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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第10章
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【閑話:リステルの冒険】

リステルは秘策を持って、領主の艦隊を従えた。

もともと日の出とともに出港する予定だったらしく、問題なく島を出られた。

本来は一度カルサリクという北西向かい側の大陸都市により、色々と仕入れて北の母国を目指す予定だったらしい。

(なんと愚かな‥‥この程度の戦力で王国をなんとかしようなどと考えるとは)

リステルの乗る中型船は確かに高性能だ。

どんな理屈なのかまだリステルには解らないが、非常に抵抗少なく海上を進む。

一般的な同種の船に比べたら倍は速度が出ているだろう。

これは船首吃水下の特殊なバルバス・バウから始まり、船尾まで流体力学に則った最適な船体の形と表面加工の差だけで出るものだった。

追い風を二本のマストで横帆がはらみ押すとは言え、あり得ない速度が出ている。

競技用の小型船並の速度だ。

そして両舷に合わせて8門つまれたカノン砲は、王国にある最新の砲の数倍の射程と威力を持ってはいる。

海戦になれば、風向きによっては数倍する敵艦に完勝することも出来るだろう。

随伴する揚陸艦も小型だが高性能で、この船よりも速度が出る。

兵士20名と車両2台を積み、そのまま砂浜に乗り上げ船首がパタリと倒れ揚陸出来る作りだ。

その作りだけでも大発明だとリステルはわかるが、その揚陸艦4隻程度で、なにが出来るのかと正気を疑う。

揚陸艦には最新の軍用ライフル装備で身を固める兵士と例の歩兵戦車が積んであった。

砲に螺旋のライフリングが切られているので、リステルが相手したあの車両よりも新型で性能は上なのだろう。

たった8両では騎兵隊一隊で蹴散らされるだろうとも思う。

あの領主と違い、リステルには確固たる戦略眼と軍務の知識、そして国と言うものが理解できていた。

(男爵ごときが随分と大きな夢を見たわね)

それがリステルの領主に対する評価だった。

「代行!!てえへんです!」

水夫が走ってきて告げた。

「どうした?」

「ハーピーがでたんでさぁ!!このままじゃおしまいだあ!!」

リステルには理解できないパニックに陥る船員。

どれどれと船首方向に進むと、たしかに進路上に大きな鳥が6羽ほど飛んでいる。

(なるほど、上半身が女だな‥りっぱな乳も付いている)

リステルは常時装備しているレールガンのライフルを抜き、無造作に撃った。

スポーツグラスの様に装備しているデバイスが既にロックオンしており、保護スーツを制御し必中弾を6発撃つ。

ぱぱぱぱぱぱん

ライフルはリステルによって改造されていて、フルオートで撃つことが出来た。

そしてデバイスのサポートがあれば外すこともない。

ハーピーは上半身の人間部分を粉砕されて、海面に落ちた。

「す‥‥すげえ‥‥いま一瞬で6発撃って全部当てた?」

「いや威力がおかしいだろう、大砲が当たったみたいに弾け飛んだぞ?」

ざわざわと戦闘準備をしていた兵達がライフル片手に騒いだが、まあ弾を無駄に撃たせずにすんだなくらいにリステルは思った。

大量に積んでいるとは言え、弾丸も有限なのだと。


翌日は風が凪いで船足が遅くなった。

「代行!!てえへんです!」

また船員が走ってきて告げる。

「またか?どうした?」

「シーサーペントがでたんでさぁ!!このままじゃおしまいだあ!!」

昨日も聞いたような事を叫んで駆け寄る船員の肩を叩き、前に出るリステル。

なるほどあれがそうかと感心する。

体長は30mを越えるだろう大蛇のような姿。

胴は人間の身長をかるく越える太さだろう。

小柄なリステルなどひと飲みできそうでは有る。

ただ見る限り、海面をうねうねと縫っているのは一匹のようだ。

リステルはまたライフルを抜き、デバイスでロックオン。

チャージ時間を3秒ほどかけると、フルチャージを告げるチャイムが鳴る。

ピン

どぉん!

