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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第9章
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【第91話:帰り道で見つけてしまった】

無事撤収となり、砂漠を戻る3人は少しぼんやりしていた。

生き延びた安心と、合流し無事帰路についたことが心に隙を作っていた。

アイカですら、回復した身体を弛緩させてしまう。

念の為と高度も十分に取ったので、多少の気の緩みは影響が出にくい状況でもあった。

この機体には実は調査用以外のセンサーを積んでいない。

敵と戦うことを想定していないので、目的地だけ見つけられたらいいという最低限の作りだ。

その分、機動力に極フリしてあり、同ティアで作るならどんな機体よりも高性能だ。

ふっと何気なく周囲を眺め下ろしたヴェスタ。

ジュノはコパイ席でうたた寝していて、すやすやだ。

アイカも後席で、アイ達二人と幸せそうに座っている。

パイロットとしても後1時間ほど仕事がないヴェスタもふんわりとして景色を見るつもりでながめたのだ。

右も前方も変わり映えしない砂漠で、流石に見慣れてしまった。

左の窓には遠く水平線もかすかに光って見えた。

お昼前の時間なので、きらきらと上る主星を反射した海が美しかった。

風向きの関係で、来たときよりも東寄りの航路を取っているので、海はなおさら近かった。

(最近は砂と山ばかりだったわ‥‥前は海ばかりと思っていたのに‥‥)

クスっと自分の考えがおかしいなと思った時、ヴェスタは違和感を感じる。

(あれ‥‥なんだろ‥‥)

