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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第12章
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【第122話:大事なことはなんですか?】

「かつて海の底だった地域が山脈の隆起により海水が取り残され、流れ出る川がないため海水が蒸発して塩分が堆積したものでしょう。さらに氷河期には氷河に覆われ、その後の氷河が解けることで、塩分を溶かし込みながら巨大な塩湖が形成されたと推察します!‥‥つまり感動しました!」

アイカは思いの丈を塩湖の生成過程考察で表現した。

早口言葉のような速度に感激っぷりが現れていた。

戻ってからアイカにもすごいよと、塩湖の写真を見せたらずるいずるい!と騒ぐので、皆でもう一度VTOLを飛ばして見に行った。

ちょうど夕日が沈む前だったので、先程に輪を掛けた鳥肌を味わった三人だった。

最後の日が落ちる瞬間など、三人で抱き合って震えていた。

支え合わないと立っていられないほどの感情の高ぶりを味わったのだ。


晩御飯を終えて、今日の進捗具合なんかも確認しながら、だらだらとおしゃべる三人。

「これ‥‥ティア7に届く鉱石をここで揃えられちゃいます‥‥」

アイカがふるふるとしながら指差す。

工程の進捗を示すグラフの推移を立体で見せていた。

ここ2日の伸びたグラフは色を変えて見やすく表示してある。

「おぉ‥‥なるほど、この延長を推察すれば?」

「そうなのです!」

ヴェスタにも理解できたようで、アイカがにっこりになる。

くりくりと角度を変えて見ているジュノは、まだ理解が及ばない。

「うん‥‥どゆこと?!」

くすっと笑いあうヴェスタとアイカ。

アイカが説明する。

「ほらここを‥‥」

説明しながら指で示すアイカ。

丁寧にジュノがわかるよう説明すると、追いついてきたジュノが喜ぶ。

「あ!そっか!じゃあもう拠点を変えなくても?」

「そうなのです!」

「ここにいるだけで、軌道に上がれる準備が揃うのよ!ジュノの欲しがった偵察衛星だって打ち上げれるわ!」

ばんざーいと7人で笑顔になり喜ぶ。

アイ達4人もダイニングのテーブルの上で万歳していた。

しばらくして、皆の興奮が收まる頃、静かにヴェスタが告げる。

「もし‥‥有人で軌道まで上がれるようになったら、一度アークを軌道まで上げてみたいな」

ヴェスタの意見の意味合いがアイカにもジュノにも解った。

例えば軌道上で移動させることができなくなったり、再突入できなくなっても最悪地上に下りれると言うギリギリのティアだと言っている。

そしてやっぱり自分達は宇宙にいる人間なのだなと、地上に縛られた今の状態は不自由と感じるのだと。

ヴェスタはそういったストレスを解消したいと言っている。

まだ星間航海は無理でも、星に縛られていない状態に移行すれば、ヴェスタ達の時代に少し追いつくのだと。

それは皆が心に秘めた帰りたいを、夢見る事を許される瞬間なのだと、伝えたいのだなと。

「いいね‥‥」

ジュノはじーんと感動を覚える。

言われてみて初めて自覚する気持ちがあった。

翼をもがれたような今の状態に、サバイバルとして立ち向かった理不尽に打ち勝つ瞬間なのだと。

「帰還へのプロセスとしても有用です。おそらく軌道まで上がれば衛星をもっと調べられますし、衛星の構成や地勢がわかれば、そちらに舵を切っても良いかも知れません」

アイカにも静かな興奮があった。

知識を欲するアイカには、やはり地上に縛られる苦しさを誰より味わっていたのだ。

「ふふふ、本当に忘れかけていたけど‥‥スパイラルアークは宇宙船なのだわ!」

ヴェスタが宣言する。

あははっと二人もヴェスタの意見に笑う。

三人の眼に本当に久しぶりに宇宙への憧れが浮かんだのだった。




そろそろシャラハ将軍の艦隊が大陸を離れる頃だなと、式神を偵察に出した。

ついでのように思い出してアヤンタ王国の艦隊も探してみるために東にも一機送る。

アイカは4台のマクラを採掘で稼働させながら、アイ03とアイ04のサポートをして偵察行動をする。

ジュノとヴェスタは効率上げのため、鉄鋼石の鉱脈側でチタンを掘っていた。

マクラには鉄を掘らせて、ジュノ達は東西に広がる薄いチタンの層を掘り進んでいる。

『そろそろお昼ご飯かな?!』

10分起きにジュノが霊子通信を入れてくる。

今はあまり電源コストを考えなくていいので、結構入れっぱなしになっているチャンネルだ。

『ジュノ‥‥もう3回めですよ、同じ質問。もうちょいで出来上がりますから、戻ってもいいですよ?』

『やった!ヴェスタもどろうよ!偵察の結果もみたいよね?』

『ふふ、了解。じゃあもどろ』

ジュノのわくわく感に押されて、前倒しに午前の作業を切り上げる二人。

正直、あまり採掘を急いでもいないし問題にならない。

アルミと鉄の方がティア7に足りないし、ナノマシンポッドの状態はもっと時間が必要だった。

チタンと一緒にでるジルコニュウムはナノマシンの好物なので、貢献して入るが気にするほどではない。

そうして二人はマクラに、またねーと挨拶して、拠点に戻った。


「ふむふむ‥‥金ピカ将軍は順調に帰国中だね。もう放置でいいかな?」

「そうだね‥‥ここから戻るだけの物資はもう無いでしょ‥‥たぶん」

「そうですね、コスト的にも見合わないですし、戻る理由もなさそうです」

三人の意見が一致し、西に向かった式神01は帰投させる。

東側の王国艦隊は、大半が国に戻ろうとしている。

一部が別れて進むのは、各植民領地から来ていた艦隊なのだろう。

これも自然な動きに見える。

「こっちも問題起こさないなら放って置いて良いのかもね。それこそ監視衛星を上げたら様子をみましょと、その程度ね」

ジュノがそうして式神02も戻してもらい、偵察を打ち切る。

ヴェスタもアイカも頷いて、いよいよ本題の食事に移った。

「さ!ごはんですよ!」

「わーい」

「ぺっこぺこだよ!」

ヴェスタもジュノもにっこり。

アイ達もぽてぽてと走って戻って来る。

そうして偵察よりも重要なお昼休みが始まるのだった。

笑顔の食卓がこのプロジェクトチームの最優先事項となっていた。






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