高遠響エンディング:図書室にて
「桜井先生、この本、探していただろう?」
放課後、図書館で本を探している結衣に、高遠が声をかけた。彼は手に持っていた一冊の本を結衣に差し出す。
「高遠先生、ありがとうございます!」
結衣は驚きと感謝で、高遠から本を受け取った。彼はいつものように淡々としているが、その瞳にはどこか穏やかな光が宿っている。
「実習ももうすぐ終わりだな」
「そうですね。いろいろとお世話になりました」
結衣はそう言って頭を下げた。高遠は静かに首を振る。
「まだ礼を言うには早いだろう。――それに礼を言わないといけないのはこちらの方だ」
「え?」
「桜井先生には、いろいろと助けてもらった。君の優しさ、寄り添う力に、俺は学ばせてもらったよ」
「そ、そんな……」
高遠は、少し恥ずかしそうにしている結衣の頬に、そっと手を触れた。彼の指先は、ひんやりとしているが、その温かさに、結衣はドキリとした。
「君は、暖かな光で相手を優しく包み込む。――その光に助けられる相手に、嫉妬したよ」
高遠の言葉に、結衣は驚いて彼を見上げた。彼の瞳には、真剣な光が宿っている。
「悪魔祓いなんていうのは、光の対極にある。それなのに、君の光に焦がれてしまった」
彼はそう言うと、言葉を続けた。
「君の優しい光を守りたい。そんな愚かな願いを抱いてしまう。……君が俺の世界を変えてしまったようだ。……願わくば、君の隣で、俺の光を守りたい」
彼の言葉は、まるで彼の口から初めて出たような、素直な感情だった。結衣は、何も言えずに、ただ彼の温かい手と、真剣な瞳を見つめていた。
二人の間に流れる時間は、ゆっくりと、しかし確実に、特別なものへと変わっていった。




