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君に心を配ることが苦ではないのなら、それを愛と呼ぶのだろう  作者: 稲葉 鈴


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メラルティン伯爵家の夜会は婚約の発表の場に

 私とメルヴィ・クレーモア子爵令嬢との婚約のお披露目式の日取りが決まった時に、父と母の連名で招待客には夜会の趣旨が変更になった旨をお伝えいただけたそうである。

 ルミヤルヴィ侯爵家での夜会の醜聞を漏れ聞いた方から問い合わせがあったそうであるが、それについても双方の家で話し合いがもたれることになったからお気になさらないでよろしいと、父の方からご連絡いただけているそうだ。ちなみにしっかりとクラミ子爵家が相手ではなく、ルミヤルヴィ侯爵家とお話をすると記載されたそうだ。

 ルミヤルヴィ侯爵閣下にしてみればとんだ災難であるが、それがまた、派閥の頭首の責務の一つでもある。父と話し合いを持たれるのはもう少し先の話となるらしい。

 女性陣は夜会の準備をしながら軽食を摘ままれて、その間に我々男性陣は食堂で昼食を頂いた。料理長が腕を振るってくれていた。私一人だと腕の振るい甲斐がないようなので、まあ、楽しまれたことだろう。


 夜会の準備を終えたメルヴィ嬢に、実はお伝えしなければならないことがあると、お祝いとして頂いた反物の山を見せた。驚いていらした。お気持ちは察して余りあるものである。自分もとても驚いたので。


「これだけ多くの方々が、私とあなたの婚約を祝福してくださっています。皆様の祝福に、応えられるような花園を作りましょう」

「ええ、そうですわね。自信はありませんけれど、妖精がやってくるような、そんな花園の主となれるように精進いたしますわ」


 花園を作る。花園の主となる。

 それは、今はあまり聞かなくなってしまった言い回しである。なんでも祖父母の世代に流行った物語の一節であるらしい。新しく家を作り、そこに花園を作りましょう。私と、あなたと、子供たちと。幸せな花園には、きっと妖精たちが来て、私達を祝福してくれるでしょう。末永く。


 確かそんな、物語だったように思う。定かではないが。ルミヤルヴィ侯爵閣下が先日の夜会でそう祝福をしてくれたのだから、自分とメルヴィ嬢の作る家には、その言葉を飾ろうと思う。

 母と姉と兄の奥方と、メルヴィ嬢の母上と姉上と兄上の奥方が、楽しそうにその反物の山を見ている。近日中に母が贔屓にしているメゾンのデザイナーを呼んで、等と楽しそうに話していた。


 そうこうしている内に、夜会の開催時間となった。我が家は伯爵家であるから、玄関口でのお出迎えは行わない。


「慣れませんわ」

「その内に慣れますよ」


 いらした馬車から人々が下りて、我が家の使用人に案内されて夜会の開催場所である小講堂へと入っていく。それを、本館にある応接室の窓から、メルヴィ嬢と眺めた。

 自分は期間の定めなく、この屋敷で暮らすことになる。兄が言うには、なぜ弟が王都にいるのに、屋敷の管理を他人にさせるのか、だ。弟であれば管理費も支払う必要はない。その代わりに、自分も兄に家賃などの支払いを行わない。

 兄の子供たちであるとか、自分の今後であるとかで多少の変更はどこかで出るだろうが、しばらくはこの屋敷で暮らすことになるのだ。メルヴィ嬢には、慣れてもらうしかない。

 ひっきりなしに馬車がきて、人が下りて、馬車止めまで移動する。それを繰り返している。

 同じ応接室にはクレーモア子爵家の皆さま方がいて、メルヴィ嬢と同じように小講堂を見つめていた。夜会用の小講堂、というつぶやきが聞こえた気がしたが、それを口にされたのはどなただったか。


