結城柊エンディング:保健室にて
「結城先生、いらっしゃいますか?」
「ああ、桜井先生、どうかしたのかな?」
「ちょっと指を切ってしまって。消毒薬をお借りできますか?」
「もちろん。というか、俺が消毒するから、そこに座ってて」
結衣は結城先生に言われるがまま椅子に座った。彼は手際よく結衣の指の傷を治療していく。彼の顔は真剣そのもので、その温かい手に、結衣は心の中で安堵のため息をついた。
「ちょっと疲れてるんじゃないか。目の下にクマがあるぞ」
「あはは、ばれちゃいました? 日々、実習とレポートに明け暮れています」
「あんまり無理しないように、ね」
「ありがとうございます」
彼はそう言うと、静かに絆創膏を貼り終えた。その手つきは、いつも生徒たちに向けるものと同じ、優しさに満ちていた。
「……君は本当によく頑張ってるよ。本当に驚くくらいだ」
「え?」
「こんな小さい手にいろんなものを抱えて。君には助けられてばかりだ」
結城先生の言葉に、結衣は何も答えることができなかった。彼が、自分のことを、これほどまでに見ていてくれたことに、彼女の心は震えた。
「結城先生……」
「……もう、君には傷ついてほしくないな。これからは、俺が守りたい」
結城先生はそう言うと、結衣の瞳をまっすぐに見つめた。彼の瞳には、以前のような複雑な感情はもうない。ただ、彼女への深い愛情と、強い決意が宿っている。
「君はたくさん人の痛みに寄り添ってきた。今度は君の痛みに俺が寄り添いたい。……一人にさせたりしない」
彼の言葉は、結衣の心臓を、深く、そして温かく、満たした。これまで一人で背負ってきたすべての重荷が、彼の言葉によって、そっと下ろされたような気がした。
結衣は、何も言わずに、ただ静かに、彼の温かい手に、自分の手を重ねた。




