第十二話:カフェにて
屋上の七不思議が解決して数日後。結衣は、休日を過ごすために街へ出た。
ウィンドウショッピングを楽しんでいると、偶然、カフェの近くで高遠の姿を見かけた。
彼はいつもの白衣ではなく、落ち着いた色のセーターを着ており、いつもと違う私服姿に、結衣は少しドキッとした。
「高遠先生、こんにちは。お買い物ですか?」
声をかけると、彼は驚いた様子で振り返りました。
「桜井先生か。まさかこんなところで会うとはな」
彼はどこか寂しげな表情を浮かべていた。
結衣は、理科室で彼が語った親友の佐伯悠真のことを思い出した。彼の心にまだ残る後悔を、結衣は感じ取った。
「もしよかったら、少しお話ししませんか?」
結衣の誘いに、高遠は少し戸惑いながらも頷いた。
二人はカフェに入り、窓際の席に座る。
「この間は、ありがとう。君のおかげで、佐伯を救うことができた。エクソシストである俺が、親友の魂を救えなかった。そんな俺を、君は救ってくれたんだ」
高遠は、絞り出すようにそう言った。
彼の言葉には、深い感謝と、そして、彼自身の後悔がにじみ出ていた。
「君は、俺が持っていないものを持っている。悲しみに寄り添う、その優しさが。だから、俺は決めたんだ。君を、危険な目に遭わせないように、俺が、君のそばにいると」
高遠は、結衣の瞳をまっすぐに見つめた。
その言葉に、結衣の胸は高鳴るのを感じた。
彼の瞳に宿る、強い決意と、深い信頼。それは、ただの教師とエクソシストの関係を超えた、特別なものに変わりつつあった。




