【第113話:VTOL機は大活躍】
VTOL機を見せることにした。
わかり易かろうと、3人は考えたのだ。
我々が神の使徒なのだと。
約束の3日目にアズラミールの港に、銀色に輝くVTOLで派手に乗り付けてやるヴェスタ。
下部ハッチを開けて、ジュノとアイカが飛び降りる。
ずん!ずん!
ジュノもアイカもわざと地面を凹まして着地する。
5mほどから飛び降りたので、二人にとっては負荷ですら無い高さだ。
遠巻きに見ていた兵たちが、蜘蛛の子を散らすように下がる。
VTOL機がキィィィィ!といって降りてきてから、シャラハは港の建物から出てきていたが、周りが逃げ出したので、一番前になってしまった。
更に大きな音を立ててVTOL機はアイカ達の後ろにトスっと静かに着陸した。
ヒィィィンと吸気ファンの音が大人しくなると、操縦席のクリア風防が横に跳ね上がり、すとっとヴェスタも降り立った。
機内にアイ03が残りアイドリングしているので、何時でも飛び立てる。
「シャラハ!来なさい!」
ジュノが目ざとく見つけて呼びつける。
くいくいと片手で手招きする。
心得ていてととと、と小走りできたシャラハがひざまずく。
本来は将軍職のシャラハは他国でも王族意外に頭を下げずとも良いのだが、拝礼だ。
アイカにコツンとされた恐怖はまだ残っていた。
センサーアイマスクでにこにこしているアイカが一番怖いとおもっているシャラハだった。
「使徒様、聖騎士様方ご機嫌麗しく存じます。お運びいただき恐れ多く思います」
王族に準ずる礼儀で挨拶するシャラハ。
「表をあげなさいシャラハ」
二人を従えたヴェスタが、今日は生身でバトルスーツだ。
使徒演技は続いているので、それっぽくは有る。
美しい金髪とかんばせは晒しているので、先日の使徒様だと兵士たちにも理解できた。
(このヴェスタ様もバケモノなのか?)
外装とスーツを見て、内心で冷や汗のシャラハが、失礼に当たらないふんわりの自然な笑顔をあげる。
「今日が期限の3日です。約束は果たされたでしょうか?」
先日と同じ美しい声が、今日は直接耳を打つ。
「はは、収容しておりました民間人は全て解放し、他の街から捉えてきたものも希望通り送り返しました」
焼き払ったダルパシェや、略奪済みのミルザーン、果てはウルヴァシャックから人さらいして連れてきた美しい女達は、護衛を付けて小型艇で送り返した。
全てヴェスタの指示通りとなる。
ちなみにファレチフ枢機卿は逆らったので、旗艦に軟禁してある。
ちなみに旗艦ヴァルテスタは航行不能で曳行して帰国する予定だ。
シャラハは別の大型船を仮旗艦としてそちらに移った。
うなずくヴェスタにふぅとこっそり息を吐くシャラハ。
「帰国はいつの予定ですか?シャラハ」
ヴェスタはにこりともせず圧をかける。
「はい‥‥物資の買付が済み次第、南回りで帰途につきます‥‥」
ヴェスタの眉がぴこんとあがる。
「‥‥10日ほどで出港の予定です」
じっとヴェスタは見つめている。
(‥‥怒らせてしまうだろうか?急げばもう少し早まるか?!)
必死に考え、たらーっと冷や汗が流れるシャラハ。
「が‥がんばったら7日くらいかも?」
にこっとちょっとヴェスタが笑う。
「いいでしょう。では7日後にまた来ますね」
そう言うとVTOL機へ向かうヴェスタ。
シャラハはまた拝礼をとる。
きぃぃい!とまた音がなり、使徒たちは帰っていく。
砂漠の方角にとんでもない速度で飛んでいった。
どぉんばりばりばりと神々の怒りのような轟音を響かせて。
空中には真っ白な雲が作られて、白く尾を引いて西の空に消えていった。
「ふぃぃぃいぃ!」
息を吐き出して、ぺたんと座ってしまうシャラハであった。
(こ‥‥こわかった‥‥)
「調べてみたいのです‥‥砂漠を」
アイカが申し出た。
「ラウメン神聖国が本当にあったかも知れないと思うと、気になるのです」
現地の老人たちかた色々と伝承を集めて、今回のシナリオを作ったのだが、実際にラウメンという国があったと伝える町があった。
アズラミールから砂漠にぬける谷間の道が古くからあり、その途中にオアシスの町だある。
そこの古物店にいた老人から、資料になると思い古い本や、革表紙の冊子を買い付けた。
その中で、冊子は大昔の研究者の日記だった。
そこにラウメンの国名を見て、今回のシナリオを作ったのだ。
興味を持ったアイカは、さらに詳しく日記を読んで具体的な座標を特定したのだ。
そこはほぼ砂漠の中央近辺で、一度上空をパスしたことがある座標だった。
映像の記録から解析し、十分遺跡が存在する可能性があるとアイカは判断した。
荒い映像しかなかったが、人工物に見えなくもないものが多数見つかったのだ。
「でもフライバイしたときは何もなかったよね?」
ヴェスタは自分が操縦して通っているので、何かあれば気付いたと主張する。
「じゃあ‥‥VTOL機だけ使わせてください!アイカ一人で調べて来ます。着陸しないからぁ」
アイカの行きたい度はとても高く、ヴェスタも困った眉になる。
「わかったわ‥‥三人で行くならいいわ‥‥ジュノはどう?来てくれる?」
にっこりするジュノがアイカの肩を抱く。
「もちろん!アイカを一人でなんて行かせない」
そうして準備を始め、お昼前に出発となった。
「まぁ、あんまりすることもなかったしね!」
とは脳天気なジュノ。
お弁当を持ってハイキング気分だ。
「楽しみなのです!」
アイカも知的興味を満たせる予感にわくわくしている。
ヴェスタは一人静かに操縦し、目的地の座標をめざした。
拠点からほんの15分程度の距離は、港街アズラミールに行くのと変わらない。
最近はスパイラルアーク内にバイオ燃料も貯蓄出来ているので、あまり燃料も貴重ではない。
「このあたりね‥‥一度重力波センサーをアクティブで当ててみるわ」
二人はそれぞれのシートで解析準備する。
ふとジュノは先日チタンを求めて同じことしたよなぁと思い出していた。
ズンとなにかが動いた気配がする。
モニターに複数の感がある。
「こ‥‥これって」
ジュノはモニター全域にある反応に戸惑う。
「‥‥すごい‥‥これ全部金属の反応ですよ?こんなにたくさん」
アイカが感動をしめし、瞳が輝く。
あった‥‥ラウメンはあったのだわ!とかアイカが叫びだした。
ヴェスタもジュノも、もう笑えない状況で、見交わすのだった。




