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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第9章
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【閑話:見下ろしていた者たち】

青い星が真空の漆黒に浮かんでいる。

レムリア星系と呼ばれる主星レムリアの周りを回る惑星の一つ。

アルドゥナと名付けられた第三惑星の衛星軌道上。

この惑星には衛星が一つ有る。

巨大な衛星は、大きな潮汐を母星に与えた。

満ち引きは大きく、中緯度より上は寒冷も激しかった。

その衛星軌道で衛星とちょうど反対になる位置に一隻の船が浮かんでいる。

見るものが見れば、それはスパイラルアークにそっくりの姿だと気付くだろう。

銀色の船体は今は停止形態で閉じて中を見せることはなく、雫のような平らな形を見せている。

その操縦室に2つの人影が有る。

一つは黒髪をおかっぱにした姿。

アイカに生き写しの姿。

AIKA-04を持ち帰った少女だ。

アイカよりわずかに大人びた姿は、年齢的にはジュノやヴェスタの歳だろう。

そして向かい合うように見つめる少女がもう一人。

それもまたアイカに瓜二つの姿。

そこには双子のように同じ顔、同じ髪型の二人が黒い防護スーツ姿で座っていた。

「AIKA-04は残念でした」

冷たくも聞こえる落ち着いた声は、これもまたアイカと同じ響き。

少しだけ大人びた低い声で、眉を下げる。

「AIKA-01よりも周りの二人が戦闘力高い」

向かい合ったもう一人も全く同じ声で同じ口調。

すっと目を伏せる最初のアイカが言う。

「AIKA-03も気を付けて‥‥もう二人しかいないのだから」

「ええ‥‥AIKA-02に出番はないように心がけるわ」

二人の見下ろすアルドゥナが回り、朝を迎えようとしている。

きらきらと水平線が輝き主星が登ってくる。

その最初の光を受け銀色に輝く第二のスパイラルアークはゆっくりと軌道を回る。

「そろそろAIKA-01も気付く頃かも知れない‥‥次のフェーズを進めましょうAIKA-03‥‥本当に気をつけて‥‥手駒が減りすぎたと、あの方におこられてしまうわ」

見つめ返すAIKA-03も思う。

すでに2体もAIKAシリーズを失った。

銀河連邦に掌握されていない貴重な戦力なのだった。

「AIKA-04とAIKA-05は残念だったわ‥‥私もこの身体も労って動くこととします」

伏せていた瞳をあげるAIKA-02。

「では第四フェーズを進めましょう」


格納庫に降りるAIKA-03。

眼の前にはスリムな航空機のような姿の機体がある。

エアロボディをそなえた、一人乗り小型の軌道往還シャトルだ。

アークと同じ銀色のボディに亀裂が入りコックピットをあらわにする。

シートではなく、横になる姿勢で收まる作り。

機体を小型にする工夫であろう。

乗り込むAIKA-03に、表情はない。

このシャトルも母船も、アルドゥナの衛星から採掘した鉱石と、スパイラルアークからもちだしたナノマシンと資材で作った。

もともとそのつもりで準備されてきたのだった。

スパイラルアークを細工したのではなく、最初からそのように準備されていた。

指定したものだけを残してあの星に落とすために。

そしてエージェントとしてAIKAシリーズを4体も配置した。

国家プロジェクトすら意のままに改変できる存在が、隠し持ったほぼ全てを注ぎ込んでいた。

「これは‥‥最後のチャンスなのだわ‥‥」

特殊な経緯のAIKA-01と違い、同時に育成されたAIKAシリーズはここに来た4体だけ。

AIKA-05は油断が有っただろう。

初めて自分たちの価値をしり、驕り高ぶってもいたと反省点が共有されていた。

AIKA-04には侮りがあった。

初めて対したAIKA-01の無能さと無能力に、すっかり侮り油断した。

同じことは無いようにと残った二人が反省点を共有した。

持ち帰ったAIKA-04は貴重な資源として有効に利用しようとナノポッドに還した。

AIKA-03自らの手で。

コクピットに仰向けに寝ておさまったAIKA-03は目を閉じる。

機体にリンクして、以降はそちらの感覚器で動作する。

プシューとコックピットが閉まると、もうAIKA-03を見ることは出来ない。

このシャトルには確認窓などないのだ。

AI用に設計されているから。

(現地協力者に働いてもらいましょう‥‥幸い非常に優秀な個体を抑えてある)

AIKA-03の脳裏には琥珀の肌の少女が浮かんだ。

『AIKA-03発進準備完了』

通信でAIKA-02に指示を仰ぐ。

この船のキャプテンもプロジェクトのリーダーもAIKA-02だ。

『いってらっしゃい‥‥気をつけてね』

重ねて心配するのはこのAIKA-03の身体と、シャトルのことだろう。

そう冷静にAIKA-03は思った。

『発進します』

ハッチが開き、電磁誘導で射出されるシャトルは、ほとんど軌道修正なく降下軌道に乗った。

このまま惑星を1周して海洋側に降りる。

誰にも見られることのない侵入コースを選んであった。

しずしずと見えるがかなりの速度で大気に触れだすシャトルは、赤々と尾を引いて降下していく。

大半が海洋で構成されたこの星の貴重な大陸を目指して。






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