第十四話:公園にて
週末、結衣は学校の近くにある大きな公園で律に出会った。
休日の公園は、家族連れやカップルで賑わっていた。二人は、少し離れた静かなベンチに座った。
「榊原くん、この間はありがとう。いろいろ付き合ってくれて」
「いえ。結衣先生の役に立ててよかったです」
律は、そう言って、静かに微笑んだ。
彼の瞳は、穏やかで、しかし、どこか、結衣を心配しているように見えた。
「最近、無理していませんか?」
彼の言葉に、結衣は少し驚いた。
「どうしてそう思うの?」
「結衣先生は、いつも、生徒や七不思議の霊の悲しみに、心から寄り添ってくれる。でも、その度に、先生の心が、少しずつ、疲れていっているように、見えるから」
律は、そう言って、結衣の瞳をまっすぐに見つめた。彼の言葉は、結衣の心を、深く揺さぶった。
「先生が心配なんだ。先生の優しさが、いつか自分自身を、傷つけてしまいそうで」
律の言葉は、彼の結衣への深い思いやりと、そして、彼女への強い愛情に満ちていた。結衣は、彼の言葉に、何も答えることができなかった。
「俺は、先生のそういうところが、大好きだよ。だから、先生が、もし辛いときは、いつでも俺に頼って欲しい」
律は、そう言って、結衣の手に、そっと自分の手を重ねた。彼の優しい温かさが、結衣の心を、深く、そして温かく、包み込んだ。
「ありがとう、榊原くん」
結衣は、そう言って、静かに微笑んだ。二人の間に、言葉は必要なかった。彼らは、互いの心の奥底にある、深い絆を、感じていた。




