66.後始末はどうします?
ソラがお手洗いに行ってから少し経つ。
ココの会場からお手洗いって結構遠いのよね。
前アウラにそう愚痴ったけど、特に改善はされて無いんだろうなぁ。
まぁいいや、今のうちに美味しいのを探しておいて、ソラに教えてあげようっと。
私は料理を一口分ずつ取り、どれが美味しいのかを比べていた。
⋯⋯ん?なんか違和感、この感じは。
直ぐに〈収納魔法〉から杖を取り出し、杖の根を地面に打ち付ける。
周囲に魔力を這わせ索敵を行う為だ。
えーっと1,5,10。
⋯⋯30位かな?
会場の外側に30人位の人間の反応を感じる。
⋯⋯あの女に嵌められた。
何か企んでるとは思っていたけれど、パーティー会場を守らせる為に私を招待したのね。
⋯⋯ソラは何処に。
もう一度杖の根を打ち付け、先ほどよりも広範囲を索敵する。
⋯⋯ッ!
あ、あの女ぁぁあ!
寄りにもよって、ソラの側に居るなんて!
今すぐ向かいたいけど、この場をどうにかしないと⋯⋯。
私が対処しないと招待客や給仕は多分、一方的に殺されることになる。
⋯⋯少なくとも、あの女の実力はそれなりにある。
ソラの側に居るなら、守りはするでしょう。
それに、ソラに危害加えたら殺すと釘を刺しておいたし。
あの子はその辺の約束は守る。それは信頼してもいい。
仕方ないか⋯⋯。
先にシャロちゃんへのお土産を守らないと。
「〈氷の壁〉」
呪文を唱え、料理の乗ったテーブルを氷の壁で覆い隠す。
⋯⋯あ、取り分けてくれる人ごと覆っちゃった。まあ、いいや。
私は仮面を取り外し、魔石に近づきながら、その場の全員に聞こえるように声を張上げる。
「全員聴きなさい!今すぐ、中央の魔石に集まるように!」
周囲から「ヒッ」だの「魔女だ⋯⋯」だの聞こえてくるが気にしている暇は無い。
再度声を張り上げる。
「死にたくなかったら、私の言う事を聞きなさい。中央の!魔石に!集まりなさい!」
「〈氷の鎖〉」
演奏団の連中を氷の鎖で縛り付ける。
コイツラは恐らく敵、私が仮面を外した瞬間に動きが変わったから。
2度目の指示でようやく魔石に集まりだした。
視界の端で1人の給仕が外に逃げていった。
多分、内通者かな。
あの女の事だ、私が動いたら素直に従う様、給仕に指示していたと思うのよね。
給仕が外に逃げてすぐに、ガラの悪い男達が雪崩れ込んで来た。
うーん、索敵した人数分は入ってきたかな?
「〈氷の薔薇〉」
地面に青い魔法陣が浮かびあがり。
透明な花の蕾が、魔法陣より現れる。
蕾の根元より、幾つもの氷の茨が伸び、侵入者へと襲い掛かる。
氷の茨は男達目掛け伸びて行き、無数に生える棘を突き刺しながら対象の動きを奪い捕る。
次第に透明な蕾は赤みを帯び始め、その場の侵入者全てを絡め捕ると。
蕾の根元に集め始め、まるで栄養を得ようとするように。
そして花開き、美しく赤い薔薇の花弁が咲き誇った。
◇
さて、どうしようか。
集めたは良いけど、この人たちが何を目的に此処に来たのか解らない。
あの女が事前に情報を共有してくれていれば、もう少しやりようはあったと思うんだけど。
取り合えず、コイツラに聞いてみようかな?
「貴方達、何しに来たの?」
恐らくリーダー格だろう男が口を開く。
「⋯⋯くそっ!おのれ魔女め!言う訳ねえだろうが!」
口は堅い感じかな?
まぁいいけど、アネモス家に引き渡せば口を割るだろうし
氷の茨を杖でユサユサ揺らす。
「あああああ!やめろ!揺らすな!」
茨の棘が刺さって痛いよね?
刺さった所から徐々に凍らせていくから、時間が経てば経つほど、きつくなっていくと思うけど。
教えてあげる必要はないよね。
私は氷の茨をユサユサ揺らす。
暫く揺らしながら、侵入者の悲鳴を聞いていると。
扉の方からソラの声が聞こえた。
「アナー!どこだー!!」
私はそれに応え。
「ここだよー!」
そう叫ぶ。
********************* *
アナの声が聞こえた所に着いた。
わぁ、奇麗な花だ⋯⋯薔薇かな?
