表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/89

第52話 王女様、ララ様、女神様?いいえ、オカン様!

謁見の間を出た魔道士団は、抑えていた興奮を一気に解き放った。


「王女様……すごかったな……!」

「あの短い時間でライオネルを改心させたぞ!」

「誰だ?『儚げな美少女』って呟いてた奴?」

「確かに美人だけど、あの方はうちの母ちゃんより迫力あるぞ!」

「国王陛下も穏やかだし、王妃様も王太子殿下も親近感あるし……アルマティアっていい国だな!」


さっきまでの静寂と神妙さが嘘のように、魔道士団の空気は一気にゆるんだ。

ただ一人、責任者のルーベンだけは表情を引き締め、ライオネルに声をかける。


「今回は不問としていただいたが、次はないぞ。ノルフェリア魔道士団として責任ある行動を心がけろ」


厳しく言い放つが、肝心のライオネルは視線が合わない。宙を見つめては、何かを呟き、恍惚とした面持ちを見せていた。


「おい……ライオネル、様子がおかしくないか?」

団員の一人がそう言うと、皆の視線が一斉に彼へ注がれた。


ルーベンも一瞬だけ顔を引き攣らせたが、気を取り直して再び声をかけようとしたその時。


「……なんて素敵な女性だ……僕に過ちを気づかせてくれた……。失敗を糧に……なんていい言葉だ……」


誰に語りかけるでもなく、ただ一人でボソボソと話しているライオネル。

いまだに定まらないその視線の先には、何か崇高なものを崇めるような、陶酔するような、そんな輝きが満ちていた。


「……あれ、本気で改心したのか?」

「いや、気持ち悪いだけだろ……」

団員たちは小声で囁き合う。


「おい、ライオネル! ルーベンさんの話、聞いてるのか?」

肩を叩かれても、彼は振り向かずに返す。

「んぁ? 何だ、僕に指図するな」


「……いつも通りだな」

「コイツをまともにできるのは、王女様だけじゃないか?」

ため息が連鎖して広がった、その時。


「道中、特に問題はなかったか?」


低くよく通る声とともに、ランゼルが魔道士団の前に立った。隣にはバートンの姿もある。


思いもよらぬ自国の第三王子の出現に、一同は固まった。だが、バートンの軽い一言で正気を取り戻す。


「あぁ、ライオネル……やらかしちゃったね。あれはさすがに不味いでしょ」


魔道士団が慌ててランゼルへ礼をとる中、ライオネルだけはバートンに言い返す。

「うるさいな。お前には関係ないだろ」

「またライオネルと一緒に仕事だと思うと、気が重いよ」


言い合う二人を、ランゼルが鋭く制した。

「そこまでにしろ。ここはアルマティアの王城だ。ライオネル、他国の王族に不敬を働くとは何事だ。……お前は国に戻るよう手配する」


その言葉に、魔道士団の面々は一斉に目を見開いた。


「……ランゼル……王子……⁉︎」

驚愕の声を漏らしたのは、ライオネル自身だった。


次の瞬間、彼は青ざめて慌てて礼をとる。

「っあ、いや、もう不敬な態度はとりません! どうか、もう一度挽回の余地を……!」


部下を庇うように、ルーベンが一歩前に出て許しを乞う。

「ランゼル王子、今回は私の管理不足。誠に申し訳ございません。……どうか、いま一度、この者に余地をいただけませんか?」


ランゼルは視線だけで続きを促す。

「この者は確かに単独行動が多い。しかし魔法に関しては確かな実力を持っています。エネルギー源転換においても必要な人材かと」


沈黙ののち、ランゼルは深いため息をついた。

「……次はない。全力でアルマティアに助力しろ」


ようやく許されたライオネルに、バートンが無邪気に追い打ちをかける。

「まぁ、戦力としては必要だからね。良かったね、ライオネル! でも、もう王女様にあんなこと言っちゃダメだよ」


「ふん! 当たり前だ! あんな素晴らしい方を困らせるなんてありえない! 僕の持てる知識と魔法で、しっかりお仕えする!」


熱弁するライオネルに、すぐ横の団員が冷ややかに吐き捨てた。

「……お前が仕えるのは、ノルフェリアだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