【第85話:出張サービスですよ】
「アイちゃん達ごめんね‥‥お留守番よろしくね」
ぎゅむっとアイ01とアイ02を抱きしめるヴェスタ。
「お土産見つけてくるからね!」
ジュノも労りをみせる。
「へいきだよ!マクラ達も一緒だし!」
「うん!羊さんもいます!」
アイ達は明るく答えた。
採掘・調査旅行に行くことと成ったのだが、家畜も居るので完全に無人はまずいとなり、アイ01とアイ02がお留守番と成った。
これはアイ達で話し合った人選で、お留守番頻度で選ぶとこうなるそうだ。
ダイニングのテーブルセットの上に設置された、アイ達のテーブルセットで熱い会議がぴーちちちぴーと繰り返されていた。
5分程会議が続いたので、とても長い話し合いの果ての人選なのだろうとヴェスタは涙した。
AI同士の会話は30倍程の速度で交わされるそうで、ピッチもあがり小鳥の会議に見えるのだった。
そうして後ろ髪引かれつつも離陸した3人と2人は、一旦高度をとる。
10000m程度で水平飛行に移り、眼下の砂漠を眺め下ろした。
「すごい‥‥コントラストは多少あるけど‥‥砂色一色だね」
ジュノの感想にヴェスタも頷いた。
「地平線は砂漠でも青く見えるのね‥‥‥‥不思議だ」
まだ朝早いので空気に熱はなく、澄んだイメージを持つからか地平線の青さは涼しげにも見えた。
近い景色に目を向ければ、細部のディテールも見取ることができて、風紋やうねりが果てしなく繰り返される模様を見れた。
まだ低い主星の光が青い影で砂丘を浮かばせる。
「綺麗です‥‥」
アイカも目を輝かせて、景色に見とれている。
言葉の少なさにアイカの感動を感じ取って、ちらと見交わしたジュノとヴェスタがにこりと笑った。
「‥‥あぁそうか、あの地平線のうねうねが目的地の山脈なんだ」
ジュノが気付いて前方の窓を指す。
「そうだね‥この見えてる地平線が全部そうだよ」
「うはぁでっかいな」
「掘りがいがありそうです!」
アイカのスケールへの感動には実利が伴うようだ。
今回の第一目的はアルミ補充のためにボーキサイト鉱脈の採掘である。
第二に不足しているチタンを見つけたいとも考えていた。
事前に有力とされている近辺まできて、周囲偵察。
アイカの指示地点は1400km程の砂漠を越えた先にあった。
「すっごいでこぼこだよ?!降りれるの?」
ジュノが眼下の岩でできた山々の鋭さにあせる。
「もともと次の拠点にと選定してある土地です!」
アイカの説明を聞いて、それでも不安そうなジュノ。
「見えたわ‥‥あの谷に入るのね?」
「そうです!北西からアプローチしてください。奥までわりと広いのです」
ヴェスタにも答えるアイカ。
「一回フライバイするね」
ヴェスタの宣言に二人もうなずく。
右に砂漠を見てなだらかな山々が連なり、左は鋭い峰を連ねた大山脈だ。
山脈の山頂部には万年雪なのか白い峰が続いている。
「南側より高いね!山」
少し高度が落ち山頂が見えなくなり、ジュノは驚いたようだ。
「最高峰は8000mを越えるようですね、ここいらの山頂でも5000m以上はありそうです」
フィィィンとモーターの音も高らかに、旋回上昇するヴェスタ。
右手の窓から着陸地点が見える。
「川があるんだね‥‥」
ヴェスタは目ざとく地形を見切る。
「どうです?降りられそうですか?」
アイカもちょっと心配になってきて聞いた。
「余裕だよ。楽に降りられそう。いい土地だね」
平坦な土地も多く、色々と拠点にするのにも都合の良い谷だった。
「今日は欲張らずこのあたりに降りよう。ここなら整備すれば滑走路にもできそう」
そう言って再度旋回しアプローチに入るヴェスタは、ふわりと風を捕まえて短距離で着陸する。
ばしゃあと水柱が上がり、水面に着水。
殆ど滑走せず停止する。
「とうちゃーく」
『はーい』
ヴェスタの宣言に皆が答えてふんわりと笑う。
そんな見事な着陸だった。
「意外と大きい川なんだね?」
「下流は少し湿地帯みたいになっています。ちょうど山と山に囲まれたオアシスみたいな土地ですね」
アイカもにっこりと答えた。
調査マップだけでは確信は無かったが、現地は思っていたよりいい土地で嬉しかったのだ。
「わりと植生も豊かなんだね?!ぽつぽつ木も生えてるね」
がらりと横扉を開けて、飛び出したジュノが周囲警戒しながら言う。
フル装備のジュノは中々強そうで頼もしいなと、アイカは思う。
自分が装備を更新していないので、ちょっと火力に不安があるのだった。
索敵に出てぴょんぴょん飛び回るジュノ。
まだバーニアは使わず、スーツの補助だけで動いている。
「ジュノ、装備はどうですか?重くないですか?」
設計者としても気になるのかアイカからジュノに質問。
ヴェスタのティア5外装をジュノに合わせて改良したのだ。
「いや、いいよこれ。前のよりむしろ軽いと感じる」
アイカも満足そうににっこり。
「よかった。肩周りと腰が特に可動域を増やして、アーマー側のサポートを強めてあります。ぶら下げてる感が減ったでしょ?」
「そうそう、動いても追従もいいし。付いてるの忘れるよこのアーマー」
ジュノの白にオレンジのラインが入った保護スーツには、上半身から腰まで一体式の外部アーマーが付く。
これは前後から挟む様に装備して、そこに腰回りのアーマーが電磁ポイントで吊られる。
今まではガチャガチャとジュノが内側から持ち上げていたが、今はジュノの動きに追従して勝手に位置を変えるので、ジュノには装備を忘れる程度の負荷になる。
両肩のアーマーも基本的に電磁ポイントで実際には浮いているので、大きさの割にジュノには負担にならない。
アーマーも全て白で塗られて、統一感が有る。
ヘルメットは以前のと似たものを新調して、今はフェイスガードが上がっているので、ジュノの顔が見えている。
右手には黒アイカ事件で紛失した電磁ショットガンを作り直して装備。
ティア3のレールガン半分の威力の散弾を10発ずつ発射する。
左手にはまだ現役のティア3レールガンライフル。
こちらはマガジンだけ更新して50連発のロングマガジンだ。
レールガンのマガジンには炸薬が無いので、弾頭の大きさから比したらマガジンは細く短い。
どちらも口径は2.12mmのニードルバレットだ。
ライフルが有効射程800mショットガンは200mほどとなる。
他にも各部ハードポイントに武器を散りばめ、射程的な死角のない構成だ。
機動力もあがり、ジュノは万能感を感じる。
「ふふ‥‥この装備なら黒アイカもボコボコよ!」
前回ひどいめに合わされた黒アイカへの殺意が高いジュノだった。
「こんどはちゃんと操作系干渉魔法への抵抗が出来るシールド素材で組んでますから!」
アイカもにっこりで自信まんまんだ。
「あの魔法は‥‥トラウマだよ」
クスンと涙ぐむジュノ。
一瞬で電源を落とされた恐怖が残っているのだ。
「義体も残っていなかったし‥‥倒しきれていないと想定しましょう」
最後に降り立ったヴェスタが引き締めて、二人ともうなずいた。




