表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/89

第36話 ひらめきは豆電球から⁉︎ビス炉改善計画、始動!

ビス炉の部屋の右奥——

雑然と積み上げられた使用済みのビス。


その光景に、胸の奥がひやりとする。


ララの視線を追ったエルマンが、伺うように声をかけた。

「王女様、どうかなさいましたか?」

「……あれは使用済みのビスよね?」

指で示すララに、エルマンはうなずく。

「はい。それがいかがなさいましたか?」


「……一日に百個も破棄するの?」

「そうですね」——あまりにも当然のような返事だった。


「そのビスは、捨てるだけなの?」

「いえ、粉砕して樹脂と混ぜ合わせ、束ねたシルクスパイダーの糸のコーティングに使います」

「シルクスパイダー……?」初めて聞く素材に首を傾げた。


「はい。ビスと組み合わせることで、エネルギーを通すのに最適なんです。ここで作られたエネルギーは、その特殊なファイバーを通って各公共施設へ分配されます」

「……なるほど、その流れは資料で見たけれど、材料までは知らなかったわ」


「ファイバーの耐久年数は十年ほど。その作成に使われるのですよ」

「でも、年間三万六千五百個も必要ないんじゃない?」

「……確かに、そんなにはいらないですね」


——再利用はできても、一日に百個は多すぎよ。

それに、全部使い切る前に交換だなんて……無駄ね。


何かいい方法は……


ビス炉の白い輝きがふと目に入る。

……蛍光灯の色みたい。

それが豆電球のような黄色になったら交換……


——っん⁉︎


胸の奥で何かがパチンと弾けた。

前世の記憶が一気に開かれる感覚。


『ねぇ、お母さん、今日理科で豆電球と電池を使ってね……』

子どもとの何気ない会話がよみがえる。


——そうそう、電池の並列回路!

直列は光が強いけど長持ちしない。

並列なら一定の明るさで長持ちする——


これよ‼︎


「エルマンさん? ビス炉にビスを入れる時、何か決まりはあるの?」

王女の質問の意図が掴めず、エルマンは困惑を浮かべる。

「……特に決まりはなく、等間隔に並べているだけですが……」

「わかったわ、ありがとう」


沈んでいた顔が一転、ララの表情が輝く。


「ビス炉の中のビスの配置を変えても問題ない?」


エルマンはますます困惑しながらも、

「はい……大丈夫ですが……。炉の底がエネルギーを集める仕組みになっていますので、炉の中にビスがあれば問題ありません」と答える。


「よかった、これならビスの無駄が減らせそうよ」


ララの発言に、そこにいる全員が不思議そうな顔を向けた。


「じゃあ、さっそく試作にとりかからなくちゃ。

エルマンさん、シルクスパイダーの糸ってどこで手に入るのかしら?」

一人頭の中で段取りを決めるララに、思わずバートンが声をかける。


「王女様? 話が全然見えないんですけど……なんでビスの配置を変えたら無駄が減るんです?」


——あ、そうよね。この世界に並列回路なんて概念はないんだわ……。


どう説明すれば……?


視線を上げながら考えるララ。

「試してみたい事ができたの。今のビス炉は50個を一度に交換するでしょう? その中には、まだ十分に使えるビスだってあると思うの」


ララの説明に、バートンは先を促すように頷く。

「全てのビスがエネルギーを均等に出力出来たら寿命が伸びて無駄が減るでしょ。だから、そんなシステムを作りたいの」


ララの言葉に驚きを隠せないバートン。

感心した様子のエルマンと、息をのむビス炉の作業員たち。


ランゼルは眩しいものを見るように目を細めた。

—— 一人の王族が、ここまで国の先を案じるなんて……

形だけの視察はよくあるが、ララは常に目的を明確にし、解決へ動く。

俺の恋した女性は、唯一無二だ。


「王女様ってすごいね。美人な上に頭もいいなんて、尊敬だよ」

明るく静寂を破る声に、ララは苦笑する。

「ありがとう。でもまだ実際に可能か試作しないといけないわ」


ララとバートンのやり取りを、優しく見守っていたエルマンが口を開いた。

「王女様、シルクスパイダーの糸は王都の繊維工場にありますよ」


「ありがとう。まずは試作品を作ってみるわね。出来上がったら、また協力をお願いするわ」

「喜んで、協力させていただきます」


「さぁ、今度は繊維工場ね! 今回の成功のカギは……バートンよ」

「っえっ⁉︎」固まったバートンは、助けを求めるようにランゼルを見る。

「ど、どういう事⁉︎」


——こうして、バートンの苦戦する日々が始まるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