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第55話 ララの隣は誰のもの?

「それではお兄様、行ってまいりますね」

エントランスを出たララはリーゼルに出発の挨拶をすると、同行する面々に視線を送った。


「気をつけて行っておいで。本当は僕も一緒に行って、ララの作った並列版を見たかったな。父上が一人で議会に出るのを渋ったからね……」

風で靡くララの髪を手で撫で、同行できなかった残念さを顔に浮かべた。


「お父様はお兄様を頼りにしていらっしゃるんですよ。また次の機会に一緒に出かけましょう。兄様たちも午後からは学園に行くんでしょ?」


「そうだね、今日は魔道士団と学園の生徒に魔力循環を指導する予定だよ。コツさえ掴めば、上手くいくと思うんだけどね」

リーゼルがそう話すと、ララは思い出したように軽く目を見開いた。


「あっ、私もまだ魔力循環できないんだった。並列版とか、今後の段取りとかで、すっかり忘れてたわ」


ララの言葉に、バートンとライオネルが素早く反応する。

「王女様、僕がいつでもレクチャーするよ」とバートン。

「女神……、もしお許しいただけるのなら、この僕が誠心誠意ご教授いたします」とライオネル。

そう言った二人は、すぐに向き合って牽制し合う。


ランゼルが軽くため息をつきながら、二人の襟元を掴んで引き離した。

「おい、いい加減にしろ。本当にお前たちは昔から変わらないな。立場と場所を弁えろ」


「はい」

「申し訳ありません」

バートンもライオネルも静かに俯き反省を口にするが、お互いの視線は威嚇を忘れていない。


「ノルフェリアの魔道士団も、なんだかんだと仲良しですよね」

ジュードとアーロンは、このやり取りを笑いながら見ていた。


「それでは、出発しましょうか」

ララの一声で、御者が扉を開けた。


すかさずランゼルがエスコートのためにララに手を差し出し、ララもすぐに応じる。馬車のステップに差し掛かると、ランゼルの空いた片手がララの背中にそっと添えられる。

「ありがとう」横のランゼルに微笑むララ、優しい視線で頷くランゼル。

二人にとっては日常となったやり取りだったが、リーゼルの片眉は僅かに動いた。そして、すかさずララの側まで行くと、さっとランゼルの立ち位置に割り込んだ。


いきなりの兄の行動に驚いたララは、

「お兄様、どうかしたの?」と声をかける。

「あっ、いや……、しっかり見送ろうと思ってね」

考えるより先に足が動いたリーゼルは曖昧に笑ってから言葉を返した。

「そう、わざわざありがとう。帰ったらまた皆んな集まって報告会ね」

そう言ってララは座席についた。


「では、行って参ります」と馬車に向き直るランゼルに、リーゼルは声をかけた。


「ララのこと、よろしくね。でも……、ノルフェリアの王族に護衛って頼んでもいいのかな?……ランゼルにも護衛をつけた方がいいのかな……」


悩み出したリーゼルに「問題ありません」と短く答えたランゼル。

そんな彼らのやり取りに気がついたバートンが、すかさず言葉を添えた。

「大丈夫ですよ、王太子殿下。ランゼルさんは誰よりも強いです。ノルフェリアでも護衛なしで動くことが多かったです。それに、僕もライオネルも一緒です。騎士のアーロンさんもいます。これ以上ない布陣ですよ!」

明るく言い切ったバートンに、リーゼルも安心したのか笑顔を浮かべる。


今度こそ出発と、バートンもララたちの馬車に乗り込もうとすると、不満をあらわにしたライオネルが声を発した。

「おいバートン、僕がララ様を側でお守りする。席を交代しろよ」


「えぇ、ここは僕の定位置。後からきたライオネルは後ろの馬車だよ」

そう言って再び言い合う二人。


「喧嘩する人たちは、置いて行きますよ。行きと帰りで座席を交代すればいいでしょ?ライオネルはわがまま言わない!バートンは煽らない!」

窓から顔を出してバートンとライオネルに苦言を呈すララ。

静かに項垂れる二人に、周りの皆は笑いを堪えている。


「ほら、ちょっと叱られたくらいで、クヨクヨしない!男の子でしょ。それじゃ、バートンが先にこの馬車ね、帰りはライオネルが乗ったらいいわ」

まるで幼子に言い聞かせるような口調のララに、誰かが呟いた。


「お母さんだな……」


ようやく準備が整い、ララたちを乗せた馬車は中枢施設へと出発した。

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