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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第11章
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【第104話:シリアスアラーム】

拠点内にもスパイラルアークからアラームを受け取るデバイスを置いてある。

地下まで聞こえるようにと、大きな音を出せる仕組みだ。

形としてはラッパだった。

びーー!びーー!

繰り返し2回のアラーム。

船体に関するシリアスアラームだった。

明け方に近い時間。

ばん!

裸で個室から出てきたジュノがしゅるんと白い保護膜をまとう。

『あいか!!』

一度霊子通信で叫んでから、スパイラルアークに向かい裸足のまま走り出した。

だだっとヴェスタもやっと出てくる。

明るい場所にでて、裸だったと気付いて、ジュノと同じように首と腰のリングでしゅるんと保護スーツをまとった。

スリッパのままアークに向かうヴェスタは、成り続けるアラームですっかり不安になってしまった。

(アイカ‥‥)

昨夜の晩御飯でアイカが船体を調べると言っていたので、この不具合に関係しているのは間違いないだろう。

2度なって一度休むアラームは、母船スパイラルアークが航行不能となるような不具合で発するコードだ。

ちなみに一回づつ鳴るのは襲撃と判定する。

より早く気づかなければいけない内容を少ない回数で知らせる。

そして、鳴り止まないのは、現場で止めるすべがない場合だ。

操縦室に向かったヴェスタが出てくるジュノとはち合わせる。

「いない!」

短く言うとジュノは後部の荷室側に走る。

「アラームとめて!」

それだけ叫んで風のように走りさるジュノ。

シリアスアラームは、発生地点以外ではヴェスタしか止められないのだ。

キャプテンシートの端末に、ヴェスタが手を触れて、やっとアラームが止まった。

画面の表示は船体に異常としか出ていない。

通常はその後にどのユニットか、場合によってはどんな内容かと詳しく出るはずだ。

(‥おかしいわ。外観も見た感じで異常はなかった。アイカはナノマシンポッドを調べると言っていた)

そもそも最初の霊子通信にアイカの返事がなかった時点で、最悪を想定したのだ。

『ヴェスタ第一格納庫に来て!』

ジュノからの通信だ。

『りょうかい!』

手短に答え、ヴェスタも走り出した。

(いやよ‥アイカ‥)

ヴェスタの翡翠の瞳がついに滲んであふれた。

ジュノの声に切迫した気配を感じ取ったのだ。




「あーん!ままあぁ!!」

アイ01がぽすぽすとナノマシンポッドのあるユニットの扉を叩いている。

「ジュノ!」

ヴェスタもたどり着いて、声をかける。

ジュノは通路横のメンテナンスハッチに上半身を入れていた。

白い保護膜につつまれた下半身がうねうねと動く。

中でなにかしているようだ。

取り合えすアイ01から事情を聞こうと抱き上げる。

「アイちゃん!おちついて!どうしたの?」

「ママが中にいるのに!しまったの!」

あーんと無き続けるアイをぎゅっと抱きしめるヴェスタ。

ぷしゅ!

