第42話 さぁ、実験開始!何で試す⁉︎
応接室を出たララは、後ろを歩く二人を振り返った。
「ランゼルが剣や魔法に長けているのって、王族ならではの教育なの?」
「はい。幼少期から、さまざまなことを学びました」
「じゃあ、バートンが幼馴染なのは?」
「彼の家は代々、魔道士団の団長を輩出する公爵家です。三歳で魔法を始めてから学院に入るまで、ずっと一緒に学んできました」
あまりに長い二人の年月に、ララは軽く目を見開いた。
そして、ふと胸に疑問が過る。
「そんなに長い付き合いなのに……バートンが訪ねてきたとき、ランゼルはあんまり嬉しそうじゃなかったわよね?」
気まずそうに視線を外したランゼルの前へ、バートンがすかさず回り込む。
「そうだよね。僕、悲しかったな」
悪戯っぽく笑い、ランゼルの顔を覗き込む。
「バートン、お前は正直すぎるから……俺の身分を誤魔化せないと思ったんだ」
片手で軽く押しのけながら、ランゼルは答える。
二人のやり取りを、ララは微笑ましそうに眺めていた。
「確かに。バートンのおかげで、ランゼルが王子だって知ったわけだしね」
くすっと笑うララ。
「……うっ、それを言われると……」
肩をすくめるバートンに、ララもランゼルも思わず笑った。
恥ずかしそうに顔を俯けていたバートンは、流れを変えようとララへ話を振った。
「王女様、シルクスパイダーの布に魔法付与した後は、どうするの?」
突然の話題の転換に軽く驚きつつも、
「今度は……本当にビスの消費エネルギーが小さくなったかを検証しないとね」と答える。
ララの表情はいつしか思案顔に変わっていた。
「どんな方法を考えているの?」
重ねる問いに、ララは腕を組み、少し考え込んで答えた。
「バートンがシルクスパイダーの布に魔道を通してくれたでしょう?
それでそこに置いたビスのエネルギーは、同じ量で、同じ方向に流れるはずなの」
「そうだね。魔道を通すと道筋が決まって、一定方向に広がるから」
バートンは頷いた。
「だから、ビスを二つ設置して、稼働時間が二倍以上になれば成功だと思うの。何を使って試そうかしら……」
ララはそう言って、再び考え込む。
しばし沈黙が落ち、最初に口を開いたのはランゼルだった。
「魔導流水機はどうですか?」
――魔導流水機!
「あっ、それ、いいわね!」
ララの即答に、ランゼルは嬉しそうに微笑む。
その笑顔を目にした瞬間、ララの胸が大きく波打った。
どうしてこんなにも動悸がするのか、自分でもわからない。
18歳の少女らしからぬ感想を抱くララだが、頬はほんのり色づいていた。
「ねぇ、魔導流水機で、どうやって検証するの?」
バートンの問いかけに、ララは思考を戻す。
「魔導流水機って、一日にビスを一つ消費するの。
だから、シルクスパイダーの布に二つビスを設置して、二日以上動けば成功だと思うの」
「なるほど。それなら二つのビスを均等に使い切ったことになる。二日以上稼働できたら、確かにエネルギーの節約だね」
バートンは納得し、
「それじゃあ、早速実験だね!」
と元気よく前に進み出した。
三人のやり取りを眺めていた宰相バロンは、ふと呟いた。
「なんだか……今日は王女がオカンじゃなくて、年齢相応に見えるな」
その口調はまるで、親戚のおじさんのようだった。