ライフルはリステルの改良により、チャージショットでレールガンをうつことが出来た。

初速は8マッハに及び、銃口についたフラッシュハイダーが十字に火を吹いた。

銃身内の空気があまりの速度に燃えて吐き出されたのだ。

30㎝もある炎の十字が收まる頃には頭部を失ったシーサーペントがドンと船体にぶつかって流れ去る。

「ええと‥‥代行のあれは大砲だったのか?やはり」

「うん‥‥音もおおきかったね」

少し集まった兵士達の温度が気になったが、人死がでなくて良かった位に思っていた。

対した戦力ではないが、大事な兵士だからと。

(まぁ補充は利くのだがぁ)

ざわざわとする中、リステルは笑顔で船内に戻るのだった。

(あと3日くらいか‥‥遠いな王国)


翌日は晴天で風も少し戻り快調に北上した。

アヤンタ王国の首都マヤカランは港湾都市だ。

もともとヴァルサート帝国から逃げてきた貴族の立てた国らしく、歴史は浅い。

もとは植民地だった土地で、自国と違い茶色や黄色の肌の住人が主だったらしい。

今では混血も進みいろいろな肌色らしいが、リステルの父は先祖返りか白い肌に青い目金の髪と、ヴァルサートの血を出していた。

リステルも肌色以外はその特徴を引き継ぎ、琥珀の姫君と言った容姿だ。


「代行!!てえへんです!」

また船員が走ってきて告げる。

「どうしたどうした?」

「クラーケンがでたんでさぁ!!このままじゃおしまいだあ!!」

昨日も一昨日も聞いたような事を叫んで駆け寄る船員の肩を叩き、前に出るリステル。

なるほど、これは本当にやばいなと、船室に駆け戻った。

(あれは生身じゃ勝てない)

青白いクラーケンは30mはありそうな、シーサーペント並の触腕を2本振り回し暴れていた。

全長は50mほどはありそう。

テキパキとリステルは服を脱ぎ、保護スーツの上に外装パーツを身につける。

こういった自体を考慮し、素早く脱着出来る位置にいつも置いてある。

30秒ほどで装備を終えたリステルは、白い輝きをまとい圧縮空気を白く尾を引いて舞い上がる。

ジュノのオレンジラインが趣味じゃないと、青いラインに変えていた。

船首を一度蹴って、更に遠くまで飛ぶリステル。

両手にはフルチャージにいたったライフルとショトガン。

どぉん!

まずライフルを撃って、こちらに来た触腕を吹き飛ばした。

トンっと触腕を蹴って更に飛んだリステルの足元を触腕と触手がうねうねと流れていった。

ズバァアアアン!

高度10m程からショットガンを撃つ。

クラーケンの頭部にフルチャージのレールガンが10発叩き込まれ、1m程の大穴が開いた。

すとっとクラーケンの頭部に下りたリステルはもう一射、自分で開けた穴に打ち込む。

ズヴァン!ズドォン!

ライフルの方は再度チャージが終わっていて、大穴を掘削した。

ショットガンはオマケのように大穴の周りを拡張して青白い液体を撒き散らした。

ばしゅぅ!

リステルは圧縮空気と保護スーツの脚力に任せて飛び上がる。

50m程上昇して、振り返り船を目指す。

しゅうぅ

空中でまた圧縮空気を打ち、すとんと船上の人と戻った。

ぱちぱちぱちぱち

兵士達は真っ赤な顔で英雄を迎えた。

「すげえ!!俺達の代行は最強だ!」

「おお!しかも美人だ!」

わーわーと盛り上がった中を、船室にもどるリステル。

(美人は関係ないじゃない‥‥)

などと思いながら、頬を染めるのだった。

けっこう可愛らしいとも噂になった。

翌日は何もなく、やっとリステルは目的地の王国にたどり着くのであった。

大冒険の果てに。


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