【第10話:これが日常になりますよ】
作業者が二人に戻り、進行度は早まった。
「あとは鉄がほしいです!たぁっぷり喰らわせてくれたらティア4です!」
アイカが興奮して言う。
ジュノが再起して、二人で採掘をするので、北にある赤鉄鉱の鉱床は掘り尽くしてしまったのだ。
ティア3でマインビームとインベントリが強化されたのも大きい。
外付けのマインビームはバックパックのインベントリとパイプで直結され、非常に効率良く大量に採取が可能になった。
ブーツにもつま先とかかとに跳ね上げて収納もできるローラーダッシュ用のタイヤが付けられ。
自前の足より早く楽に、エネルギー効率にも優れた移動で、100km単位の移動が可能になった。
先日一泊でジュノとヴェスタが北の鉄をすべて採取して、いよいよこの島に採取ポイントが無くなった。
「鉄は‥‥南東の島にいかないとこれ以上手に入らない」
ヴェスタは楽観できないでいる。
この大きな島の南東方向に1/4程度の大きさの島があり、事前調査でそこには鉄鉱床が確認されている。
距離は20km程度と測量結果が出ている。
「海を越えないとだね!」
すっかり元気を取り戻したジュノ。
「すぐそこに見えてはいるけど‥‥海が未探査だからなぁ」
ヴェスタは慎重であった。
「ジェットパックはまだ?」
「ティア6ですよ?!ジェット自体が‥‥アルミもありませんし」
ジュノの意見をアイカが否定する。
「それにティア6なら最低限1000NPはナノマシンが欲しいです‥‥現状だとまだ一月はかかります」
アイカの説明にさすがにしょんぼりのジュノ。
「‥‥まずは足元からね。鉄を求めて海を越えましょう」
「そうだね‥‥とりあえず船かな?さすがに泳いで行くのは怖いよね」
ヴェスタのまとめをジュノが引き継ぐ。
「船ならすぐ作れます!」
アイカがにっこり。
「いいね!明日いくことにして、今日は色々準備して海も偵察しよう」
ジュノもにっこりに戻った。
ヴェスタも一緒に笑いたいなと理性では思ったが、すこし微笑むくらいで精一杯だった。
ジュノが察してヴェスタを抱きしめる。
「がんばろうねヴェスタ」
「うんジュノ‥‥ありがとう」
ちょっと頬を染め微笑んだヴェスタは、最近優しくされるのでジュノがとても好きになっていた。
抱き返そうとちょっと勇気をだした所でぱっと離れてしまうジュノ。
「よし!アイカ外で早速船体作ろう!」
「はーい」
二人で手を繋いででていってしまい、手を差し出そうとしたヴェスタは真っ赤になり取り残されるのだった。
(あう‥‥もっと早く抱きしめたらよかった)
ちょっと涙目になるヴェスタも外をめざした。
本船の横に建てた作業小屋は大分設備で埋まってきた。
各種溶鉱炉と組み立て作業台が主で、石材・木材の加工作業台も置かれている。
今は銅鉱石と錫を溶かせる溶鉱炉と、鉄を溶かせるものが設置された。
まだ稼働していないが、アルミ用に電気分解炉も準備されている。
採取した鉱石をそのまま本船インベントリに入れるより、精錬してインゴットにしてから入れたほうが変換効率が上がるのだった。
また電子部品等も簡単なものなら加工して作れる作業台で作り、ナノマシンの消費を押さえている。
作業小屋の東側には取水した海水を一時溜めるタンクと、その海水を浄水して純水を貯めるタンクが置かれた。
その並びに濡らしたくない資材を貯める小屋も設けた。
ナノマシンに入れないで、そのまま使う資材だ。
そしてもう一つの大きな変化は、個室を準備したこと。
今回のジュノ事件で、やっぱり個室は要るよとなったのだ。
本船を挟んだ反対側の南に長屋の様にヴェスタ、ジュノ、アイカと個室を3つ準備した。
ベッドと化粧台とタンスくらいしか置けない小さなものだが、プライベートが有るというのは落ち着けるねと、好評だ。
そういった建物類を石材の防御壁で繋いで、クレーターの内側にも一周陣地を築いた。
万が一の襲撃にも対処できると、一安心したのだ。
屋外に展開している、本船の加工設備で、アイカとジュノが話し合っていた。
「二人で持ち上げれる大きさが理想‥‥少なくとも畳んだら持ち上げれるくらい?」
「そうですね。小さい方が移動用の装置も小さくて済みます。ジュノなら漕いだほうがはやい?」
「あは!つかれちゃうよお!」
びーー!びーー!
ヴェスタも合流しようと歩いていくと、警報が鳴り響いた。
「アイカ状況報告!」
言いながらヴェスタは全身に防護スーツを展開し、船の上にジャンプいして上がった。
ジュノも防護膜を展開し腰からナイフを抜き取り、作業小屋の上に飛び乗った。
アイカは本船に戻りながら報告してくる。
「西側のロープがきれました!内容は確認中」
アイカの声が届くと、ジュノが走り出す。
「確認してくる。ヴェスタはバックアップよろしく」
冷静な声でぴょんと大ジャンプしたジュノは石材の第二防壁に着地。
ヴェスタは全周警戒に切り替えて、腰からハンドガンを抜き出した。
「だめだぁ本船のセンサーじゃ捉えられないよやっぱり」
アイカの報告にジュノが指示を出す。
「おっけえ、アイカはそのまま待機で、ヴェスタは船首方向に移動。まだおりないでね」
言い終わる頃には外輪山に登っているジュノ。
「あぁ‥‥こないだのと同じ狼のでかいのだ。ヴェスタぁフォロー」
ジュノは指示しつつ真っ直ぐ外輪山を走り、侵入した獣を眼下に捉えた。
「ヴェスタうっていいよ!」
「了解!」
ぱぱぱん!
火薬は使わない銃だが、空気が弾丸で圧縮されて射撃音が鳴る。
「GYAHNN!」
三匹並んで走る牛程の大きさの灰色狼が一匹倒れる。
ぱぱぱん!
「GYAHUNN!」
二匹目を仕留めるヴェスタ。
ドン!
三匹目に上空から降ってきたジュノがナイフを突き立て引き倒した。
悲鳴も上げさせず脳天を貫通したナイフを引き抜くジュノ。
目がキリリとしていつもより、精悍だった。
(ジュノすごい‥‥かっこいいよぉ)
ぽーっとみとれるヴェスタだった。
「ヴェスタいいね!2連射で2匹はすごいよ!」
そのジュノに褒められて、てれてれのヴェスタがまた頬をそめる。
「うん‥‥運もよかったかな」
謙遜するヴェスタ。
丁度遮蔽物もなく、打ち下ろしも狙いやすかった。
この小型レールガンは最大三連射で撃てるので、ジュノから三連射で撃つよう言われていた。
まだ2回しか戦闘していないが、これで21発撃ったことになる。
反動の制御も大分上達したヴェスタ。
今は鉄も手に入ったので、予備のマガジンにも30発装填してあった。
ジュノは狼の毛皮でナイフを拭いてから、ハンカチで拭き上げ腰にもどした。
「海を渡る前に武器も更新したいね」
船体から飛び降りてきたヴェスタとハイタッチ。
パチン
「ジュノかっこよかったよ」
「えへへ、ありがとう!」
頬を染めるヴェスタに、ジュノもてれてしまうのだった。