奇麗な氷の花の下に、人がいっぱい絡まっているがスルーする。
多分、ガッツという男が言っていた、別動隊と云う奴だろう。
見た所アナに怪我はなさそうだ。
取り合えずホッとし、その事をアナに尋ねる。
「アナ、怪我はないか?」
近づいてきたアナは、何時もの様に微笑みながら答える。
「うん。ソラは大丈夫だった?その女に変なことされて無い?」
「御姫様抱っこ以外はされてないです」
誤魔化すと後が怖い気がしたので、素直に答える。
さっとアナの額に青筋が浮かび、アウラお嬢様を見つめる。
「この方がのんびりしていらしたので、仕方なくですわ」
「そお⋯⋯。次からは勝手に触らないでね」
俺的にはアウラお嬢様も、アナに負けず劣らずの素敵なものをお持ちだったので悪くはなかったがな。
口にだしたら酷い目にあいそうだな。
とりあえず状況の説明をして貰おう。
「それで、コレどういう状況なんだ?」
「とりあえず演奏団の人達は変な動きしたから縛ってる感じかな。この人達は、襲って来たけど理由を喋らないから、まとめておいたの」
「そうか」
アナの傍にある人の塊は別働隊と云う奴で確定だろう。
俺はトイレ付近で起きた事をアナに話した。
ガッツという男が襲って来たこと。
魔石を強奪する為の、別動隊が居た事。
話し終えた俺は、アウラお嬢様に同意を求めた。
「ええ。それと、貴女。カッスダという名に聞き覚えはないかしら?」
「カッスダ?⋯⋯ああ、この前手下に襲われたかな。ソラと初めて会った日の事だから、よく覚えているわよ。その後、調べたらその名前に辿り着いたし」
俺と会った日に、そんな事が起きてたのか⋯⋯。
取り合えず、頭を撫でておこう。
アナの頭を撫でると、グリグリ頭を押し付けて来た。よしよし。
「まぁ⋯⋯。この子がこんなに懐くなんて⋯⋯」
アウラお嬢様は驚愕していた。
信じられない物を見た、という表情をしていた。
さて、それでこれからどうしようか。
アナも満足したようだし。
パーティーを再開、何て空気でもないよな。
そう思っているとアナが口を開く。
「それで?この後どうするの?」
「元々、こうなる事は予想出来ていましたし。他の招待した方々にはお帰り頂きますわ。もう暫くしますと、お父様方が御戻りになられますし」
「なに?最初から計画どおりってこと?」
「ええ。魔石を狙う輩の情報は入っておりましたので、今回の計画を実行いたしましたの」
なるほどー、大体の流れは分かったな。
領主をわざと不在にして襲わせたのか、娘が[白金]ランクとは云え、よく許可したな。
俺だったらどうだろうな⋯⋯。
自分の子供に対してどう接するだろうか。
俺の両親は、自分で身の回りの事が出来る様になったら、あまり家に帰ってこなくなったな⋯⋯。
両親共に自分の子供の頃もそんな感じだったって言ってたし。そう言う家系なんだろうな。
それに別に仲が悪いわけでは無いんだけどな、会えば話はするし。
金だけは有ったが、色々買っても虚しいだけだし、高校上がる頃には必要最低限のものしか買わなくなったな。
俺は元の世界の事を思い出し、なんだかアンニュイな気持ちになった。
俺が物思いにふけっていると、アナとアウラお嬢様がガンを飛ばし合っていた。⋯⋯なんでぇ?
「私を巻き込むのは構わないけど、ソラを危険に晒さないで」
「あら、ちゃんと傷一つ付けずにお守りいたしましたのに、その言い草?」
「その程度の事は[白金]ランクを名乗るなら出来て当然なんだから、誇る必要はないでしょ?」
2人共、体が密着する位近づいているな。
⋯⋯すごいな胸が押し合って、こう、すごいな。
カメラが有ったら撮りたい光景を前に、流石に仲裁に入る。
「ま、まぁまぁ2人共落ち着いて。全員無事だったので万事オッケー!それでいいね!アナもいいね?!」
「⋯⋯ソラがそう言うなら。」
少し不服そうだがアナも納得してくれた。⋯⋯してくれたよね?
「それで!アウラお嬢様!この後どうされますか?!」
場の空気を換えるように声を張り上げる。
「⋯⋯そうですわね。招待客の方々にはお帰り頂くとして、貴方達はどうされます?この氷は、貴女にしか操れませんし」
「時間が経てば溶けるけど?」
「それ、何日掛かる話かしら?」
「え!?アナの氷溶けるのそんな掛かるの?!」
聞いてない情報に、思わず声が出る。
「そうだねー。大体10日位は掛かるかな」
「もしかして、ロックタートルの時の氷ってまだ残ってる?」
「そろそろ解け始めるんじゃない?」
Oh⋯⋯、マジか。あそこまだ氷の海なのか。
とっくに溶けて元通りだと思っていた俺は頭を抱える。
「ソラは気にしなくてもいいよ?」
「⋯⋯そお?ならそうしようかな」
俺にはどうする事も出来ないんだし、気にしないことにした。
俺とアナはもう少し、この場に拘束されそうだな⋯⋯。




