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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第10章
115/510

【第96話:試験飛行で偵察します】

まずはこの星の状態を確認。

世界を知らなければ、正しい評価は出来ないと考えた。

「これが事前調査に現在までの現地調査を重ねたものです。表示範囲外は全て海洋と報告でした」

そこには右下にだけ鮮明な部分があり、大部分は半透明のマスクがかかっている。

右下は今まで移動した島と大陸である。

「大きな大陸が一つ、小さいのが一つ。あとは島ってことだね」

ジュノが簡潔に表現する。

「そうね‥‥この市街地を示すピンクがおおよその人口分布とも読み取れるわね」

ヴェスタの意見にアイカが答える。

「人工物と判定したものをピンクで描いているようですので、ヴェスタの解釈で間違いないと思います。今までに見てきた市街地とも一致します」

ジュノは先日見てきた街をつつん、と指差す。

「ここから‥‥」

すいっと北に指先を動かし線を引いていく。

「ここまで、どれくらいの距離だろう」

線の終点をダブルつんつんでしめすと、概算距離が表示される。

この線は立体MAPに引くので、高さも表現できるが、ジュノの引いた線は地殻の下にあるので地表に張り付いた。

そこには陸を避けた海上に概ね最短ルートをひいた線が出来上がる。

「約2100kmってところか‥‥2週間くらいかな?帆船だと」

ジュノの意図はそのあたりにあった。

「そうですね、もうちょっと短いかと‥‥海流や風向きで随分変わると思いますが」

アイカの答えにヴェスタが更に続ける。

「じゃあこっちの街からだと一月以上はかかる計算ね」

ちょんと左上の大きな街をさしたヴェスタ。

「‥‥このどちらかから来ている‥‥そうなるよね?」

「それが自然な発想ですよね」

ジュノにアイカが答えて、ひとまず距離的なイメージは共有した。

じっとジュノの書いた線を見てヴェスタが意見。

「この距離だとVTOLでは無理だわ‥‥アークを動かさないと見に行けない」

航続距離の問題で届かないと判定した。

「そうですね‥‥増槽をぎりぎり積んだら往復可能ですが」

アイカの意見にヴェスタは顔を明るくする。

「それがいいわ‥‥どれくらいの技術レベルで、どんな国家形態か一度みたいよね?」

ジュノも思案顔。

「近くにもいるんだから、とっ捕まえて聞いたほうが早くない?」

アイカもヴェスタもちょっと過激なジュノの意見に驚いて目を見開く。

「‥‥それが現実的か」

ヴェスタも同意する。

「いったん、先日の街に強行偵察をかけましょう。アイカの式神が役立ちますよ!」

にっこりで意見をだすアイカ。

「そうね‥‥皆の装備の実地試験も兼ねて、ひと当りしてみましょう」

ヴェスタがまとめて方針が決まった。

「じゃあごはんにしましょうね!今日はみんなの好きなパスタですよ」

「わーい」

「やったぁ」

アイカの提案に、ヴェスタもジュノも喜んで見せる。

ぎこちないなりにも笑顔の空気に戻せたのだった。


午後早めの時間に準備が整い、先日燃えていた街にVTOLの試験飛行も兼ねた偵察に出発する。

「いったん隠密に調べられるところまでは、調べよう。最後にアイカに仕掛けてもらうでいい?」

ざっくりと作戦としても打ち合わせる。

「良いんじゃないかな?」

「おまかせを!」

ジュノも肯定し、アイカもやる気がある。

「じゃあ、しゅぱつしまぁす」

にこりとヴェスタが笑い、ジュノとアイカも笑う。

ヴェスタのぎこちなさが感染したかのような二人の笑顔だった。

ヴィィィ!

パルスジェットが点火して、じわりと推力を上げる。

ブレーキをリリースするとくんっとしっかり加速感がある。

ヴェスタがスロットルを開けると、ぐいっとシートに押し付けられる三人。

「おぉ‥‥」

ジュノがその加速に感嘆する。

わずか数秒でふわっと離陸の感触。

上昇に合わせて下にも押し付けられる3人は、見る間に高度をあげていく。

「すごいな‥‥力強い」

ジュノは自分のバックパックの飛翔と比べたのか驚いている。

「燃料消費安定、ジェネレータ温度、振動周期正常です」

水平飛行に入ったところでアイカの報告。

ヴェスタも拡張画面を操作してうなずく。

「いいわ、完璧よ。ちょっと試験機動いくわよ。ベルト大丈夫?」

「おっけー」

「いけます!どうぞ」

ジュノとアイカに確認して、ヴェスタが機体に負荷をかけに行く。

先ずは左に90度バンクを3回して、真横背面真横として水平に戻す。

「くはぁ」

「ふふ、すごいGの変化ですよね」

ジュノが息をはいて、アイカがクスリとわらった。

「大丈夫?もうちょっと動くよ?」

「へいきへいき、楽しんでるよ!」

「楽しくてするのではないです!」

真面目なアイカの指摘に、あははっとジュノが笑う。

ヴェスタも無意識に微笑みが浮かび、ぺろりと舌が唇をなめた。

ゆったり左ロールから上昇して宙返り後に右ロール。

一通りの方向に一定の負荷をかけて水平に戻るヴェスタ。

ほぼ戦闘機の機動だ。

ちょっと頬が染まり興奮している。

(くく、ヴェスタが楽しそう‥‥やっぱり好きなんじゃない飛行機‥‥)

ジュノもにっこりしてヴェスタを見た。

「いいですね、ほとんどねじれもズレもないです。Gも既定値にぴたりです。さすがですね!ヴェスタ」

センサーの値を読んだアイカから報告。

「良い応答だわ、これに偏向バーニアが合わさると、一気に動けそう」

「あぅん‥‥今日はまだだめですヴェスタ。UMS(機動G制御システム)が未調整なので、今くらいまでの動きでお願いしますね」

機体はヴェスタの思うように動いても、中身の人間がもたなくなる。

一定のGを越えると、重力制御をコックピットにかけるシステムがUMS。

アンチマニューバとかUMとも呼ばれている便利機能だ。

「はぁい‥‥あ、見えてきた。そこいらに下ろすね」

高度4000程度で機動試験を終えたヴェスタは、適度な空き地を見つけ速度を落とす。

コックピット横のカナード翼についた可動式バーニアが下を向き機体を支える。

後部のノズルも下を向いていき、ホバリングに移行する。

「ランディングギアダウン」

「ギアダウンオッケーです」

ヴェスタの操作をアイカが確認していく。

ヒィィィィと推力を絞って降下していくと、どすんと着陸した。

一気にファンの音が下がっていき、パルスジェットが止まる。

「結構大きい音出るね」

コパイ席から出ながらジュノが言う。

「そうねぇ、離着陸時はしょうがないのよ」

ヴェスタの答えを聞きながら、ジュノがカーゴベイに向かい武装を開始する。

アイカも主機のアイドリングを確認して後を追う。

「ではアイカも行ってきます!」

『きます!』

アイカにアイ達も追従して敬礼。

ヴェスタも返礼しながらニッコリしてしまう。

アイ02がばいばいと手もふるので、ヴェスタも笑顔で手を振り返す。

ここからはヴェスタは待機してバックアップ、二人で隠密の偵察をかける予定だ。

着陸地点は街まで20km程度手前で、標高も1000m前後の地点だった。









挿絵(By みてみん)

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