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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第12章
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【第118話:リステルの艦隊戦(チート)】

アヤンタ王国海軍は本国から21隻の軍艦を準備してきた。

これは5つ有る、港をもつ街から供出してもらった民間船を改造した、簡易のものも含んでだ。

軍船として建造されたものは12隻だけだった。

これに南方植民領地で6隻の軍船を足して27隻の艦隊となり、占領されているアズラミールから先を奪還するのが今回の出征の目的だ。

ついでにヴァルサールの艦隊を補足できればこれを撃滅せよと指示が出ている。

リステルは予定通り、旗艦のフリゲートに揚陸艦2隻を連れ3隻で参戦。

これは南方植民領地では最大の戦力となる。

首街区のサルサリクですら中型船1小型船1の陣容だ。

植民領地から来た6隻が先陣と言われたので、喜んでリステルは最前線にいる。

この船に積んであるカノン砲は、アヤンタやヴァルサールで最大の大砲よりも攻撃力と射程がある。

風も今日は南方から吹いており、攻めるには悪くない風だ。

少し北寄りにかすめながら突撃し、そのまま北上してくるりと回れば再度射撃できると見越しており、この2回で確実に敵船を沈められると考えている。

リステルのフリゲートにはもう一つ有利な点が有る。

舷側に並ぶ砲だが、これを艦内で動かせるようにレールと回転台座を組み合わせた工夫をリステルが組み込んでいた。

これにより、左右あわせて8門をどちらの側方にも全て射撃できるのだ。

切り替える訓練も今回の遠征中に繰り返してきて、練度も上がっている。

なにより、提督となったリステル男爵代理に人望があり、士気が非常に高い。

船員からは英雄とまで呼ばれているのをみて、いったい何が有ったとマナミは驚愕するのだった。

「遠慮なく沈めていいと思う?マナミ」

リステルが後甲板に組んである物見から、後ろに話しかける。

「そうね‥常識より少しいい戦果くらいがちょうどいいんじゃないかな?」

この6日で随分と仲良くなり、言葉も近づいたマナミ。

「‥‥おっけー。いざとなったらレールガンも使って沈めよう‥‥目標6隻だな」

実はマナミの協力で、上空から偵察してもらい、作戦を立てていた。

敵ヴァルサール艦隊の主力たる軍艦は12隻。

全て軍艦で、大型艦4に、中型艦8だ。

艦隊の全体としては34隻いて、22隻は輸送船だ。

これは可能であれば拿捕したいとリステルは考えている。

今後の領地経営で必要となるし、中身がおいしいものならなおいい。

このフリゲートには陸戦用に20名の戦士も乗せている。

これはウルヴァシャックで乗り込んだ現地の戦士で、かつてのリステル親衛隊ほどではないが、訓練された戦士たちだ。

この20名とリステルが乗り込んで、勝てない戦は無いだろうと考えていた。

味方艦隊は恐らく明日以降の開戦と、アズラミールとの距離から考えているようだ。

リステルはマナミからもらった情報で、まもなく接敵すると知っていた。

リステルがHMDのマイクに号令する。

この船の砲手長と、揚陸艦の船長に無線機をわたしており、短距離無線で通信ができる状態にしていた。

これはもちろん他国や、味方にも内緒の準備だ。

船員にも固く口止めしている。

「各船戦闘準備‥‥砲は左舷に集めろ」

『了解!!』

頼もしい返事が返った。

「マナミの目にはもう直接見えているの?」

「いいえ‥‥式を飛ばしているの。ドローンの様に敵艦隊の上空に待機しているわ‥‥意味わかる?」

「もちろん‥‥そろそろ私にも見えるかな‥‥」

リステルは日々HMDから知識をもらい勉強している。

マナミという優秀な教師がついてからは加速度的に知識を増やしていた。

すでにジュノやヴェスタに迫る、現代の知識を持っているのだった。

「よし!見えた!」

リステルのHMDには望遠機能が有るので、裸眼の数十倍の倍率でより早く敵艦を見つけた。

「左舷砲戦よおぅい‥‥」

フリゲートの左舷に8門のカノン砲が螺旋の砲塔を並べる。

この時代の海戦の常識から見たら、二倍の射程が有った。

バランスを取るために、弾薬の乗った台が右舷に寄せられる。

これはバランスを取りつつ、砲撃による誘爆の可能性も下げてくれる。

「面舵いっぱい!」

ぎいぃときしみながら、セイルが裏打つ。

さらに、喫水線下の船体に安定させるバラスト入りフィンキールも装備していた。

そうして敵艦の想定以上の速度で切り上がってくるリステルの艦艇達にヴァルサール艦隊は、全く対応できなかった。

「撃てぇ!!」

リステルの号令で砲戦が始まった。

どどどどぉん!

敵艦隊の前方射程外から、リステルの砲が8門打ち込まれる。

船首砲を装備するガレオンタイプの大型船もいたが、射程外で撃てなかった。

あたるはずがないと、失笑した敵艦隊の艦長達はアゴが外れる手前まで口を開いた。

輪形陣の先頭3隻のガレオン船に全弾が命中。

つんのめるように立ち上がり、轟沈した。

リステルに続いて単縦陣で続く小型艦も、小さいながら50mmカノン砲を装備していて、これも4門撃ち込まれ、1隻の軽ガレオンが火を吹きマストを折られた。

航行不能ではあろう。

こうして右に旋回し距離を保ちつつ、今度は右舷砲戦。

この切り返しの間に艦内で砲を回し、装填され射撃準備を終える。

リステルの艦は今最大限に士気が上がっていた。




「まいりましたな将軍‥‥どうしますか?」

陣容の中央にいる大型船でシャラハ将軍と副官が話していた。

リステル艦隊と対するヴァルサール帝国艦隊は、消極的で艦隊全体が面舵で南方へ逃げようとした。

これは予定通りの航路でもあり、本来は問題ないはずだった。

高速艇を使った哨戒で、早期にアヤンタ艦隊を発見し、少しづつ右に右にと逃れてはいた。

「使徒様との約束を破るわけには行かない‥‥岬を回ってしまえば逃げ切れるだろう」

そうしてシャラハは撤退を指示し、艦隊を右回りでミルザーンの岬影へと進めた。

これは輪形陣の後方に続いている、輸送船団をリステルの鼻先に晒す動きとなった。

「こちらからは決して撃たぬよう徹底させろ!」

シャラハはそれほどにヴェスタ達を恐れていた。

なんなら空荷に近い輸送船など囮として置いていってもいいとさえ思っていた。




結果として、リステルは予定以上の戦果を上げた。

リステル艦隊以外のアヤンタ艦隊は、ヴァルサール艦隊を追ってリステルの横を抜けて行く。

リステルは予定以上の戦果を上げたので、今は拿捕した2隻の補給艦を曳行する準備をしていた。

大型艦2中型艦2小型艦1の大破もしくは轟沈を確認し、輸送船も3隻沈め2隻拿捕した。

実に艦隊の1/3近くをリステルにやられた計算だ。

拿捕した2隻は脚が遅く遅れていたものを、軽々追い越して取り囲み襲撃した。

マナミの情報で、あきらかにこの2隻が喫水も深く、重いことを知っていたのだ。

リステルはたまたまではなく、中身の詰まった宝物も手に入れ、ウキウキで待機し艦隊が帝国を追うのをながめていた。







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