第56話 溢れる敬意はほどほどに⁉︎そして新たなアイデア!
「あの並列版は、こんなふうに使われているんですね」
ビス炉に花のように設置された並列版を見たアーロンが、監視台から身を乗り出して覗き込む。
「実際に見ると、作った達成感が湧くよね?」
興味津々な様子に、バートンがにこやかに応じた。
「本当にすごいシステムですよね。稼働してから、ビスも節約できていますし……」
ジュードも嬉しそうに語る。
「皆んなの協力があっての成功だわ。でも、ここからが本番、今度は9カ所ある中枢施設のビス炉に、エネルギー変換機を作らなくちゃいけないわ」
ララの話に真剣な表情で聞き入る面々。
ララはそれぞれの反応を伺いながら、話を続けた。
「まずは、どうやってこのビス炉をエネルギー変換機に変えるかよね……。一番理想的なのは、このビス炉に直接魔力を流し込んで蓄積できればいいんだけどね」
その言葉を、ライオネルは聞き逃さなかった。すぐにララの前に出ると、片膝をついて深く頭を垂れる。
「ラ、ライオネル? いきなりどうしたの? 座り込んで、具合でも悪いの?」
ララは慌ててかがみ込み、額に手を当てた。
「熱は……ないようだけど、気分が悪いの?」
「っ、手……女神の手が……!」
ライオネルは顔を真っ赤にして、そのまま尻餅をついた。
「えっ、本当に大丈夫なの?」
困ったララが周りを見回すと、バートンと目が合った。
「大丈夫、大丈夫。王女様に敬意を示したい気持ちが、ちょっと暴走しただけだから」
バートンは苦笑しながらライオネルを引き起こす。
「ほら、立とう。王女様を困らせちゃうよ」
ララは安堵の息をつきつつも言葉を添える。
「ライオネル、普通に接してくれると嬉しいわ。確かに身分が邪魔をするけど、でもこの改革においては皆んな一つのチームなの」
ライオネルは葛藤を抱えつつも、やがて頷いた。
「女神……、いや、王女ララ様。僕のあなたへの敬意は深まるばかりで、それを行動に表さずにはいられません。しかし、あなた様が望まれるのであれば、急に跪く事はやめます……。それでも溢れ出る尊敬の念は……ご容赦ください」
頭を下げて、ララの反応を待つライオネル。
「王女様、ライオネルは行動は自制するけど、口調はこのままみたいだよ」
バートンが茶目っ気たっぷりに笑う。
困り顔のララは「わかったわ」と一言。
空気を変えるように、ジュードが口を開いた。
「先程は、王女様に伝えたいことがあって前に出たんですよね?」
はっとして顔を上げたライオネルに、ララは「何か気になる事でもあった?」と声をかける。
「はい、もともとビス炉の底はエネルギーを集積する仕組みになっているので、この上に特殊鉱石で作った箱を設置すれば、そこに直接魔力を流せると思ったんです」
「確かに……その方法なら可能だろうけど、鉱石を箱状にするって難しそうだよね」
バートンは腕を組み、少し悩むように言った。
「でも、なんとか方法はありそうで安心したわ。また皆んなで作戦会議ね。そういえば、その鉱石って希少なものだったりする?」
「いいえ、ビスが採掘される鉱山で取れるものですので、そんなに珍しくはありません」
ライオネルが答えると、ジュードが補足する。
「ただ、流通はほとんど無いですね。ビスが主流ですから」
「そうなると、入手経路も確保しないとだな」
アーロンも一緒に考え始めた。
その時、少し後ろに立つランゼルの眉間に気づいたバートンが、すかさず囁く。
「ランゼルさん、その眉間……もしかして、王女様がおでこに手を当てたの、ちょっと羨ましかった?」
「うるさい」
短く放たれた声。だが、赤く染まった耳がすべてを物語っていた。




