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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第10章
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【第101話:まどろみの中救われたもの】

朝いつもの時間に目覚めたアイカは、絶賛睡眠中の二人を認識しどうしようかなと考える。

(まだ3時間しか寝ていません。やはり時間を調整すべきでした。)

そもそも何時に目覚めるようにと指示を受けていなかった。

本来ならそれではスリープできませんよと判断すべきだろう、AIとしては。

にこっとわらうアイカ。

いつもと同じ時間に起きるようにと決めてスリープしたのはアイカの判断だった。

まんがいちヴェスタ辺りがいつもの時間に起きて、転んで泣いてしまうかもと心配になって3時間のタイマーにしたのだ。

当人はアイカの右肩にちょっとよだれを染み込ませながら、すやすやとしている。

表情のないヴェスタは、とても幼く見える。

(いつもの無表情だと感じるあの顔は作られた表情なんだな)

左側で、もぞぞとジュノが動く。

「んぅ‥‥」

起きたのかなとそちらに目をやれば、アイカの左肩にむにゅんとほほを押し付けヴェスタと同じ様に表情はない。

ジュノの寝顔は起きている時よりもより柔らかい。

(普段どんなに楽しそうにしてても、嬉しそうにしていても、ジュノはどこか無理しているように見える‥‥寝顔が一番幼いのはヴェスタと一緒だな)

この8ヶ月程の付き合いの中で、アイカは二人の専門家になった。

主に理解を深めたのはこの星に来てから、いや再起動してからなのだとも自覚がある。

このわずか一月程度の時間の中、二人の表情や言動から感情判定して、それは違うなと自分の判断を修正して来た。

高度に組まれたそれらモジュールよりも優先し信頼できると思う判断がアイカの中にある。

それを何と呼べば良いのか、どこに有るのかすら解らないコードに認識されない判定。

そういったものがアイカを専門家たらしめる。

(少しこの時間で情報を整理しておこう)

再度スリープの設定をしてもいいし、起き上がっても良いのだとアイカは考えるが、それはしない。

二人が起きるリスクや再スリープに問題があるわけではない。

ただ、アイカがそうしたいと思う。

このあたたかいベッドにもう少し居たいと願ったのだ。

(ここの住人が使う言語はプロジェクトが予想していた言語分類LA.C1からLA.C3に当てはまった‥‥おかげで尋問もスムーズにいきました)

アイカはこのアルドゥナで知った2国、アヤンタ王国とヴァルサール帝国が同じ言語ベースだと学び、それぞれの人間を尋問することで、発音の特徴や言い回し・表現の語彙も学んだ。

いまでは現地の人間と変わらない会話能力を獲得している。

(最も驚くべき情報は——“魔法使い”という存在だ。種族? 能力階級? あるいは職能?この惑星には、魔法と称される現象が実在するということ‥‥)

尋問した二人はそれではなかったが、両国に一定数そういった者がいることを聞き出した。

(確認がとれたわけではないですが、あの式神を感知し攻撃してきた魔法‥‥あれはAIのモノではないと規定したほうが納得がいく。襲撃時にAIがいるならと想定した行動が見られなかった)

アイカは俄然興味が湧いていた。

(可能でしたらその魔法使いなるものを調べたいですね‥‥どんなコードを書くのか見てみたい)

魔法発動の隔離演算セルや制御APIのアクセシビリティには工夫の余地があり、アイカも日々研鑽している。

その謎の技術が、発想の助けになるかもと思うのだ。

右側でヴェスタも、もぞぞとする。

「いやぁ‥‥んん‥‥」

ちょっと眉間にしわがより、不快そうにするヴェスタ。

すぐにふわっと無表情にもどり、すやすやとした。

(‥‥よかった‥何かいやなこと思い出したのかな?‥‥よしよしとしてあげたいですが、アイカの腕は現在捕縛されていて動かせません‥‥)

アイカは首をうごかすと肩も連動して動くので、出来るだけ目の動きで左右の二人を確認していた。

ヴェスタの寝息が安定したので、また思考に戻るアイカ。

(ジェスタが言っていた、現地の神々の話も面白そう‥‥あの何も無い砂漠に‥‥神々の国が有ったと伝わるらしい‥‥そういえば地形を見たときにも違和感を感じたのだったわ‥‥)

アイカは事前調査の地形図を確認したとき、あまりに自然だなと感想を持った。

まるで誰かが描いたようだと。

AIが指定条件から構造物を“生成”するときに生まれる癖——あの特徴に似ているような気がした。

(‥‥だめです、これは考えてわかることではない。現地に行かなければ判断出来ないわ)

そこはかとない不安がわく。

もっと楽しくて明るい事を考えようと、気持ちを切り替えるアイカ。

沈んだ思考をいやし心を保とうとするAI。

(ティア6で作れる装備はまだまだ有るので、チタンがほしいですね。あのトカゲの残骸も調べたい‥‥VTOLなら簡単にあの土地までいける)

アイカが魔法で吹き飛ばした、あのアニマロイドはまだ複数あの山に潜伏していると想像できた。

いい資源だなとアイカは考えた。

(チタンがあっちから襲ってきてくれる‥‥探さずとも‥‥うふふふ)

ちょっと物騒なことを考えにんまりのアイカ。

今のティア6装備なら余裕をもって倒せると考えたのだ。

(ジュノとヴェスタに貫通力のある装備をもたせれば余裕ですねきっと)

アイカの中では貴重なチタンインゴットに手足が生えたものが攻めてくる絵面が浮かんだ。

自分たちの戦力を考えると今後取れる戦略も変わったな、とも思う。

(いっそどちらかの国を滅ぼせば争いは起こらなくなる?)

物騒なことを考え出すアイカ。

そしてそれは十分実現可能なのだ。

(別に皆殺しにしなくてもいいのです‥‥国として機能しない程度に弱らせれば残りの国に吸収‥‥あぁそれでは解決しません。やはり両方滅ぼしますか‥‥ん?なんか違う気がする)

たった今、破壊神の気まぐれでこの星が滅ぶ未来が回避されたと、誰も気がつくまい。

(となると‥‥どちらかの技術的弱者に手を貸し味方にする‥‥ではどうですかね?)

アイカは上目遣いに何かを求め見てみる。

もちろんそこに答えなど書いていないのだが。

(朝ごはん何にしようかな‥‥果物もそろそろまた食べないとな‥‥ジュノはオレンジが好きだった)

この星の未来はAIのまどろみの中に守られたのだった。

早くおきないかなぁ、と思いながらも、もう少しこの幼い寝顔を見ていたいとも思うアイカだった。


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