圧縮空気の音を立てて扉が開いた。

「アイカ!!」

ヴェスタはユニット内に駆け込んだ。

小さな制御端末が足元に落ちている。

拾い上げればそれはアイカの使っているものだ。

ガラスの仕切りが下りていて、一段下がったその向こう側は、本来ナノマシンの貯蔵槽だ。

「そ‥そんな‥‥ナノマシンが空だわ」

通常は虹色に輝く液体のように見えるそれがない。

そしてアイカも見当たらない。

「アイちゃん状況をおしえて!おねがいよ!」

アーンと無き続けているアイ01をぶんぶんとふるヴェスタ。

「あぅん、ま‥‥ママが中から操作していたらしまったの‥‥」

アイは外のメンテナンスハッチに入って、アイカの指示でマニュアル操作を動かしていたらしい。

「な‥‥何をうごかしていたの‥‥」

「えと‥‥拡張機能だよ?」

がくっとひざを付いたヴェスタ。

ジュノがやっと戻り、訊ねる。

「どうなったの!アイカは!?」

ヴェスタはぽろぽろと泣き出してしまう。

「うっうああぁあああん」

アイ01も一緒にあーんと泣き出す。

「ヴェスタ!しっかりしてえ!」

ぎゅっと抱きしめるジュノ。

「ぐす‥‥あ‥アイカは拡張機能の中だわ‥‥きっと」

びくんとふるえるジュノ。

「そ‥‥そんな‥‥‥‥いいえ!ヴェスタしっかり、アイカはスリープできるはず」

はっとヴェスタも思い出す。

すっかりアイカのことを人間だと思いこんでいた。

拡張機能でシフトした空間では気体ですら分子が動かないので、呼吸が出来ないのだ。

アイカはスリープにはいれば30分程度無酸素でも死なない。

そもそも義体が死んでも本体はスパイラルアークのCPUにいるのだ。

それでもとジュノとヴェスタは恐れる。

義体を失いリブートした時、そこにいるアイカはあのアイカではないと。

たたっとメンテナンスハッチに戻るジュノ。

「ヴェスタもアイも外に出て!」

思い至り、作業をしながらジュノが叫んだ。

「うん!」

ぐすっと鼻をすすりながらも慌てて外に出るヴェスタ。

アイ01も泣き止んでふるふると震えている。

「ドア閉めるよ!」

叫び声とともに、ジュノの操作なのか、ぷしゅっとドアが閉まる。

「操作バイパスパネルを開けて!ドア横右側のしたよ!」

ジュノの指示に従い、ドア横のパネルを見るヴェスタ。

すでにパネルは開いていて、アイカも操作したのだろう。

ダイオードのサインと、ショートコネクタなどが収まっている。

「3番と4番は?光ってる?」

ジュノの声に焦りが交じる。

「光っているわ!」

「3番のピンを抜いて!それで動くはずだから、ドアの数字が変わったらもどして!」

電子制御の不具合修理の為に、直接作動部品を動かすパネルだった。

ドアの横にある表示窓の赤いセグメント表示が2になっていることに、今ヴェスタは気付く。

着陸してからずっと1だったはずだ。

ピンをぬくとギュイーンと作動音がして、数字がパタと1になる。

ぱっとヴェスタはピンを刺し直した。

「1になったわ!」

ジュノに叫ぶヴェスタ。

「今開ける!」

ぷしゅっと音がしてドアが開いた。

「アイカ!!」

そこにはくったりと倒れているアイカの姿。

アイ01も飛び出してアイカにすがった。

ヴェスタは抱き上げて、アイカを抱きしめた。

「アイカぁぁ!!」

まったく呼吸も心音もないあたたかな身体を、恐怖に震えながら強く抱きしめ続けた。


『トクン』


よわよわしいが間違いのない心臓の動きをヴェスタは感じ取った。

そのために強く胸を抱いていたのだ。

「あぁ‥ぁ‥あいか‥‥よかったぁ‥‥」

真っ赤な顔でぽろぽろと流れ落ちる涙は、意味を変えてヴェスタを癒やす。

だだっと入ってきたジュノにも顔をあげて笑ってみせるヴェスタ。

「アイカは!?」

ジュノはまだ不安そうだが、ヴェスタの表情から、大丈夫だったと気付いてはいる。

「無事だと思う、心音があったわ」

スリープ中の義体は極端に心拍も血圧も下がり、呼吸は非常に稀になるのだった。

「エンジニア席に連れて行って、強制復帰させよう」

ジュノにもやっと笑顔が戻り、ぽろりと涙がこぼれた。

こくとうなづいたヴェスタがアイカを抱いて立ち上がる。

あーんといつまでも泣き止まないアイ01を抱き上げ、ぎゅっとするジュノ。

「アイちゃん大丈夫、ママは大丈夫よ」

そういって頬に押し付けられて、アイ01も気付いてジュノを見た。

「もうだいじょうぶ」

ジュノの顔にぎゅっと抱きついたアイも、やっと泣き止むのだった。







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