
ティア7を目指す中で、素材に余裕すらできてきた。
チタンがそれなりにとれたのが大きく、ティア6装備を少し追加した。
まずヴェスタの外装をティア6にして、これで全員空を飛べるようになる。
予定していたように、ヴェスタの外装は防御メインで、肩のハードポイントはアイカと同じ自動防御付きアーマーになる。
メインウエポンとして、初めて面制圧装備を作る。
4連装の電磁モーターカノンを手持ちで扱えるようにパックしたものが出来上がる。
弾倉はベルト給弾と迷ったが、取り回しの良さでドラムマガジンとなった。
ちゃんとモックで模型を作り、ヴェスタに持たせてみた。
慣れないとベルト給弾は照準がかなり危ういので、最悪フレンドリファイヤ (同士討ち)がありうるとドラムマガジンとなった。
ドラムマガジンは厚さ5cm程度、直径が30cmほどの円盤で、一つのマガジンに400発程給弾できる。
アイカが設計したこの手持ちモーターカノンは『カノンポット』と呼称されることとなった。
カノンポットは一分間に2000発程度の射撃が可能なので、400発は20秒もあれば撃ち終わる計算だ。
銃身も短く、バレル長も抑えられ集弾は悪いが、もともと狙う武器ではなくエリアを抑える武器だ。
全長も50cm程と抑えられて、重量はあるが取り回しも良い。
この武器でヴェスタがする仕事は、エリアを制限しキルゾーンに誘うこと。
ジュノやアイカが攻撃しやすくするサポートだ。
もう一つ遅延戦闘や後退戦術でもエリア制圧に活かせる。
簡単にいうとヴェスタにできる仕事を割り振った感じだ。
そしてヴェスタの外装にも魔法耐性装備となり、これでチーム全員が魔法に強くなった。
アイカの式神も4号機までロールアウト。
遂にアイちゃんズがカルテットになり、アイカの戦闘力・偵察能力はさらに高くなる。
片側2本の式神を両肩に装備。
それぞれ01-04とNoがふられ、同じ番号のアイの乗機となる。
アイ達の義体はアイカの腰に新たに装備された外装に収まり、腰の左右に釣られる。
ジュノは装備に更新ないが、もともと優先して充実させてあった。
VTOL機の増槽は下部カーゴベイに収納した。
緊急時にはベイをあけてパージも可能で、これにより巡航1.2マッハ( 時速1350km/h程度)で4600kmを航続する。
海上を高度8000mで飛ぶVTOL機。
音速で飛ぶこの機でも目的地まで、3000km弱あり2時間以上のフライトとなる予定だ。
この機内は気密もとれており、エンジンも後端にあるため割と静かなのだが、ずっと賑やかに2時間を過ごしてきた。
いつかのキャンプファイヤーのように、アイカとアイ達の歌か始まり、ジュノも歌いヴェスタも一緒に声を出しリズムを取った。
アイカのアーカイブには数万曲の音楽データがあり、あらゆるジャンルを網羅している。
これまでで最もAIらしい活躍と言えただろう。
そうして楽しく遠足気分のまま海を越えた。
「みて!陸が見えてきた!」
めずらしく興奮したヴェスタの声。
「おお!でっかい山だな?!」
ジュノもテンションが高い。
「ラウメンの大陸より広い面積に広がる複数あわさる山脈ですね。まちがいなくこの星の最高峰で14000mを越える部分もあるようです」
アイカは冷静な声だが、説明が早口なので興奮を隠せていない。
「せ~の」
『新大陸だ!』
にこにこのジュノの音頭で7人の声が揃う。
ぴょんとアイ達はジャンプまでして万歳だ。
あはははと笑い声も広がり、眼下には海岸線にそうように市街地も見えていた。
拡張マップと視界を見比べたヴェスタが、大陸のスケールに息をのむ。
「でかいね‥これは」
その眼の輝きには、隠しきれないわくわくが有るのだった。




