手がかり・下
それから二日後に、ようやく検死が終わった。
遺体は、すべて五人の女性。関西圏で捜索届が出ていた人物と、笹部が割り出した女性を照らし合わせて確認をした。結果、遺体はDNAと指紋か歯形が一致した筧真美、佐藤絵里奈、乾和香子、足立理沙、池野洋子だと判断されて捜査が再び始まった。
やはり明確な死亡原因は分からなかったが、心臓や首筋など動脈が多く斬られていた事から失血死、もしくは失血性ショック死の可能性が高いようだ。子宮を奪われていた為、暴行の痕跡は分からない。肛門に裂傷などはなかった。
「今回は、未成年の被害者が多い。周りに不安を与えんように、慎重に捜査してくれ。家族には――遺体を見せんほうがええ。見るなら、自己責任で頼むと伝えてくれ」
捜査課と特別心理犯罪課、鑑識課が揃った捜査会議で、宮城は疲れたようにそう言ってその場を解散した。
「すると、神原絵美と遠藤五月の遺体は見つかっていないのね」
「警視は、その二人も殺されていると思われていますか?」
捜査員たちがそれぞれ会議室を出ていく中、隣に座る櫻子に宮城は尋ねた。
「ええ。調べた七人の内五人が殺害されているのに、二人が無事な筈ないわ――捜索願は出ているのよね?」
「はい。遠藤五月の夫からと、神原絵美の姉から。手がかりは今のところ何もありません」
「そもそもあの部屋は、誰の部屋だったの?」
遺体が発見された古い木造アパートの101号室。八世帯のアパートだが、今あそこで住んでいるのはその部屋を含め三世帯だけだった。
「大家のばあさんから聞いた話ですと、鯵川真紀というスナックのママを職業にしている、三十代後半の女です。男に騙されて子供が出来たと騒いでいたんですが、いつの間にかスナックを閉めたらしく店は開けられていません。鯵川の姿も見ていないのですが、家賃はキチンと口座から引き落としされているみたいですわ」
「誰も彼女を見ていないの? 何時ぐらいから?」
「今年の三月過ぎぐらいからでしょうか。しかし、夜に電気が点いたり誰かの動く物音やドアの開け閉めを他の住人や通行人が確認していたので、彼女は子供を産む為に仕事を辞めたか休んでいるのだろうと思われたようです」
黙って話を聞いていた櫻子は、深く息を吐いた。
「なら、もしかしたらその鯵川さんが最初の被害者かもしれないわね……」
「え!?」
部屋に残っていた篠原が、思わず大きな声を上げた。宮城が視線を向けると、会議室には竜崎と篠原と笹部の姿だけが残っていた。
「今から、そのスナックへ行きましょう。もしかしたら――まだ見つかっていない二人と……鯵川さんの遺体があるかもしれないわ」
「竜崎、店の場所確認せぇ!」
「はい!」
宮城の命令に、竜崎は慌てて部屋を出て捜査課に戻った。
「篠原君」
不意に、櫻子は篠原に声をかけた。
「はい!」
「篠原君は――この犯人の犯行の目的は何だと思う?」
その問いに、篠原は息を飲んだ。そうして、最近学んでいる『犯罪の心理』を思い出して必死に考える。
「……ええと、……快楽殺人……でしょうか」
ターゲットは全て女性。無残な程切り刻まれて、乳房と子宮を切り取られている。住んでいる場所も年齢も違う女性に、怨恨があるとは考えられない。そうなると、女性を殺すことに快感を覚える快楽殺人が当てはまる。
「そうね。被害者の統一性がなく、犯行現場はそのまま……無秩序型の快楽殺人者……今は、この線から考えましょう」
無秩序型。新しい単語に、篠原は思わずぽかんとした表情になった。




