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異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】  作者: ノエ丸
4人目の仲間編

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96.デートおしまい!

 危ない危ない。

 いい雰囲気なせいで、普通に宿屋に帰ろうとしてしまった。

 宿屋へ向かう途中で、アナが服のことを思い出し、慌ててきた道を戻った。


「いやー、まさか服の事を忘れるとは思わなかったな」

「フフフ、そうだね。私も楽しくて、つい忘れちゃってた」


 服屋への道を2人で、キャッキャしながら歩いていた。


「ドーン!」

「うお!!」


 いきなり背中に衝撃が来た。

 誰だいきなり⋯⋯、ふざけやがって。

 そう思い、振り返ると。


「⋯⋯なんだ、シャロか」

 シャロが立っていた。


「2人共まだ帰らないの?そろそろ日が暮れちゃうよー」


「今から服屋に、荷物取りに行くんだよ」


 いきなり現れたシャロだったが、すぐ側にもう1人知っている人物がいた。


「こんにちは」

 エルフ族のリリアーヌだ。


「あ、どうも。エル雄は⋯⋯、居ないのね」


「はい、今日はギルドの資料室で、本を読むと言っていました」


 なるほど、アイツ暇があると本を読むからな。

「ヒューマンも、もうちょと本を読んだらどうだ?」とか言ってたな。

 正直、冒険者家業に必要な物しか読む気しないんだよなー、この国の歴史とか特に興味無いし。


 エル雄が居ないってことは、元々2人で約束していた感じか?

 シャロの脅しに屈する必要なかったんじゃ⋯⋯。

 シャロをチラリと見ると、ニヤリと笑った。


 こ、こいつ⋯⋯。

 まぁいい、今回は勝ちを譲ろう。

 もしかしたら、もっと早い段階で突撃を食らっていたかもしれないしな。


「リリーちゃん!この人が話してたアナちゃんだよー」


「この人が。初めましてリリアーヌと申します」


「こんにちは、私はアナスタシア・ベールイといいます」


 アナとリリアーヌが、お互い頭を下げ挨拶を交わす。

 何時の間にか、リリーなんて呼ぶ間柄になってたのか。

 シャロに友達が増えて俺は嬉しいぞ⋯⋯。


 俺の友達?⋯⋯⋯⋯エル雄くらいか?

