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異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】  作者: ノエ丸
出稼ぎ編

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72/344

72.鉱山都市までの道のり1日目。

 夜が明ける。


 辺りがまだ薄暗い時間帯、俺とシャロは鉱山都市へ向かうべく、宿の入口に集まっていた。


「気をつけて行くんだぞ」

「風邪引かないようにね」

「シャロ、ソラに迷惑かけるなよ?」


 シャロの家族から別れの言葉を貰う。

 シャロ自身もドレスラードの街を出て、他の街へと行くのは初めてなのだそうだ。

 実際、車なんて便利なものは無いので、移動は馬車か徒歩のみ。

 そういった理由で、冒険者や商人でもない限りは、街から出ずに一生終える人間は割と多いんだとか。


 シャロの両親は元冒険者なので、他の街にも行ったことはあるようだが。


「行ってら——zZ」


 アナは寝起きの為か、ふにゃふにゃしていた。

 部屋のベッドに戻し、出発することにした。


「行って来るねー!」

「いってきまーす!」


 俺とシャロは元気にそう言うと、乗合馬車の待機所まで移動を開始した。


 ◇


 朝一だが、わりと人がいるな。

 待機所には結構な人数が馬車を待っていた。

 小さい小屋があり、そこで馬車に乗る為の切符が売られている。


 列が出来ているがスムーズに進んでいる。

 俺とシャロも並び順番を待った。


「どちらまで?」


「ルクバトウ鉱山都市行きのをお願いします。」


「あいよ、2人分だな?ルクバトウ鉱山都市行きは、あそこの少し離れた所に止まってるから」


 切符。というより木の板を受け取り、受付の人が指さす方を見る。

 他の馬車より少し離れた位置に、5台くらい馬車が並んでいた。

 他は1台か2台位なので、ルクバトウ鉱山都市に行く人が多い事を示していた。


 受付の人に礼を言い、歩き出す。


 木の板にはマークが書いてあり、馬車に付いている木の板と同じマークの所に乗るシステムになっていた。


 俺達のは、何故か髑髏マーク。

 幸先悪すぎる⋯⋯。

 他の馬車のマークは〇や△とかなのになぁ。

 目的の馬車の御者に、木の板を渡し中に乗り込む。


 中に居るのは殆どが冒険者だった。

 俺とシャロに気付いた面々が声を掛けてくる。


「お、ソラとシャロじゃねーか」

「貴方達も鉱山都市に行くの?」

「って事は[(アイアン)]ランクになったんだな」


 冒険者ギルドで、時々話をしたりする人達が殆どだった。

 俺はアナと出会ってからは、魔女の眷属だの手下だのと言われ、面白がって絡まれることが増えていた。

 シャロも俺といつも一緒に居るので、同類のように見られていた。


「こんちゃーっす」

「こんにちは、皆さんも出稼ぎですか?」


「ああ、10年に1度の稼ぎ時らしいからな」

「貴重な鉱石も掘れるかもしれないしね」

「稼げるお祭りみてーなもんだからな」


 会話もそこそこに俺とシャロは、アレックス君の用意してくれた朝食を食べることにした。

 出発迄まだまだ時間はあるようだし。


 取り出した料理を全員がじっと見てくる。


「なんだ、それ」

「美味しそーねぇ」


「シャロの実家の、シャーリー亭の料理ですよ」


 一応宣伝しておく。

 取り出したのは、ピザトーストもどきである。

 トマトっぽい野菜を、すり潰してから色々と加え煮詰めた物を塩で味を整えた、ケチャップっぽい物を使用した1品だ。

 俺の記憶にある味とは、結構違うがそれなりに美味い。

 美味いが、俺の記憶の中の物と比べればまだまだなので、ケチャップっぽい物の味の改良は、アレックス君に丸投げしてある。


 〈収納魔法(アイテムボックス)〉のお陰で熱々だ。美味そうな匂いが立ちのぼる。


「んー!美味し〜」

 シャロはそれを美味しそうに頬張る。

 それを見た周りの人達はゴクリとツバを飲む。


「それ、まだあったりするか?」


 1人が声をあげる。


「ありますが」

 俺が料理を作る時は割と大量に作る様にしているので、このピザトーストもどきもそれなりの量を作ってある。


「⋯⋯いくらだ?」

 ほぉ?俺は素早く材料費を思い出し、シャーリー亭で出す値段を計算した。

 あれがこれ位だから、あーしてこーして。


「これ位でどうですか?」

 手で値段を示し、相手の反応を見る。

 まだシャーリー亭でも出していない料理なので、その分の値段を少しだけ追加する、少しだけな⋯⋯。


 その後、俺の手持ちにあるピザトーストもどきは完売した。

 さーて、早速不測の事態になったな⋯⋯。


 馬車の全員が食事をし終わる頃には、馬車の出発時刻となっていた。


「ルクバトウ鉱山都市行き出発しまーす」


 ゆっくりと馬車が動き出した。


 ◇


 ガラガラと音を立て馬車が街道を進む。

 ⋯⋯振動が凄いな。


 今まで乗っていたのが高級な馬車だったせいか、質の低い乗合馬車の振動にケツが悲鳴をあげていた。

 〈収納魔法(アイテムボックス)〉から事前に作っておいたクッションを取り出し、ケツの下に敷く。これで少しは良くなるだろう。

 シャロがジッと見つめて来る。


「いいなー」


「⋯⋯ほら」

 〈収納魔法(アイテムボックス)〉から、念の為に作っていた、シャロの分のクッションを取り出し渡す。


「流石ソラー!ありがとー!」

「はいはい」