南の山脈にある拠点に北東からアプローチするヴェスタは、東の低い山地の向こうに海を見ていた。

その海の輝きが何度も遮られまたたくのだ。

気になって一台しかない外部カメラを向け速度を落とした。

空中に浮かせて表示したカメラの映像を拡大していくヴェスタ。

作業にきづいたアイカも立ち上がって後ろに来た。

「どうしたの?ヴェスタ‥‥着陸はまだ先でしょ?」

アイカの両肩には一人ずつアイ達も乗って覗き込んだ。

「うん‥‥何だろ‥‥竜巻?‥‥煙かな?‥‥海の光が何度か遮られたの」

アイカも東に目を向けると、きらきらと美しい海が見えた。

「これだ‥‥な!燃えてる??」

それは荒いデジタル画像に軽い補正だけをいれた状態。

つつつんとヴェスタが操作して、さらに補正され鮮明な画像に変わる。

リアルタイムに補正された動画が流れる。

「火事?‥‥いや爆発した‥‥攻撃されている?」

ヴェスタの推論にひやりとするアイカ。

気が抜けていたと反省する。

「ヴェスタ‥‥偵察を進言する」

アイカがジュノを起こす。

「ジュノ、ジュノ‥‥おきて。なんだか変なの」

ぴょんとジュノにとびのったアイ04もぺちぺちとジュノを起こす。

「おきてえジュノぉ」

「うぅん‥‥なんだおぉ」

目をこしこしするジュノも起きた。

ジュノは起きると、わりつすぐパチっと目覚める。

「どしたの?」

ヴェスタの出している画像を見たジュノは瞬時に覚醒する。

わずかな情報からジュノは判断した。

「‥‥砲撃だね‥‥遠方からかな」

拡大されたちいさな建物が吹き飛び火をあげた。

「偵察してみようと思うの‥‥いいかな?」

戦闘指揮の領域かもと相談するヴェスタ。

「そうだね‥‥高度は‥10000か‥‥もうちょいあげて北から侵入しよう」

ジュノは最悪のケースをふまえ、逃走経路を想定して進言した。

「りょうかい」

ヴェスタが機を操作して左旋回。

高度も上げつつ、海岸の町を目指した。




眼下に広く見える町の各所が燃えていた。

特に港を中心に火の手が上がっている。

海上に複数の艦影が見えた。

「海上からせめて、占領する気だね」

ジュノの説明にふるふるとヴェスタが拡大映像を見据える。

細かな状況は解らないが、一人二人ではない死者が出ていると見取れた。

それ以上は高度を下ろさなければ解らないと判断し偵察を終わりとした。

機体を傾けたヴェスタは拠点を目指す。

「どうして?誰が‥‥ううんごめん‥‥私達はこの星のことをちっとも知らないのだわ‥‥」

ヴェスタは愕然とする。

一月半もこの星にいて、何一つ調べてこなかったのだ。

どんな国があり、どれくらいの人がいるのかすら知らない。

ジュノが慰めるようにヴェスタの肩に手をおいた。

「仕方ないよ‥‥ここまでだって必死に生きてきたんだよ?わたし達」

震え続けるヴェスタには、ジュノの言葉は慰めにならなかった。

ずっと黙っていたアイカも口を挟む。

「やはり、アイカの式を作りましょう‥‥この島だけでももっと調べて情報を得て‥‥それから判断をするので良いと思います」

何をどのように判断すれば良いのか。

ヴェスタにはマニュアルを越えた先にある現在に何の指標もない。

「戻ってから少し相談しましょう‥‥」

先に伸ばす以外にヴェスタには言えることがなかった。

「アイカも少し調べてみますね‥‥」

ジュノはコパイ席に戻りながら提案。

「そうだね。いったんお風呂でも入って落ち着こう」

そういってにこりと笑った。




一緒に入ろうとジュノが言うので、ぼーっと従い入浴した。

この拠点でもお風呂は贅沢に大きくしたので、洗い場も湯船も3人一緒に入れるようにと作られている。

広々とした湯船に二人でつかり、二人でぼーっとした。

ヴェスタは考えなければいけない事が沢山あるのに、一つも答えを出せずにぼーっとする。

現状は何を考えたところで、話しを進められない。

「よし‥‥決めたわ」

ヴェスタがジュノを見ながら宣言する。

「考えるの一旦やめる。ジュノだっこして」

そういって膝立ちで手を伸ばした。

真剣な顔で両手を広げるヴェスタは、ふるふると震えている。

ざばっとジュノは抱きしめてささやく。

「うん‥‥それがいいよ‥‥ヴェスタには休養が必要だよ」

ふわりと抱いたジュノはさらさらと背中を撫でる。

髪もすっかり洗ったので、ヴェスタの濡れた髪が背にも張り付いていた。

ジュノはヴェスタの震えが止まるのを感じた。

だんだんと力が抜けてくったりとジュノに寄りかかった。

そっと姿勢を変えて二人でまた湯につかる。

「今は休もうね‥‥それが今ヴェスタのするべきことだよ」

うなずいてヴェスタはジュノに身体をあずけた。


お風呂から上がると、脱衣所で丁寧にヴェスタの髪を乾かす。

タオルで水気をすいとり、ドライヤーを当て一度休ませる。

ヴェスタは髪の量が多いので、一度に乾かそうとすると痛めてしまうのだ。

またタオルでくるみ直して交代する。

ジュノの髪は細いので、比較的に量が少なく見える。

「ジュノの髪はとても綺麗だな」

「うん‥‥ありがと」

ヴェスタを乾かしながらタオルに吸わせていたので、かなり乾いてきていてドライヤーを当てると速やかに乾いていく。

さらさらと櫛を通しながら乾かすヴェスタがうっとり眺める。

室内では銀色に見えるその髪は、日に当たるとすけて白く輝く。

天井に埋め込んだ間接照明の白い光にすかして見て、恍惚とするヴェスタ。

さらさらと流れる細い銀細工に見惚れるのだ。

ドライヤーは止めて、さらりと櫛で梳かしていく。

ストレートな銀色にさらさらと触れて感触を楽しむヴェスタ。

ふわりと最後に抱きしめる。

「おしまぁい」

ふんわりと笑ったヴェスタを見てジュノもニッコリ笑う。

交代して座らせると、髪の具合をみながら少し櫛を入れてみる。

まだ湿っていて通らないのでドライヤーを当てていく。

暖かく弱い風を丁寧に当てて、はしから乾かす。

目を閉じたヴェスタはまた何かを考え出して、表情を固くする。

困ったなとジュノは思う。

何をしてあげられるのだろうとも思った。


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