 ⋯⋯サッサと服を取りに行くか。


「じゃあ俺達は服を取りに行かないといけないから、これで」

「えー!あたし達も行っていい?」


「宿屋で待ってろよ」

「ソラ、私は別に良いよ。今日一日ソラを独占しちゃったんだし、ね?シャロちゃん」


「え!?えー、いや、別にそういうんじゃないんだけどーねー」


 珍しくシャロが狼狽えてる。


「なんだ?寂しかったのか?」

「ちーがーいーまーすー!ほら、服取りに行くんでしょ、行こ!」


「フフフ、可愛いね?」

「そうですね」


 シャロは照れ隠しなのか、サッサと先に行こうとした。

 アナとリリアーヌが、そんなシャロを見てクスクス笑っていた。


 そんな訳で、俺達4人は服屋へと向かった。


 ◇


「お待ちしておりました、アナスタシア様。コチラがご注文のお品です」

「買ったのはソラなんだけど、私に渡すの?」


 圧よ⋯⋯。

 店員がこの世の終わりみたいな顔してるぞ。


「こ、こちら。ご注文のお品です⋯⋯」

「あ、どうも」


 そういえば、試着はしていった方がいいのかな。

 更衣室的なのは見当たらないが。

 まぁいいか、きつかったらまた仕立て直してもらおう。

 店員さん死にそうな顔してるし。


「よし、次の店に行こう」


 シャロの服を買った店へと向かった。


 ◇


「どうぞソラ様。ご注文のお品です」

「あ、どうも」


 アナは満足そうに頷いていた。

 俺が知らないだけで、そういう作法的なのがあるのだろうか。

 別に気にしなくてもいいか。


「はい、シャロ。お土産の服だ」


「わー!ありがとー!」


 そのまま、シャロに手渡す。

 本当は宿で渡すつもりだったが、店まで付いてこられたんなら、その場で渡すしかないよな。

 シャロは服の入った袋を手に小躍りしていた。

 喜んでるから良いか。


 商品も受け取ったし、帰るとしますか。


 ◇


 俺達は宿屋への道を歩いていた。


「それでは、私はここで失礼しますね」


 リリアーヌはエル雄を迎えに行くといい、途中で別れた。

 エル雄を回収したら、シャーリー亭にまた来るらしい。

 シャロが一緒に夕食を取る約束を、取り付けていたのだそうだ。


「それじゃあとで」

「あとでねー」


 冒険者ギルドの方角へ歩いて行く、リリアーヌにバイバイと手を振り見送る。

 さて、どうせだからちょっといい酒でも買って帰るか。

 エル雄はエルフ族の王族っぽいし、明言はされて無いが何となく察する。

 安い酒を出したら文句を言いそうだ。


 帰り道に良い店あったっけか。

 そんな事を思いながら、帰り道を3人で歩く。


「アナちゃん、今日はどうだったー?ソラはちゃんとやれてたー?」


「ええ、ちゃんとエスコートしてくれてたよ」


 ⋯⋯してたか?ただ一緒に歩いていただけな気もするが。

 アナがそう言うんならそうなんだろう。

 取り合えずドヤっとこう。ドヤァ。


 帰り道で酒を買い、宿屋へと戻って来た。

 エル雄達が来るまで、何しようかな。


「早速この服着てみてもいい?!」


「え?ああ、いいんじゃない?」


 シャロはそう言うと、自分の部屋と駆け出して行った。

 なるほど、買ってきた服を着てみるのもいいか。


「私も着てくるね」


 アナも自分の部屋へと向かった。

 ⋯⋯俺も着てくるか。


 ◇


 さて、3人出揃った訳で。

 俺はグレーのワイシャツに黒いズボン。

 ワイシャツは長袖なので、肘の近くまで折り曲げている。

 この世界に来てから、鍛えられた為か、かなり腕が太くなっていた。


 アナは地雷臭のするゴシックワンピース。

 何故かツインテールにしている。

 より、地雷臭が増してるな。


 シャロは探偵風ワンピース。

 普段は2つに縛ったおさげだが、今回は髪を縛らずそのままだ。

 探偵風だが、どことなく学生服っぽい感じもするな。

 もしかしたら、元々のコンセプトはそっちなのかもしれない。


 三者三様。

 結果から言えばお互い褒め合っていた。

「可愛い!」

「かっこいい!」

「似合うー!」


 そうしていると、リリアーヌがエル雄を連れて、宿屋の食堂へとやって来た。

 エル雄は本を読みたいらしく渋ったが、引きずられながらやって来た。


「恨むぞヒューマン」

 俺を恨まれても困るんだが。


 全員揃った訳だが。

 リリアーヌがある事を言った。


「お風呂に入りたいです」


 エルフは長命種族だ。

 俺達、人間種が〈清潔魔法(クリーン)〉を取得したのは100年ほど前だ。

 それ以前は風呂という文化はあった訳で、エルフ族はその記憶がある。

 今でこそ〈清潔魔法(クリーン)〉を使うが、風呂に入ったりはするようだ。


 現にこの、シャーリー亭が風呂に入れると宣伝し始めた時は、エルフがこぞって来たらしい。

 俺達はその時、鉱山都市に居た為、その事をしらなかったが。


 その為、シャーリー亭の客層でエルフの割合が若干増えていた。

 リリアーヌも時折来ているらしい。


 という訳で、男女に分かれて風呂に入ることになった。


 ◇


 ああ~、染みる。

 やっぱり湯舟はいいな、朝も入ったが一日中歩き回った後だと尚更いい。


「ふぅ、中々良いじゃないか。リリアーヌが通うだけはある」


 ⋯⋯やはりエルフ。

 全裸になっても奇麗だな。

 何処が、とは言わないが美形だ、ツルンとしている。

 種族差とはこうも残酷なのか⋯⋯。


 まぁ俺の方が大きいがな。ドヤァ


 しかし野郎だけとは華がない。

 ここで、女子風呂の様子を⋯⋯となる場面だが、俺にそんな権限はない。

 諦めてください。


 俺とエル雄はお風呂から出て、食堂へと向かった。

 女性陣はまだ入ってる様だ。

 仕方ない、男だけで始めるか。


「3人を待つか?」

「偶にはヒューマンと、差しで飲むのも悪くないだろう」


 よし、潰す。

 俺は帰り道で買った酒を取り出す。


「度数が高いのを買っておいた⋯⋯飲もうぜ?」

「ふっ、いいだろう」


 ◇


「うい~、ほらエル雄吞めよ~」

「ヒュ~マン~、俺のコップはこっちだ~」


「⋯⋯うっわ」

「見事に酔ってますね⋯⋯」

「フフフ、ソラは相変わらずだね」


 3人が戻って来た。

 3人?6人くらいいない?視界がゆらゆらする。


「なんだ~、アナさっきの可愛い服は着ないのか~。シャロも着替えやがって~、俺は犯人じゃないぞ~」

「何言ってるのー?」

「完全に酔っぱらってるね」


「エル子よ⋯⋯、世話をかけるな~、僕はお前が一番だ~」

「素面の時に聞きたいのですが⋯⋯」


 酔っ払い2人の夜は更けていく。



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エル雄は友達
エル雄酔うんだww
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