第65話 まだまだ現役!頼もしい助っ人たち
陽の光と軽やかな風を受けて、微かに揺れる中庭の木々。先に見える白いガゼボの周りには、黄色い花々が、夏を象徴するように咲き誇っている。
まるで色鮮やかな風景画のような庭を、目を細めて歩く人々。
「ここは昔と同じ。今の季節は、いつもあの黄色い花が咲いていたね」
一人の呟きに、誰もがありし日を思い出していた。
その回想の時間をさっと取り除いたのは、元気に呼びかけてくる侍女。
手を振りながら、駆け寄ってきたのはレネ。
「皆さん、こちらですよ。あっ、お母さん、こっちこっち」
声をかけられた女性はすぐに振り返り、背筋をのばした。
「こら、レネ。侍女は急いでいても走ってはいけません」
腰に手を当て胸を張り、幼子を叱責するような口調に、レネは慌てた足を止めた。
急いでスカートの皺を整え姿勢を正した彼女は、気まずそうに母に顔を向ける。
「あなたは、いつになったら淑女らしくなるのかしら……」
そう言って、曲がっているレネの襟を整えた。
「お母さん、恥ずかしいから……」
顔を真っ赤にしたレネに、近くにいた元使用人が声をかける。
「親ってのは、いつでも我が子が心配なのよ。子どもが大きくなってもね」
和やかなやり取りを見守ったララは、中庭の中央に向かって足を進めた。
近づく王女に気がついた人々が、さっと礼の姿勢をとる。まるで、王城で働いていた時と変わらぬ、その機敏な動きに彼らのここでの年月が推し量れた。
「おはよう、遠い所集まってくれてありがとう。皆の協力に心から感謝します。とても懐かしい顔ぶれだわ」
集まった人々の多くは、ララが幼い頃に王城にいた侍女や使用人。その見覚えのある姿に、思わず顔がほころぶ。
「ご無沙汰しております、王女さま。立派になられましたね」
そう言って微笑むのは、幼いララの身の回りの世話を担当していた侍女のマーサだった。
「マーサ、元気だった? 突然の要請に応えてくれて、ありがとう」
ララは嬉しさに思わず近づいて、シワの刻まれたその手を取った。
「私たちの可愛い王女さまの依頼ですもの。這ってでも参ります」
胸を張るマーサに、隣の元侍女が声をかける。
「それじゃ、お役に立てないでしょ」
その一言に、笑いが溢れた。
一人の元使用人が、ララに話しかける。
「また働けるなんて、なんだかワクワクしますよ」
それに続く人々。
「家事や介護で困っている人の助けになるなら、いくらでも協力します」
「家事も介護も得意分野よ。私たち世代は親や夫の介護経験者ばかりだからね」
優しい言葉の数々に、嬉しさが溢れ出す。
手を差し伸べてくれる人のありがたさが身に染みる。
「とても心強いわ。頼りにしています」
そう言って晴れやかな笑顔を向けた。
──サポート体制は整った。後は、議会ね……。
きっと、一筋縄ではいかない。
でもここを乗り切らないと、何も始まらない。
さぁ、ここからが本当の始まりよ。