 どうせシャロは、その辺の対策を考えてないと思ったが、当たりだったか。


 馬車は進む。


 ヤバイ暇すぎる⋯⋯。

 馬車の椅子に座っているが何もする事が無い、他の人と喋ってもネタは尽きる訳で。

 寝ている人もいるが、起きている人は全員無言だ。


 そう思っていると。

 馬車に備え付けれられている、鐘が鳴り響く。


「魔物だー!!」


 俺達を含め、冒険者が馬車から飛び出す。

 今いる場所は左右に草原が広がっていた。


 左側の草原から、猪の様な魔物が群れを成して襲って来ていた。

 1人の狩人が叫ぶ。


「レッドボアだ!」


 レッドボア。

 ブラウンボアと姿は似ているが、体毛は赤く、体も大きいブラウンボアよりも強い魔物だ。

 そして肉が旨いらしい。


「殺せー!」

「逃すな!」

「うまい肉だー!」


 ベテラン冒険者達は、アレをうまい肉としか見ていなようだった。

 何人か馬車の護衛に残し、全員突っ込んでいった。


 ⋯⋯ん?後ろから一匹はぐれたのが、こっちに向かって来るのが見えた。

 俺達はアレをやるか。


「シャロ!後ろだ!タゲ取り頼む!」

「んー?あ、オッケー!」


 シャロに指示を飛ばし武器を抜く。


「〈筋力増加(ストレングス)〉!〈挑発(タウント)〉!」


 シャロが自身にバフを掛け、ヘイトを向ける。

 レッドボアは、シャロ目掛けて進路を変え、襲い掛かって来る。


 進路上に向け、黒く輝く魔法陣を描き。呪文を唱える。


「〈闇の棘(ダーク・スパイク)〉!」

 タイミングを見計らい発動。

 魔法陣より漆黒の棘が勢いよく飛び出し、レッドボアに襲い掛かる。

 当たった!

 だが、威力を少し殺す程度の効果しかなかった。

 漆黒の棘が刺さった状態でも、レッドボアは動きを緩めない。

 俺の〈闇の棘(ダーク・スパイク)〉をモノともせず、直ぐにシャロの構えた盾目掛け、その巨体を叩き付ける。


 シャロはそれを受け止め。少し後ずさり耐えた。


 今だ。

 俺は手を上に挙げ、”ある魔法”を唱える。


 つい最近覚えた新しい攻撃魔法。


「〈闇の投槍(ダーク・ジャベリン)〉!」


 黒く輝く魔法陣が出現し、1本の漆黒の槍を作り出す。

 魔力によって作り出された漆黒の槍を、レッドボアに狙いを定め、打ち出す。

 漆黒の槍はレッドボアの頭を貫通し、地面に突き刺さると四散した。

 頭を貫かれたレッドボアは動きを止め、地に倒れ伏せた。


 ゴブリン相手に何度か使ったが、レッドボアにも通用するな。

 それにしても、ブラウンボアよりも二回り位デカいな。暫く肉には困らなそうだ。


 他の冒険者達も終わったようで、雄たけびを上げていた。


 〈収納魔法(アイテムボックス)〉にレッドボアを収納した面々が、ゾロゾロ戻って来る。


「いやー儲け儲け」

「美味しいお肉GET出来たねー」

「幸先いいなー」


 ベテラン連中は、本当に只の肉位にしか思ってないのか⋯⋯。

 夜、馬車が止まったタイミングで解体してみるか。


 その後魔物の襲撃はその一回で終わり、日が暮れ始めた頃に最初の野営地へと辿り着いた。


 1日目の移動はこれで終わりか、残り2日順調に行けばいいが⋯⋯。

 馬車から人々が降り始め、各々テントを張り始める。


 よし、俺達もテントを建ててからレッドボアを解体するか。

 テントをシャロと協力して建てた後に、他の冒険者が少し離れた所で解体作業を行っているので、そこに移動する。


 1人の男が凄い速さで解体を行っていた。


「おー、ソラとシャロかどうした?」


 同じ馬車に乗っていた冒険者の1人だ。

 俺は答える。


「俺達もレッドボアの解体にきました」

「なんだ、お前らも狩れたのか?やるじゃないか、俺が解体してやるから貸してみな」


「いいのー?」

「ああ、他の連中も俺に任せっきりだしな。まぁ、その分代金は取ってるがな」


 お、楽できそうな感じか。

 ブランボアと同じ要領だろうけど、デカい分大変な予感はしてたんだよな。

 それが金で解決するならそれでいいか。

 念の為シャロにも確認を取る。


「シャロもそれでいいか?」

「もちろん!お肉!お肉!」


「ハッハッハ、レッドボアの肉は旨いからな期待しとけ。⋯⋯それはそうと、ソラ」


「なんでしょう」

「聞いた話なんだが、シャーリー亭の料理。あれ、お前が考えたらしいな?もしかしてレッドボアの肉を、更に旨く出来たりするか?」


 俺は少し考える。

 ふーむ、正直どうだろう。レッドボアの肉は焼くだけでもうまいらしい。

 食べた事無いから、どう旨いのか分からないからなぁ。

 味見してから考えるか。


「レッドボアは食べた事無いので、味をみてからじゃないとわかりませんね」


「そうか!ならこれ使ってくれ」


 そう言って小さめの肉の塊を渡された。

 これを味見用に使っていいって事ね。


「その間に、お前らのを解体しておくから。旨い飯作ってくれるなら、代金はチャラでいいぞ」

 ああ、そういう目的ね。俺は了解した。


「わかりました。じゃあちょっと試してみますね」

「お肉ー!」


 俺とシャロは調理場になっている場所に移動した。


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― 新着の感想 ―
> 車なんて便利なものは無いので いや車輪がついていれば車、なので… 馬車だって車、ですよ??ってモヤってしまいました この世界にないのは省略された[自動]の部分 でも現代人感覚だと車イコール自動車…
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