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悪い人なのかな?


「どうにか間に合ったぁ~」

「ギリギリですがね」

「わんわん(ふんふん)」


 夕暮れ。

 幻想的な斜光が全てをオレンジ色に染め上げる黄昏時。

 私は少し閉じ始めているノーザン領の門近くまで辿り着いた。

 ここまでの道のりで聞いたアド君の話では、あと30分もしたらあの門は完全に閉ざされてしまい本日は野宿になっていたらしい。

 自衛の為に門限は絶対で夜間は外来者を完全にシャットアウトする方針みたい。

 魔物もいるというこの世界で野宿なんて、いくらリルがいても心細い。


「それではユウナ、先程も言いましたが……」

「うん。人目のあるところではアド君は口出せないんでしょ?」

「貴女が早く【念話】に目覚めてくれればいいのですが……

 残念なことにまだレベルが足りませんね。

 不測の事態に備えて行動の指示出しくらいはしますが」

「ありがと、心配してくれて。

 でも――大丈夫だよ。

 入領税を払って中に入り、宿屋を探せばいいんだよね?」

「確かにそうですが……」

「それにほら、リルもいるし♪」

「わん!」

「さて、もう暗いし……

 善は急げで、行ってきま~す」

「ああ、ユウナ。まだ話が」


 制止するアド君の声を振り切って全力で駆け出す私。

 併走するリルも嬉しそうに疾駆している。

 凄い凄い。

 あっという間に門まで到着しちゃった。

 門の前では槍を持った中年の衛兵さんが驚いたようにこっちを見てくる。

 こういうのって最初が肝心だよね。

 私は身なりを整え礼儀正しくお辞儀をすると挨拶をする。


「こんにちは!」

「ああ、こんにちは……」

「あっ。もう~こんばんは、かな?

 初めまして! テイマーのユウナです。

 こっちの仔は私の従魔であるリルです」

「わんわん!」

「中に入れて頂きたいんですけど……問題ないですか?」

「ああ、何だお客さんか。

 すごい勢いで走ってくるから何事かあったのかと思ったよ」

「ご、ごめんなさい」

「気にしないでいい。

 ようこそ、猫神の祝福を受けし最果ての地――ノーザン領へ。

 中に入るには入領税が掛かるが……大丈夫かね?

 何かあった時の保証金としてお前さんは5セルエン、従魔は1セルエンほど頂く事になるが」

「これで足りますか?」


 こんなこともあろうかと、私は予めアイテムボックスから出しておいたキラキラに輝く金貨をポケットから出して見せる。

 途端、顔色を変える衛兵さん。

 手招きで同僚を呼び寄せると自分と交代。

 私とリルを人気のない暗い所へと誘導していく。

 むっ……悪い人なのかな?

 思わず身構える私達だったけど――

 衛兵さんは同僚から十分離れたところまで来ると、突然怒り出した。


「何をしてるんだ、お前さんは!」

「は、はい!?」

「こんなところで無防備に大金貨なんぞ出して!

 悪い奴が見ていたらどうするんだ、本当に!」


 本気になって私を叱る衛兵さん。

 どうやら私はとんでもない事をしてしまったらしい。

 お、お金の額が多過ぎた?? みたい。

 聞こえないのに何故か盛大に溜息をつくアド君の声を幻聴する。


「ここら辺じゃ大金貨は商売人しか取り扱わん。

 そんなものを持っていると知れたら大事だぞ、まったく。

 決して街中では人目に触れぬようにしなさい。いいね?」

「は、はい!」

「きゃうん」

「分かったならば、よし。

 それで……銀貨は持っているのかな?」

「えっと……コレですか?」


 私はポケットからくすんだ銀色のコインを6枚取り出す。

 今度は間違いなかったのだろう。

 衛兵さんは深く頷くとそれを丁重に収容箱に仕舞う。


「これでいい。

 さて、ユウナとやら」

「はっはい!」

「自分の名はカインドという。

 今日、泊まる宛てはあるのかな?」

「いいえ。

 ここに来たのは初めてなので」

「だろうな。

 ならば村の中央近くにある黄金の獅子亭に泊まるといい。

 名前通り獅子の看板が目印だ。

 多少値は張るが……防犯がしっかりしているし、何より料理が美味い。

 街に不慣れならお勧めだぞ」

「あ、ありがとうございます!」

「あとは……くれぐれも!

 幾ら誘われても安宿には泊まってはいけないよ? 分かったね?」

「は、はいぃ~」

「何か困ったことがあったら詰め所まで相談しに来るといい。

 自分も忙しい身だが……出来るだけ力になろう。

 さあ、行きなさい」


 そう告げると門を指差すカインドさん。

 暗闇の中でも分かるくらい耳が赤いのは照れているせいなのかな?

 すごく親切な人なのに……疑ってごめんなさい。

 こうしてリルを胸元に抱いた私は、幾度も後ろを振り返って頭を下げながら――

 ようやく街の中へと入ったのだった(ふぅ)。

 



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