【第111話:さわぎの後の結果】
旗艦で大暴れしたので流石に港中が騒ぎになって、色々と集まってきたので、一度撤収するジュノとアイカ。
ばしゅーとパルスジェットの青い炎を吹いて、あっというまに上空に消えていった。
すぐにVTOL機のアイ02に回収されるだろう。
式神01の投影するヴェスタが残り、枢機卿ファレチフとシャラハ中将を正座させている。
『もしも‥‥約束を守らなかったら、一隻づつ沈めます‥‥お国に帰りたかったら速やかに果たしなさい』
そういって胸の前で手を組み、天を仰ぐとすいいと光とともに天にのぼり消えていくヴェスタ。
残されたシャラハとファレチフは、ぼけっと放心して座っているのだった。
「‥‥‥‥お国に帰りたかったら速やかに果たしなさい」
そういって胸の前で手を組み、天を仰ぐヴェスタ。
今頃は式神01が投影しながら上昇し、徐々にホログラムをフェードアウトしたはずだ。
カチン!
「はい!カット!」
アイ01がちいさいカチンコを鳴らす。
グリーンバックの前で天を仰いでいたヴェスタがふるふると震え、上向いたまま真っ赤になる。
ここまでは演技で乗り切るためと、真剣に演じてきたヴェスタ。
「よかったよヴェスタ!ばっちりです!」
アイ01が褒めれば褒めるほど恥ずかしさが増していくヴェスタだった。
「VTRチェックいきまーす」
「いやぁん!それだけはやめてぇ!!」
録画してたんかー!!となるヴェスタだった。
「アイカままが後で見たいといってました!」
やめてやめてと騒いでいるうちにジュノとアイカがVTOL機で上がってきた。
『キャプテン1番カーゴオープンぷりいぃず!』
『ダメですよ!ジュノ使徒さまですよ!』
ジュノの明るい帰還宣言にアイカが真面目な声で指摘。
アイカがあんまり真剣なので、ジュノは笑いだしてしまう。
『あはは!そうだった!しとさまぁ!せーきしジュノがもどりましたよお!』
がくぅと倒れるヴェスタ。
ひくひくとしながらも、がんばってカーゴベイを開けた。
なにが辛いといえば、このシナリオを書いたのがヴェスタ自身だという事実だった。
「くぅ‥‥アイカに使徒をやらせればよかった‥‥」
ヴェスタとしては責任をもって交渉する役だからと、自分でやると言ったのだが、終わってみれば死ぬほど恥ずかしかった。
ジュノ達が操縦室に上がった頃には、キャプテンシートで膝を抱えて木枯らしに吹かれる幻影すら見える、落ち込んだヴェスタがいた。
ヴェスタ達の要求は3点。
①民間人の即時解放。(期限3日)
②ラウメン神聖国領内(この大陸)からの撤退。(期限30日)
③ラウメン神聖国領海200海里での戦闘行為の禁止。(無期限)
これが果たされない場合はヴァルサール帝国船籍の軍船から毎日一隻沈めると脅した。
旗艦の船室を一撃でふっとばして見せたので、それが可能だと解ったはず。
ついでに甲板に大穴が空き、マストは二本折れた。
とりあえず3日後に民間人の解放を確認に来ますよ、と言ってある。
今日はもう帰ろうよとヴェスタが涙目なので、拠点に帰ることとなった。
ちなみに式神02を港上空に残してあるので、拠点に帰ってもアイカ経由で何時でも監視ができるのだった。
「じゃあ作戦の成功を祝して!かんぱぁーい!」
「かんぱーい!」
「かんぱぃ‥‥」
ジュノの音頭でグラスを掲げるアイカとヴェスタ。
ヴェスタはとても嫌そうで声のトーンも低い。
ダイニングで晩御飯の前に乾杯だとジュノが騒いで、アイカもいいですねと盛り上がった。
ヴェスタだけはええぇ‥‥みたいな顔だった。
よしよしとアイ01がヴェスタを励ます。
「かっこよかったよヴェスタ」
アイ01のやさしい言葉がまたヴェスタの胸をえぐった。
「くふぅ‥‥」
ぐいっとやけ酒のようにジュースを煽るヴェスタだった。
「これで引かなければ、実力行使だね!えへへ」
ジュノは実力を行使したくてたまらない。
「さすがにあれだけやったら解りますよ、勝てっこないと」
アイカも鼻息荒く言った。
あのレベルの船を沈めるのにスパイラルアークは過剰だったと解り、次回からはVTOL機だけで行けると判断した。
試験飛行時と違って、今のVTOLには20mmレールガン2機と、80mmの滑空電磁砲が2機ある。
滑空砲は榴弾と散弾が弾頭として準備された。
非装甲の木造船など、滑空砲の榴弾なら一発で爆散するし、20mmでも一連射で沈むだろう。
いざとなれば下部ハッチを開いて、ジュノがスマートライフルで狙撃することもできる。
「ヴェスタ‥‥今日は疲れたでしょ?お風呂入って寝ましょう」
アイカが元気のないヴェスタを心配する。
「そうだね、とりあえず3日はすることもないし、少しのんびりしようよ」
ジュノもいたわる気配を見せた。
どうやら恥ずかしかったのだとジュノは理解している。
アイカはまだ解っていないが、様子がおかしいとは気付いていた。
「うん‥‥ありがとう」
元気がでないヴェスタは考えていたのだ。
(これ‥‥なにかあるたびにアレやらないいいといけないのだわ‥‥キャスト変更はもうできないんだ‥‥)
ヴェスタの恥ずかしい役者生活はまだ続くのであった。
シャラハはうんざりしながら告げる。
「いや‥‥むりですよ?見たでしょあのバケモノ具合。これは本国に戻って指示を仰ぎましょう」
軍監としてシュレトフ教会から全権を持たされているファレチフは言う。
「あの生意気な女どもを捉えるのだ!‥‥これは神に逆らう愚か者に下す鉄槌なのだぞ!!」
落ち着いたとたんに、喉元を過ぎたのかまた気持ちの大きくなったファレチフ枢機卿。
思い出してみたらとんでもない美人だったし、などと考えている。
「‥‥大変申し訳ないが、軍を預かるものとしては賛同出来かねますな」
この遠征で初めてファレチフにさからうシャラハ。
軍令部から、教会の意向を出来るだけ叶えるようにと言われてきたので今までは従ってきたが、このままでは艦隊が壊滅する危機なのだ。
責任は全てシャラハに有ると同時に、軍務に関しての決定権はシャラハに有るのだった。
少し意味合いが違うが、ヴェスタとジュノの関係に似ている。
シャラハはジュノのように軍の進退に責任と強権を持っているのだ。
ふるふると怒りに震え真っ赤になるファレチフに、冷静に告げるシャラハ。
「従っていただくか‥‥下船いただくかです」
ジロっと睨み下ろすシャラハはこの遠征で、初めて本気になった気配を見せる。
この気迫に逆らえるほどの胆力はファレチフにはなかった。