「この屋敷が出来た頃は、まだまだ土地がありましたからね。大きな屋敷を作って、そのために雇用を、とか、そういうお話ではないかと」

「はあ、そういう頃のお話なんですねえ」

「そういう頃のお話なんですよ」


 さも分かっているかのように口にしているが、自分だって見てきたわけではないので詳しくはない。学院の授業でやっただけである。

 大陸を統一するほどの超大国の、三つに割れた真ん中の小国。そこが我が国、ヤーコンサーリ王国だ。まあ、今はその話はよろしい。


「馬車の列が解消されましたから、そろそろ向かいましょうか」


 クレーモア子爵家の皆さま方を促して、本館の玄関へと向かう。丁度、準備を終えた家族が集まってくる頃であった。


「パーヴァリ、メルヴィ嬢。こちらへ」


 父に呼ばれ、メルヴィ嬢をエスコートしてそちらへと向かう。


「今日は、お前たちの婚約について発表させてもらう。よいな?」

「よろしくお願いいたします」


 メルヴィ嬢と二人、父にそう返事をする。父は頷いて、母をエスコートして歩き出す。そのすぐ後ろに、いつもであるならば兄夫婦が続くのであるが、今日は自分とメルヴィ嬢だ。自分達の後ろに後継ぎである兄夫婦、それから伯爵家である姉夫婦。クレーモア子爵家の皆様、と続く形だ。

 正面玄関からではなく、小講堂に近い方の扉から外へと出る。見習いの執事がそこにはいて、父へと何かを伝える。おそらくはお客様の出席状況であろう。

 父は頷いて、振り返るでもなく歩いていく。だから自分も、両親の後ろを、メルヴィ嬢をエスコートして歩く。本館と小講堂の間は、それほどは広くはない。間に小径がある程度だ。小講堂へも、まだわずかではあるがお客様のいらしている正面玄関からではなく、裏口へと回る。

 そちらの裏口にも、見習の執事がいた。こちらは王都の屋敷の見習い執事ではなく、領地の本館の方の見習い執事だ。兄の乳兄弟の一人で、いずれは兄の執事となるのだろう。


「皆様ようこそおいでくださいました」


 正面玄関が閉められて、皆様にお酒が振る舞われる。領地の酒である。銘柄について自分は詳しくない。その辺りの差配は母であり、兄の奥方であろう。


「急なご連絡、誠に申し訳ない。しかしまあほとんどが遠戚であるのでお許し願いたい」


 あちらこちらで、笑い声が漏れる。

 まあ、大体遠戚である。貴族というのは、婚姻において家と家の関係を強化し、それを繰り返す都合上、まあまあどこかで遠戚となるのである。

 だから我がメラルティン伯爵家も、頑張って辿れば王家と遠戚である。我が家に降嫁なされたことはないし、我が家から王妃を輩出したこともないが。それでも今度王子妃となられるヒーデンマー侯爵家とは遠戚であったはずなので。


「本日は、次男パーヴァリの婚約を祝うものとさせていただきたい」


 父がちらりとこちらを見たので、頷きを返す。メルヴィ嬢を伴って、一歩前へと進み出た。


「皆様お久しぶりです。忙しさにかまけて実家の夜会にはほとんど参加いたしませんでしたこと、どうぞご容赦ください」


 まったくだ、という呟きが、背後から聞こえる気がするが聞き流す。父か兄か、まあ両方であろう。もしかしたら母もかもしれぬ。


「この度、クレーモア子爵家のメルヴィ嬢と婚約を結びました。どうぞ皆様、私達が花園を作るさまを温かく見守っていてください」

「どうぞよろしくお願いいたします」


 メルヴィ嬢とともに、夜会の参列者の皆様に軽く頭を下げる。

 そっと一歩下がると、今度は兄が前に出る。兄が挨拶をして、乾杯となる。その後は、色々な親戚方とのご挨拶だ。メルヴィ嬢をご紹介して、先日のルミヤルヴィ侯爵家での夜会について聞かれたことにお答えして。ちゃんと実家の夜会にも出るようにとお小言を言われるたびに恐縮しておいた。

前回で終わりでもよかったんですが、もう一話続きます。

だってお披露目のお式の後に夜会があるって言ってるのにそちらでの挨拶を書かないのはメルヴィに悪いし、前二作と同じように今後についても言及しておいてあげたいじゃないですか。

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