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第50話 魔道士団参上!…って、誰が結婚するって?

「ねぇ、聞いた?ノルフェリアの魔道士の方達がお城にいらしてるそうよ」

「ええ、街道を何台も馬車が走っていたわ」

夕方に差し掛かる少し前の広場では、買い物に出てきた主婦たちが昼間に見た光景を話題に井戸端会議をはじてめいた。周りでは小さな子ども達が噴水の水をかけあってはしゃしでいる。

一人の男の子が母親たちの会話に加わった。

「魔法使いがきたの?かっこいいね。僕も魔法使いになりたいな」

男の子の母親は、息子に優しく微笑んで「そうね、きっと魔法も教えてもらえるよ」と相槌をうった。

「ほんと?やった!ねぇ、みんな魔法教えてもらえるんだって」

男の子は噴水の周りにいる他の子ども達に向けて、大きな声で話しかけた。

「わぁ、楽しそう」

「早く魔法使いさんに会いたいね」

子ども達は大はしゃぎで、期待を膨らませている。

「いよいよ、アルマティアも変わるのね」

そう語った主婦達の表情に憂いはなかった。


*****


謁見の間にて――

玉座には国王ヨハンと王妃セリーヌが厳かに座し、その一段下がった左右に、リーゼルとララが控えていた。

宰相バロンが声高に、魔道士団の到着を告げる。


赤い絨毯の先、重厚な扉が軋みをあげて開かれる。

規律正しい足音とともに、ノルフェリアの魔道士団が整然と列を成して進み出た。

皆一様に黒いマントと黒いブーツを身にまとい、その数は数十名にのぼる。


やがて玉座の前に到着すると、一斉に膝をついて頭を垂れた。

ただ一人、代表と思しき年長の男が進み出て、朗々と声を響かせる。

「お初にお目にかかります。ノルフェリアより参りました魔道士団責任者、ルーベンと申します。この度、我が国王より親書を預かって参りました」


ルーベンが差し出した親書を宰相バロンが恭しく受け取り、国王ヨハンのもとへ届ける。

ヨハンはゆるやかに頷き、それを受け取ると目を通した。

そして重々しい声で告げる。

「よく参られた。こたび我が国の要請に応じてくれた貴国に、心より感謝する。……顔を上げよ」


その一声を合図に、魔道士団は一斉に立ち上がり、再び整然と列を正した。


ヨハンが隣の王妃へ視線を送ると、扇で口元を隠したセリーヌが魔道士団へ声をかける。

「私も母国から協力が得られて嬉しいわ。王太子、王女と力を合わせて助けてちょうだいね」

やや砕けた物言いに、アルマティアの一同は表情を変えなかったが、ノルフェリアの魔道士たちは驚いたように微かに眉を上げた。


「王太子のリーゼルです。この度の協力、とても感謝します。ノルフェリアでお世話になった方も数名いるようなので、また会えたことを嬉しく思います」

親近感の湧く挨拶に、リーゼルと初めて対面した魔道士たちは再び驚きを示した。


「ララです。これからしばらく、色々な事で協力を仰ぎますが、よろしくお願いします」

ララは澄まし顔で、静かに挨拶をする。


儚げで愛らしい王女の姿に、魔道士たちの視線は釘付けとなり、広間は息を呑んだように静まり返った。


……その空気を切り裂いたのは、場に似つかわしくない声だった。


「ララちゃん!」


皆の視線が突き刺すようにそちらへ向く。


「僕だよ、ライオネル! ああ、これは運命だね。あの別れからこうして再び出会えたんだ。もう、これは結婚するしかないね!」


周囲の空気もお構いなしに言葉を放つのは、肩までの銀髪をさらりと流す美貌の青年――ララとリーゼルの従兄弟、ライオネルであった。


ララは困惑して隣のセリーヌへ視線を送る。

「こら、ライオネル。場をわきまえない。あなたは昔から、何かに執着すると周りが見えないのね」

謁見中であることを忘れさせるその一言に、ルーベンが慌ててライオネルを下がらせた。


「申し訳ございません。普段は魔法以外には興味を示さぬ男なのですが……」

額の汗を拭いながら、ルーベンが玉座を伺う。


――ライオネル?

あぁ、少し前にお母様が言っていた、あの従兄弟ね。

それに、結婚? 何を言ってるの、この場で。


「その申し入れ、お断りいたします。だって――お母様の生家と懇意になっても、国にとって何のメリットもありませんもの」


先ほどまで儚げに微笑んでいた王女の姿は消え、そこに立っていたのは、現実を冷徹に見据える王女ララだった。


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