【第99話:情報を提供してもらいました】
ごうごうとマストが燃えていた。
アイカの式神01でアイ01が魔法を行使したのだ。
魔力供給は接続を通してアイカから引き出すが、魔法自体はアイ01が使う。
『Magic.FireArrow.Initialize()・・・Launch』
アイ01の流暢な詠唱の後に炎の矢があやまたずマストに命中。
闇夜に大きな炎が上がる。
人気もなかったので、甲板から2mほどの高さで火がついたマストはメラメラと燃えた。
上にいくらでも可燃物が有るので、もう消火は無理だとアイ01は判断した。
すっと船首方向に動き船外の空中にとどまった。
アイ02は同じ様に潜伏しながら後部デッキにいた。
この下が船長室なので、船長かそれに準ずる相手を狙うために隠れていた。
(あれでいいのでわぁ?)
式神02の下でわーわーと指示を出す人間が居る。
(命令しているから、偉い人だきっと)
画像を付けてアイカに指示を受ける。
(ママあいつでいい?)
(うん、なんか小柄だし良さげね、やりなさい!)
(はぁい)
『Magic.LightningBolt.Initialize()Launch』
手加減した電撃の矢が飛ぶ。
ぱちん
「うげ」
どさ
小柄な士官らしき者が闇に倒れた。
ちょうど人気が切れた瞬間を狙ったので、まだ騒ぎにはならない。
すいっと舷側を越えてアイカが侵入する。
ごそごそと袋詰めしていると、だだっと大柄な男が上がってきた。
「航海長!ダメですマストを切りますよ!ん?!なんだ!てめえ!」
ぱちん
「うぐ」
どさ
式神02から再度電撃が放たれて、大男も倒れ伏した。
ぴょんと海に飛び込むアイカ。
じゃぼーん
と落ちたのは袋詰めした人間で、アイカは濡れないようにレビテーションで止まった。
「うんアリバイも完璧です」
ぼひゅっとパルスジェットをひとふかしして、沖に向かうアイカ。
袋詰め人間からぼたたたと雫が落ちた。
ひゅんと式神が2つ飛んできて、両肩に近づくとかちゃんと磁力が引き寄せ、着艦終了して接続。
「おかえり」
『ただいまあ』
ある程度離れたところで、アイカはジェットを本格的に使用して速度をあげた。
船から十分離れてから進路を変えてVTOL機に戻る予定だ。
船が見えなくなったので、アイカは袋を肩に担ぎ上げて、ホバー移動に切り替える。
ブーツの補助もあり、地上3m程を高速で滑り出す。
『アイカ作戦成功』
『ジュノもばっちりだよ!』
『よかった‥‥二人とも追手はいない?』
ヴェスタは外に出ながら確認する。
『へいきー』
『問題有りません!』
『うん、気をつけてね、待ってる』
そうしてヴェスタはVTOL機の横にある荷室ドアを開けた。
ここに一旦捕虜を積み込んで、人力では脱出不可能な山中で尋問しようと計画していた。
街の西側に砂漠と区切るように山地がある。
南北の山脈に比べると標高は低いが、人の手は全く入っていないようだ。
岩山の間にある窪地に下りたVTOL機から三人は下りた。
「どっちからいこうか?」
「捕まってた方からいこう。私に任せて」
そうして女性を起こしたヴェスタは、目隠しだけしてエンジニア席に座らせ理由をまず先に話した。
「ごめんなさい作戦行動中なので、身分も名前も教えられませんし、顔も見られるわけにはいかないの。ゆるしてね」
ヴェスタの声は落ち着いて静かだったので、おろおろしつつも女性は騒がなかった。
兵士の方は荷室に突っ込んであった。
「騒がないでくれてありがとう、できるなら全員救出したいと思うのだけど、チームの規模から言うと無理なんです。情報が欲しくて貴女を連れ出しました」
「ほ‥‥本国の方ですか?助けて!お父さんがつれていかれて‥‥クスン‥‥お母さんともはぐれてしまったの‥‥」
よしよしと肩を叩いて上げるヴェスタ。
「うん、大変だったわね。今はあなたの想像した通りの存在ですとだけ告げますね、誰に聞かれても答えてはいけませんよ?」
「はい‥‥軍の方なのですね‥‥解ります。父も軍人だったので、同じ様によく言われました」
離れて見ていたジュノがガッツポーズ。
これは期待できると顔に書いてある。
アイカはやれやれといった顔。
「それでは最初にお名前を教えてください。軍から出ることはない情報となりますので、ご安心を」
ヴェスタはすっかり出来る女性軍人風の受け答えになる。
「ジェスタ=アーレンダールと言います。父はバルグス=アーレンダール大佐です‥‥ごめんなさい所属も聞いたことが有るのですが、忘れてしまいました‥‥」
そうして順調に情報を聞き出して、最後に希望を訊ねる。
「ジェスタさんをご希望の地点で解放します。あの倉庫ではないですよね?」
「はい‥‥もしかしたら母はあそこに居るのかも知れませんが‥‥戻ればまた捉えられるでしょう」
かわいそうだなとヴェスタは思うが、探してあげる余力もない。
「ご希望の街にお送りできます、この大陸内に限りますが」
「‥‥首街区のカルサリクに親戚が居るので‥可能でしたらそこに行きたいのです‥‥遠いですか?」
ヴェスタはアイカに目配せ。
立体MAPに予想がでる。
もっとも人口の多そうな北の街にピンがたった。
「アズラミールの北の街ですね‥‥可能です。少しお時間をいただきますが」
「本当?!ありがとう‥‥父に会えたら必ず伝えるわ‥‥あ、でもお名前は伺えないのですね」
眉を下げる女性に申し訳ないなと思いつつ告げるヴェスタ。
「はい‥‥お気持ちだけありがとう。ではここからの移動はま軍機となるので、寝ていただきますね」
ぱちん
話の流れで近づいていたジュノが寝かせる。
そっとささえてエンジニア席を倒して寝かせてベルトで止める。
「ふふ、お見事でした!ヴェスタ色々聞けましたね」
「そうね」
ジェスタがちょっと心配なのか、ジュノの動きを見ていたヴェスタが答える。
「特に敵国の名前と、自国の名前が助かりますね。次を尋問しやすい」
アイカはやる気のある顔になった。
「ぜひ次のはわたしにお任せください!たっぷり聞き出しますよ!」
「ふふ、じゃあお願いしようかな?痛くしたらダメよぉ?」
ヴェスタの冗談に真面目に答えるアイカ。
「はい!ちゃんと人道的に尋問します!」
やる気にみなぎるアイカだった。
この大陸を植民支配しているのは、北のアヤンタ王国。
攻め込んだのは、西のヴァルサール帝国と解った。




