【第116話:3度目の引っ越しは手際よく】
今回もVTOL機は格納せず、アークの格納庫をフルに活用して移動する。
羊を追い、牧草となる草も刈り取り一緒に積み込む。
ストレージから成形した草でも羊はちゃんと食べるが、アイ02によるとそのままの草がお好みらしい。
火山湖からボートを回収し、各方面に伸ばしていたセンサーやレーダー、カメラなどを回収。
あとは拠点からの積み込みとなる。
地下の坑道とつなぐパイプラインがとんでもない量になっていておどろく。
掘り下げる度に、採掘拠点を移動しパイプを作り継ぎ足していった。
現在深度は垂直方向に102m有り、パイプは実に220m分もあった。
これは半分は素材に戻しストレージに格納し、残りはすぐ使うからと格納庫に積み込んだ。
横積みして崩れないように輪止めしていたのだが、高くなったところで崩れてきてジュノとアイ03が潰された。
幸い保護膜とスーツのお陰で怪我はなかったが、アイ03が泣いてしまってしばらく皆であやした。
アイカに怒られたので安全第一と色々コストをかけて対策した。
アイ03はしばらくアイカにベッタリになってしまった。
その日はこの拠点最後の夜だねと、パーティ。
ジュノがまたクレープを焼いてくれて、沢山たべていちゃいちゃして寝た。
翌朝からは個室の荷物や最終撤収作業となり、ダイニングやキッチンを運び出す。
何故か個室を整理してきたヴェスタの顔色が悪く心配されたが、荷物の入ったダンボールを赤い顔で必死に隠そうとしたり、怪しい態度だった。
ジュノは後でこっそり確認しようと心に決めるのだった。
(なんだろう‥‥あのダンボールの中身‥‥なにか?!えっちなものかしら?!)
ジュノは頬をそめてにやにやと想像するのだった。
航海日誌の隠されたダンボールに、邪な思いを寄せて。
そうして順調に撤収したメンバーが旅立つ前に、恒例のお絵かきをする。
贅沢に沢山ペンキを出して、モップでかきかきと落書きだ。
今度は3人だけではなく、アイ達やマクラ達も描いた。
「ふふん、なかなかの出来栄え!」
最後にぐりぐりとみんなで余白に好き勝手に書いて出来上がり。
ぱちんと3人で両手ハイタッチ。
ジュノはほほにオレンジのペンキがぺったり着いていた。
それを指摘して笑う自分のほほにも赤い線があると、すぐ指摘され真っ赤になるアイカ。
落書きの笑顔に負けない、明るい笑顔がそこには有るのだった。
「賑やかになったね!落書きも」
「うんうん!スクショ撮っておこう!」
ヴェスタとジュノの笑顔には、度重なる旅立ちが映し出された。
結局10日の予定が20日も過ごした拠点だった。
以前にも一度ティア6に上げるためにアルミを掘りに来たことが有った。
チタンも狙って登頂し、アニマロイドの襲撃も受けたのだが、その谷に久しぶりに戻ってきた。
今回はスパイラルアークで来たので、なかなか大掛かり。
川の南側に小さな谷が別で有るのを見つけていて、そこに着陸した。
アークの小さな船体でもぎりぎりのその隙間に、ヴェスタは余裕でひとかすりもせず着陸。
「おおぉ‥‥毎回思うけどヴェスタって天才だよね!」
「本当です!今から見せるアイカの着陸が恥ずかしく感じるレベルです!」
「あはは、アイカもがんばって!」
遠隔操作でアイ04の乗っているVTOL機も降りてくる。
同じ谷に下ろすのだが、このVTOLですら下ろすのが怖い谷に、先にパーフェクトランディングを見せられて緊張するアイカ。
どひゅっと結構乱暴に降りてしまい、舌をだすアイカ。
上手だよ!とヴェスタにも撫でられたが、下りた瞬間にアイ04の悲鳴が「あぅん!」と聞こえたのでもっと練習しなきゃと思うアイカだった。
早速拠点を北側の崖に掘り、そのまま川側に抜けられる通路も掘る。
いつものマインビームでさくさく3人がかりで掘り進む。
マインビームの掘削は壁の補強もしながら掘るので、かなり自由な間取りにできる。
ちょうどいい感じの厚みなので、駐機場のような小さな谷と川の流れる山脈との間の谷をつなぐこととする。
今回掘りたい場所は少し北側なので、拠点までパイプラインを組む予定でたくさんパイプを持ち込んだ。
2m幅ほどで通路をまず掘り抜き、両端に大きめの扉を付ける。
谷に向かって右側を作業室にするので、大きめに掘り抜き、煙突やパイプライン向けの穴も開けておく。
今回は仕分け機も作業室側に設置して、各炉に振り分け精錬後にチェストに自動収納する設置。
段々と効率化・省力化が図られていく。
反対側に個室をいつものように3個掘ったところで、アイカから問題提起。
「ジュノもヴェスタも一緒にしか寝ないんだから、個室要らないんじゃない?こないだの拠点でもヴェスタが個室に入るの見たことないですよ?寝間着も下着もジュノの部屋だったし‥‥」
びくくとなるヴェスタ。
個室に行きたくない理由の方が先にあったとは言いづらい。
「そ‥‥そうね?な、仲良しだもんね?!」
ヴェスタが疑問形。
「仲良しだよ!一緒に寝ようね」
ジュノは単純に嬉しそう。
「では個室は2つでいいですね‥‥ここは大きいですがトイレにしましょう」
「アイカも一緒に寝れば、一つでいいね!」
「いえ、違いますね」
ジュノの意見に食い気味に笑顔で否定するアイカ。
そうして部屋割が決まって行った。
いつものように大きな脱衣所とお風呂。
ダイニングキッチンもだんだんと大きくなってきたが、いまだにテーブルセットは愛用の丸形を使っている。
「もうこれ絶対処分できないやつ!」
「あはは!ほんとそうね」
ジュノとヴェスタで楽しそうに家具も配置して、キッチンや小物も置いていく。
お昼を食べて午後からは、ヴェスタとアイカでパイプラインを引きつつ坑道を掘りに行く。
谷の地面や川底にパイプが通る溝を掘り抜き、設置していく。
大雨等で増水しても、川底に埋め込んであれば被害が少なかろうと考えた。
幸い掘るのは得意なので、苦労は少ない。
ジュノはあちこちに哨戒設備を設置しに行った。
大きめの谷を越えると、すぐにボーキサイトの鉱床があり、前回掘り進めた坑道の奥まで行く。
ここに採掘拠点を設置しパイプラインを接続。
後はマクラ達に残りを任せた。
人間の作業は、地下に掘り進んだら、採掘拠点を下ろしていくだけとなる。
ちょうどジュノも作業を終えて合流する。
「残りは明日にして、今日は早めにお風呂ね!」
ヴェスタの提案にジュノもアイカもうんうんと笑顔。
やはり作りたての新しいお風呂は気持ちが上がるようだった。




