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音楽会のお誘いを

評価ブクマありがとうございます。

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書かないと貰えない説と書いてあると貰えない説どちらが正しいんだろう。

 社交のシーズンは短いとはいえ、それなりの期間を確保していると思う。それぞれの領地から領主一家が王都に出向き、それぞれの家でお茶会やガーデンパーティ、晩餐会に夜会といった催しを繰り広げている。当然、城でも同じように催しを繰り広げており、陛下、殿下、それから陛下付きの各家の領主は城には不在がちになる、ということだ。それでも、通常業務は通常通り進行している。

 現在殿下付きも陛下付きも、残っているのは次男以下の自分のような者だけだ。で、残っていると。


「パーヴァリ、明日は音楽会だ。婚約者殿を誘っていくがいい」

「ありがたく頂戴いたします」


 殿下宛に届いたはいいものの、参加不要とキーア様が判断したものの内、しかし誰かは出ておいた方がよろしい、と追加で判断された催し物に参加することになる。

 ちなみに明日は各々の家で音楽会が開催される日だ。陛下と殿下はお一人ずつしかいらっしゃらないし、陛下と妃殿下、殿下とキーア様が別々に参加なされる訳にはいかないから、こうして下に回ってくるのである。そうして、現場はまた忙しくなる。クリスタ第二王女殿下? まだ婚約者が決まっていらっしゃらないから、今回はちょっと保留になっているだろう。そちらの話は回って来ないから、分からない。

 取り急ぎ控えの間に行って、執事のラッセがせっせと棚に追加してくれるカード類に目を通す。


「いかがなさいましたか」

「丁度良かった。今ヒエッカランタ卿から明日、音楽会に行くようにと招待状をいただいて」

「婚約者様に、ご予定のお伺いですね。それでしたら、こちらのカードがおすすめです。モチーフも音楽会ですので、分かり易いでしょう」

「ありがとう。いつも助かる」

「もったいないお言葉でございます」


 老境の執事からカードを受取って、自席へと戻る。ペーパーナイフで招待状を開いて、内容にざっと目を通す。招待されているのは、殿下方。主催はケッロサルミ侯爵家。

 キーア様のご実家とは派閥が異なるが、だからと言ってないがしろにしていいはずもない。派閥を気にされる家柄ではないから、フィルップラ侯爵家のダーヴィド様が行かれてもいいかもしれないが、まあ、お忙しいだろうから自分でもいい。マーサロ侯爵家のケルッコもまた、派閥違いか。そもそも侯爵家の派閥が同じはずもない。別段、諍いはないが。

 いや、ヒエッカランタ卿がご自身で行かれてもよいはずだけれど、そのフィルップラ卿が社交で忙しくしている以上、ヒエッカランタ卿には出仕しておいて欲しいというのが、官吏の総意ではあった。

 どちらかはいてくれないと、有事の際に困るのだ。そんな有事など滅多に無いのだが。まあ滅多に無いからこそいて欲しいわけである。

 カードに、急で悪いが明日ケッロサルミ侯爵家の音楽会に仕事で行くことになったこと、良ければエスコートをさせて欲しいこと、昼過ぎに迎えに行くことなどを記載し、侍従へクレーモア子爵家に届けてくれるようにと頼んだ。そのついでに、温室で何か綺麗な花を一輪選んで添えてくれるようにも。


「お任せください」

「よろしく頼むよ」


 そういうことが得手ではないことは重々承知しているからこそ、そういうことが得手である侍従に頼むのである。

 さて、メルヴィ嬢が受けてくれても受けてくれなくても、自分は音楽会に出席しなくてはいけない。今日の内に、出来るところまで仕事を進めておこう。


「お返事が届きました」

「ありがとう」


 とりあえず出来るところまでと仕事を進めている内に、侍従が戻ってきた。


「ご一緒にお茶をお持ちいたしましたので、ご休憩されてください」


 サイドテーブルにお茶と手紙を乘せたトレーを置いて、侍従は会釈して立ち去る。その背にもう一度ありがとうと声をかけるべきか悩んで、悩んだ隙に彼の背は見えなくなっていた。

 どうやら、その程度には疲れているらしい。

 ありがたく彼の助言を聞き入れて、手紙の封をペーパーナイフで切る。カードを引き出す前に、お茶を一口飲んで。


「そうか、行ってくれるか」


 カードには簡潔に了承だけが書かれていた。おそらく、このカードにも何か意味はあるのだろうけれど、その辺りはどうでもいい。仕事であることは伝えてあるのだから、いや、念のために執事のラッセに確認しておこう。不興を買ってもいい相手では、ない。


 それから仕事をしてある程度の所で切り上げて、翌日。最低限今日中に終わらせてから音楽会に向かいたい程度の仕事を終わらせて、直属の上司であるヒエッカランタ卿の所へと向かう。


「こちらが」


 複数の書類挟みをまずはヒエッカランタ卿の机に置く。微妙に嫌そうな顔をされたが致し方ないだろう。


「先日上がってまいりました嘆願書になります。ご成婚後のキーア様にお願いされるのがよろしいでしょう」

「やはりそうなるか」

「対応は必要ですが、ハンナマリ第一王女殿下はすでに嫁がれましたし、クリスタ第二王女殿下はまだ嫁ぎ先が決まっておりませんから、キーア妃殿下が妥当と判断いたしました。根拠はこちらに。しおりを挟んでおりますのでご参照ください」


 それから分厚い資料を一冊お渡しする。

 一礼して、執務室を出た。報告前に侍従に馬車を回しておくようにと頼んでおいたから、もう準備されている頃だろう。

王子様の側近とか普段どんな仕事してるんですかね。

さっぱり想像つかねえ。

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