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第60話 頑張れバートン先生、そして新たな問題も⁉︎

賑わう集会所の入り口には、10代の若者達で人垣ができていた。


「思ったよりたくさん参加してくれたみたいね。

50人くらいはいるんじゃない?」


楽しそうに会話する人々を見て、微笑むララ。


「よかったね、たくさん参加してくれて。なんだか緊張するな、今日は僕が先生なんだよね。ちゃんとできるかな」

ちょっとだけ緊張を滲ませているバートンにララは言葉をかける。


「バートンなら大丈夫よ。すぐに誰とでも仲良くなれる特技があるでしょ? 親しみやすいあなたなら、街の人も気後れせずに参加できると思うわ」


「王女様にそう言ってもらえると、頑張れそうだよ」

バートンは両手を握って「よし」と気合いを入れる。


参加者を見ていたライオネルがララに尋ねた。

「なぜ今日は若者ばかりなんでしょうか」


「あぁ、それはね、同世代の方が顔見知りだろうし、互いに教え合えるかなって思ったの。ほら、基礎学校で一緒に勉強した友達もいるかもしれないでしょ」

ララは会話で盛り上がる人々を微笑ましく見守っている。


「なるほど……さすが王女様、民への配慮まで考えていらっしゃるのですね」

感心した様子でライオネルは頷いた。


「今回の簡易学校は、まだまだ手探り状態だから、少しでも皆が参加しやすい環境を作ろうってお兄様とも話して決めたの。だから曜日で参加者の年齢層が変わるのよ」


「なるほど、その年齢層に合わせた指導ができるというわけですね」

ランゼルが納得した様子で言葉を継いだ。


「そう、だから今日はバートンが一番適任なのよ。それじゃ、バートン先生いきましょうか」

ララは明るく告げると、先頭に立って歩き出した。


集会所入り口付近は楽しそうな話し声で満ちていたが、ララの姿が見えると一斉に礼がとられ、場が静まりかえる。


「おはよう、今日からここの集会所で魔力操作の簡易学校をはじめます。この国には魔法は馴染みがないけれど、必ずできるようになるから、一緒に頑張りましょうね」

そうララが話すと、期待を込めた歓声があがった。

片手を軽く上げて、次の言葉を伝える合図を送る。


「では、先生を紹介しますね。ノルフェリア魔道士のバートン先生です。さぁ、バートン先生どうぞ」

自分の前を手で示してバートンを呼んだララは、小さな声で「頑張って」と一言。


ララの応援に片目を閉じて口角を上げたバートンは、いつもの調子で話し出す。

「おはようございます。今日から魔力操作をレクチャーします、バートンです。気軽にバートン先生って呼んでね。それと、最初は難しく感じるだろうけど、絶対にできるようになるからね。困った時はいつでも聞きに来て」


人懐こい彼の雰囲気に、参加した人々から笑い声が届く。


こうして始まった簡易学校第一回目は、魔力感知とバートンの魔法実演で、楽しく終えることとなった。


「王女様、今日はありがとうございました。とっても楽しかったです」

「バートン先生の魔法ってすごいですね。また見せてください」

「次はどんな練習ですか?」


参加者達はレクチャーが終わると、興奮冷めやらぬといった表情で、次々に話しかけてきた。ララもバートンもそれに応じて談笑していると、ふと集会所を覗き込む視線があることに気がつく。


あれ? 午前の部に間に合わなかったのかしら……。


集会所を覗き込むのは、参加者と同世代の男の子。やや古ぼけた上着に、裾がほつれたようなズボンを身につけている。


気になったララは参加者の輪の中から抜けるように、入り口へと向かった。

声をかけようと口を開くと、その存在を目にした男の子はすぐに走り去っていく。


「っあ」

声にならない呼びかけのまま、言葉を飲み込んだララ。


「どうかしましたか、王女」

ランゼルはララの後を追って、近くまでくると彼女の視線の先を辿った。


「……午前の部に間に合わなかったのかと思って、声をかけようとしたの。目があったら、走って行ってしまって……」

困惑した様子のララに気がついたバートンも近づいてきた。


「どうかしたの?」

バートンの問いに、先程の出来事を伝えると、参加者の一人が言葉をかけてきた。


「あの……、話に割り込んですみません。先程の子ですよね?」


「知ってる子?」

ララの問いに、周りの皆が頷いた。


「はい、彼はハンスといって、町外れの長屋に住んでいます。たぶん僕らと同じ年くらいなんですが、基礎学校には通いませんでした」


──えっ、どういうこと?

基礎学校って義務教育みたいなものよね……。

通ってない? 通えなかったの?


一人思考に囚われたララの表情は、不安に染まった。

なんだろう、また嫌な予感がする……。


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