【第106話:実は慣れていました】
とりあえず、全員の所持するストレージをかき集めた。
外部接続のものから、スーツの内蔵ストレージまで全てのナノマシーンを集めた。
マクラに装備していた採掘用のものまで、全部供出させて7NPだった。
これは予想より少なかったが、時間さえかければ増やしていけると実感できる数字だった。
投入した素材は使用頻度の少ない工作機械や、故障や破損時の予備と思って残していた外装パーツや武装を投入した。
これらに含まれるレアアースや貴金属はナノマシンの大好物で、条件によっては24時間で倍以上に増える。
マインビームで分解して貴金属等を優先して触媒に投入した。
このリッチな触媒と大量の電力で、最初の48時間にナノマシーンは4倍程度となる見込みだ。
そこまで増やせば、ストレージにナノマシンを戻して普通のミッションに戻れる予定だ。
ストレージがないとほとんどの採取採掘が出来ないので、その方面のお仕事は2日間お休みに。
また武装やジェットなどの燃料や弾丸を使うものも補充の見込みが立たないので禁止となった。
電力も可能な限り我慢してナノマシンポッドに供給したので、ほとんどの事が出来ないと。
もうこれはお休みにしようとなって2日間の連休を設定した。
この星に来て初めての連休であった。
「電気がないと本当に何も出来ないのね‥‥お湯もでないのだわ」
お風呂に入ろうとして、途中から水に成り悲鳴をあげて出てきたヴェスタが言った。
「ごめんねヴェスタ‥気づかなかった‥‥ご飯もちなみに作れないから携帯食のバーでいい?朝ごはん」
明け方のアラームから騒ぎ続けて、朝ごはんの時間になっていた。
「あ‥‥ヴェスタ、髪も乾かせないよ?!」
「あぁん‥‥そっかぁ‥‥」
しょんぼりするヴェスタの髪はちょうど洗っていたのか泡だらけだった。
とりあえず水で頑張って髪を流してから、アイカとジュノでタオルを持ち出してきて、ふきふきとヴェスタを吹き上げる。
ぶるぶると震えて寒そうにするので、ふたりも裸になって温めた。
「くすん‥‥しゃむいおぉ」
「ヴェスタだいじょうぶ?」
ぎゅむぎゅむと全身でサンドイッチにするジュノとアイカが前後から体の熱を与える。
「うん‥‥あったかい‥ありがとジュノ、アイカ」
こしこしと腕や足もこすって温めて、いつもの制服に着替えるヴェスタ。
「これ‥‥こういった事態に向けて下着も一通りいるね」
「それほんとだ」
ヴェスタの言うように、保護スーツがなくなることを想定しない生活をしていた。
ジュノとアイカもいずそうにして、同意し考えた。
何枚かタオルやシーツを持ち出し、3人分の下着を準備してみた。
「意外と上手にできたかも?」
アイカがちくちく縫い上げたブラを自分で装備する。
ちゃんとサポートして敏感な部分も隠せた。
その上から改めて服を着ると、快適になった。
「いいです!すれないです!」
万歳してみせるアイカは下が装備0なので、ちょっとチグハグではあった。
「いいね!つぎはショーツを作ろう!」
あ、と思い至り下を見て慌てて手で隠すアイカだった。
トマトのような顔色になった。
あははと笑い声があがり、ヴェスタも温まってきて顔色が良くなった。
一時間くらいああだこうだと整えて、なんとか3人共服装としては復旧した。
「あとは予備がないとだね」
ジュノが現実的な話しを出す。
「まあ‥‥ここ2日間の話だし、これで我慢しましょ」
ヴェスタの意見にアイカもジュノもうなずいた。
アイカのスカートも予備であったジュノのを借りたので、膝丈の白フレアスカートになった。
「アイカのミニスカートはレアね‥‥かわいいわ」
「本当!ロングに見慣れてたから新鮮だわ」
「えへへ‥‥そっかな?、今度から時々はこうかなぁ」
ヴェスタとジュノに褒められて、てれてれとするアイカ。
もじもじする姿がたまらなかったのか、ジュノにむぎゅぎゅと抱かれる。
「ずっとでもいいよ!アイカ、とてもいい」
うしろから抱きついて、アイカの頭にほほずりをした。
お昼に食べたいと、ジュノが山で野ウサギを撃って来た。
ライフルを肩に、ウサギを片手に戻ってたくましい姿。
ヴェスタとアイカで付近の野草を調べながら採取して、山芋とキノコも見つけてきた。
久しぶりのサバイバルで、ジュノとヴェスタは実は非常にこういった生活のスキルがあると思い出した。
「なんだか体がおぼえているわ!」
「なんかやらしいわよ?!言い方」
ジュノの意見に頬を赤くするヴェスタだった。
小さな焚き火で簡易コンロを使う。
こんなのあったねと、笑顔で懐かしむ二人。
ヴェスタがかがみ込んで、ちょっと掘り下げた焚き火をふーふーして火を起こす。
アイカも連れてきて、それを後ろからみるジュノ。
「なるほど‥‥これはエロいです」
「でしょ?!ヴェスタって体柔らかいよね?なんていうか、おしりの突き出し方がすごいエロいわ」
ヴェスタは頑張って火を起こしているのに、スカートの中までのぞかれ、ひどい言われようだった。
さいわい聞こえなかったのでにこにこと起き上がるヴェスタ。
「火が付いたよ!あったかいわ」
そう言って焚き火にあたるヴェスタの周りに三人であつまりにこにことするのだった。
「これでお昼ごはんを調理できます!」
アイカのやる気のある宣言。
「すぐ食べれるように、うさぎは捌いてねかせてあるよ」
狩猟から下ごしらえまで万能のジュノ。
「じゃあ私がお野菜を下ごしらえするから、アイカは調理始めちゃって」
ヴェスタが言い、分担が決まった。
ジュノはせっかくだからと、ダイニングからテーブルセットを運び出し、外で食べれるように整えていった。
アイ達もジュノを手伝い、タープを張ったり、素材倉庫から持ち出したウッドパネルを敷き詰めたりと準備をした。
『いっただっきまーす!』
三人で声をそろえて、食事を始める。
アイ達も充電器を設置して、一緒にごはん。
「おいしい!」
「ほんと美味しいわ!」
ジュノとヴェスタの高評価にはにかむ笑みを浮かべるアイカ。
「えへ、よかった」
野ウサギのシチューやまいもでネットリの食感を添えて、を堪能する三人。
「このキノコも野ウサギの野趣にあうわ!」
ヴェスタがグルメな感想。
「やっぱり携帯食じゃ味気ないんだよね」
ジュノがしみじみ言う。
「なんだか慣れてしまって携帯食で満足してました。これからはできるだけ食事を作ろうと思います!」
アイカが宣誓して、ジュノとヴェスタも賛意を示した。
こうして、思いがけないサバイバルがまた始まり、三人のキャンプ生活のような休日もまた始まる。
「なんだか楽しくなってきた!」
ジュノの声に同意する二人。
にんまり顔を合わせる三人には、もう悲しい影はないのだった。




