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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第12章
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【第115話:バランスのよい生活達】

拠点に戻る間にアイカは目を覚ました。

エンジニアシートをリクライニングして、寝かせてベルトでしばったアイカがうめいた。

「ん‥‥あぁ?‥‥」

ヴェスタもジュノも気付いて見交わしうなずく。

ヴェスタはそのまま操縦し、ジュノがコパイ席からベルトをはずしてアイカを見に行く。

「アイカ‥‥?だいじょうぶ?」

そっと手をほほに添えたジュノが見下ろす。

うっすら開いていた鳶色の瞳がすいと開く。

ぱちぱちと瞬きすると、意思の光りがやどった。

「ジュノ‥‥ごめんなさい、寝ちゃってた?」

ぎゅっと抱きつくジュノ。

「地下の映像を見ていて、意識を失ったの‥大丈夫?心配したよ」

優しく落ち着いたジュノの声にすっと目を閉じるアイカ。

(あぁ‥‥あったかいなジュノ‥‥)

「ごめんなさい‥‥なんだかよく覚えていなくて」

離れてからじぃっと観察するジュノが、心配そうな顔からにっこりに変わる。

「いいの、少し休んでいて。もうすぐ拠点につくよ」

ぽんと最後に肩を叩くと前に戻った。

ジュノはヴェスタにうなずき安心させると、自分の席に戻るのだった。

事前に二人で話し合っていた。

アイカが言い出さなければ、あの場での発言を指摘しないと。

様子があまりに異常だったし、これ以上アイカに負担や刺激を与えたくないと、意見は一致した。

アイカはシートを起こして、ぼーっと回らない思考を連ねている。

(映像‥‥文字‥音を感じた?‥‥流れ込んでくる‥祈り?‥‥)

アイカは自分の思考にすら自信が持てなくなっていた。

頼りなく、不安が滲み出す。

(この感触はなんだろう‥‥なんだか懐かしい?‥‥)

言葉になる前に無くなってしまう感触に、アイカははっきりと意味を見いだせなかった。

既に高度を落とし始めたVTOL機の窓から、傾いた午後の日差しが降り注ぐ。

日中は自動で色が濃くなり調整してくれていた風防に、透明な360℃の視界がやんわりと、あたたかな色合いで重なっていく。

もうすぐ今日という日が終わるのだと、そっと告げるように。




遺跡を探しに行くとアイカが言い出して向かったのに、晩御飯までまったりしていてもその話題は誰からも出なかった。

アイカに気づかれないように時々ジュノとヴェスタは見交わすのだが、心配そうな目線を二人でアイカに向けるだけだった。

作業室の片隅にあるベンチで、アイカはアイ01と二人で絵本を読んだり、いなかった間の話しを聞いたりしている。

その表情は慈しみに満ちて、まさに母の表情であった。

採掘と精錬の作業を続けていたマクラの成果を、母船に運び込む作業をする二人も優しい眼を向けるのだった。


「少し時間を置いて‥アイカが自分で言い出すまでは触れずにいよう?」

ジュノはいつものように、自分の個室で二人ひしと抱き合いながらそう言い出した。

「‥‥そうだね‥‥アイカはとても興味を持っていたもの‥‥忘れたのなら、それだけのことがあったのだわ‥‥もしそうならそっとしておいた方がいいよね」

ダブルベッドの上で、そっとジュノの白金の髪を撫でおろしながらヴェスタも答えた。

今夜はアイカとアイ達4人は個室でのんびりしている。

最近アイカの指示で、夜はスパイラルアークのセンサーとアラームにまかせて、アイ達も休んで欲しいと頼んでいた。

アイ達もアイカのベッドで一緒に眠るようにスリープするのだった。

アイカに抱きつきながら、スリープしたのを見届けてアイカもスリープに入る。

そんな人間の模倣のような作業に、アイ達もアイカも意味を見出していた。

とんとんとやさしくお腹をたたく時アイカは、アイ達の金属で構成される義体に、たしかな温かさとやわらかさを感じるのだった。




翌朝もふんわりと皆が朝を楽しんで目覚め、ダイニングには微笑みが揃った。

最後に来たヴェスタの食事が終わり、少しだけ相談の時間を取る。

各食事毎に可能な限り集まり、話し合うようにしてきた。

「アイカ、採掘がそろそろ効率落ちる距離になったわ」

昨日戻ってから、精錬した素材を母船に運んだジュノが言う。

マクラ達はいまでは自律的に動けるようになり、アイカの指示を受ける頻度が下がっていた。

人格付与していないので、意見を述べてきたりしないし、文句一つ言わず今も地下で採掘を続けている。

「そうですね‥‥」

アイカがデバイスを操作して、拡張画面を出し確認していく。

「もう地下100m越えたんですね?マクラ達を労わなければ‥‥なるほど移動と運搬の効率落ちてますね‥‥」

当初予定していた採掘量には実は届いていた。

ナノマシンの喪失で、後戻りや足踏みと感じていたが、この拠点での採掘目標はすでに達していた。

「これは拠点を移してもいいかと思います」

にっこりと成果に満足するアイカ。

ジュノがヴェスタを見る。

ヴェスタもダイニングのテーブル上に描かれる、3D拡張画面を確認している。

「そうね‥‥予定通り北の山脈に移動しましょう‥‥どうかなぁもう一度偵察してみる?アニマロイドの件があったし、予定位置で大丈夫かしら?」

もともと10日程採掘したら北山脈に拠点を移そうと決めていたのだった。

先日一度アルミを採掘に行った谷に移動する計画だ。

思案するアイカが困り眉。

「地形的にはベストだと思うんですよね、あそこ。川も思ったより水量ありましたし」

ジュノも地形図を横に拡張表示して、確認していく。

「‥‥谷の上にレーダーとか置けば川上や山脈側を監視しやすいし、やっぱりここの谷で川の砂漠側に拠点を作ればいいんじゃない?アニマロイドは山頂で見たんだし」

ヴェスタもアイカもうんうんと賛成。

「この大陸で欲しい資源はあとはアルミと鉄‥‥貴金属やレアアース全般と‥‥あればチタンです!」

アイカがタスクも確認して、明るい顔になる。

「ナノマシンも順調に増えているし、引っ越し決定です!アークはどれくらいで動かせる?」

ヴェスタが決定と質問。

「いまでも拠点の移動くらいならいつでも行けます」

アイカもにっこり答えた。

「‥‥引っ越し終わったら約束の7日となりそう‥‥ちょうどいいかな?じゃあ2日で引っ越します!」

ヴェスタの決定に、アイカもジュノも笑顔で賛成した。

こうしてまた新生活に向けてタスクが動き出すのであった。









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