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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第12章
148/610

【航海日誌5】

(ジュノのせいだもん)

ヴェスタはジュノのせいにした。

しっかりと封印し、二度と地上に現れぬようにと、荷物の奥深くの深淵に封じたアレが出てきた。

「‥‥く‥‥うぅ‥‥見てしまったからには書かねば」

そう、ヴェスタがダンボールの奥底に封じ、もう読まないなといった本や、古くなってもう使わないけど捨てるのもはばかる服や道具を上に大量に乗せて見ないようにしていた航海日誌の端末を、ジュノが発掘してしまった。

『いやぁ隠されると見たくなるのが人情じゃない?』

などと勝手な理屈でヴェスタの封印を解いてくれたのだ。

ヴェスタは日誌を書くのが苦手である。

文章を書くのが苦手と言っても良い。

思ったことをそのまま記述してしまうのだ。

そして出来上がった文章にショックを受けて、さらに文章を書くのが嫌になるという負のスパイラルに取り込まれていた。

そしてマニュアルに従いたい性分のヴェスタはルールを守りたい。

書かねばならぬと思うのだ。

「もう‥‥あきらめて小学生の日記風でいいから毎日書こう‥‥上達するかもしれない」

そのように勇気を振り絞らなければ、筆を持てないところまで追い込まれていた。

なにしろ過去の自分の日誌が怖くて読めない状態なのだ。

(み‥‥見てはいけないわ!過去は忘れましょう‥‥未来に進むのよ!ヴェスタ)



Ship’s Log ’527/3/10

Location: Planet Alduna/Lemuria Sector

Status: Tier6

今日は引っ越しました。

とても疲れました。



そこまで書いた所で、アイカとお茶を飲んでいたジュノが声をかけてくる。

「おふろいこー!アイカもはいるって」

ぱぁっとヴェスタの心が明るくなる。

暗雲が切れてエンジェルラダーが差し込んできた気分だ。

「うん!すぐいくぅ」

にっこりと返事をしたヴェスタはパタリと端末を閉じた。

(しかたないわ!お風呂の時間だし、アイカも洗わなきゃ!キャプテンだしね!)

そういってニッコニコで退出するヴェスタだった。

まさか、日誌の書き出しが前回のコピペのような状態だとはまだ気付いていなかった。

なにしろ引っ越しをしないと航海日誌を見つけないので、引っ越し当日の日誌が増えるのは必然と言えた。

ちなみにジュノとヴェスタは同じ部屋に住んでいて、隣がアイカの個室。

反対側の隣はお風呂と脱衣所だ。

今も隣の脱衣所から、脱がしっこの悲鳴と笑い声が響いてくる。

悲鳴を上げるのはおもにアイカで、ヴェスタとジュノの楽しそうな笑い声がしてくる。

いやぁ自分でぬぐからぁ!とか、よいではないかとか、ぐへへへへとか言う、声まで響いてくる。

そうして楽しいお着替えタイムが終わると、次は浴室から反響した声で、悲鳴と笑い声がしてくる。

内容にさしたる変化はない。

アイカの嫌がる悲鳴と、喜ぶ二人の声だ。

そうして洗ったり洗われたり、さわったりさわられたりして、ちゃぽんと入浴。

ごにょごにょと何時までもおしゃべりの声がしてくる。

そうしてお風呂タイムが終わると、ふいぃぃとドライヤーの音と、おしゃべりがまた続く。

時々ジュノの悲鳴とかもレアだが流れてくる。

アイカが意を決して反撃に出たりするようだ。

おぼえてなさいよ!とかいうジュノの捨て台詞まで聞こえてくる。

まあまあとなだめたり慰めたりするヴェスタの声も時々する。

どうやら散々自分も触られたので、仕返しとジュノに同じことをした所、覚えていろと脅される理不尽をあじわった様子のアイカがしくしくと泣いて、ジュノが謝ったりヴェスタに怒られたりとしている。

そうして結構長いこと髪を乾かしあう気配が続いた。

がちゃ。

「今日はいいです!自分の部屋で寝ますから!ちゃんと寝ますからあ!」

と嫌がるアイカをむりやり連れ込もうとするジュノ。

「いいじゃあん、一緒にいちゃいちゃしようよ!仲直りだから!」

「もう仲直りしました!大丈夫です!」

「ジュノぉもうかわいそうよアイカ」

「えぇ‥‥全部脱がせて堪能したかったなぁ」

「ぬぎませんから?!」

わいわいと入口で騒いだが、今日は諦めたのかジュノとヴェスタだけが戻ってきた。

そして机をみて固まるヴェスタ。

(あ‥‥消えてなくなっていないわ‥‥夢だったのね‥‥お風呂から戻ったら何故か航海日誌がなくなった夢をみたわ‥‥お風呂で寝落ちして‥‥)

ジュノがベッドでごろんごろんしてヴェスタを呼ぶ。

「はやくぅだっこしてえヴェスタ!」

「う‥‥うん‥‥ちょっとだけ待ってね」

ヴェスタが恐る恐る開くと、そこには間違って書き終わった航海日誌もなく、コピペのようなその文章を見つけた。

(くぅ‥‥これも現実か‥‥)

ヴェスタは椅子にかけてデスクに向かう。

後ろでは、ジュノの甘えん坊レベルがどんどん上がっていく。

マクラを手足で抱っこしてちゅっちゅとしたりしているジュノ。

(あぁん‥‥早くおわってジュノにだっこしたぁい)

そこで天啓を得るヴェスタ。

(そうだわ!文章が苦手なんだから、文章を書かなければ良いのだわ!)

なにか本末転倒な思考に偏っていった。

「よし!完成!‥‥じゅのぉぉ!!だっこぉ!」



Ship’s Log ’527/3/10

Location: Planet Alduna/Lemuria Sector

Status: Tier6

今日は引っ越しました。

とても疲れました。


挿絵(By みてみん)




ヴェスタは文章が苦手で小学生だが、絵は3才児だった。


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