56.そういうお店
今日もいい天気だ。
窓からのぞく日差しに目が眩む。
昨日は、風呂から上がったアナと揉めた。
魔石の買取金額が決まり、その半分を俺に渡すと言い出した。
俺は抵抗に抵抗を重ね。シャロが乱入し、その半分を寄越せとほざいてきた。
カオスな三角関係が形成されていた。
俺達三人の言い分はこうだ。
俺
ダイアウルフの素材や魔石を貰ったのでそれでチャラ。
アナスタシア
依頼を受けたのは2人なのだから報酬は半分こするべきだ。
シャロ
俺の分の半分を寄越せ。アホか。
アナがゴネにゴネた為。
最終的に俺がその報酬を貰うのに、相応しいランクになったら受け取る、という事に落ち着いた。
アナも渋々了承。
シャロの意見は無視した。
ブーブー言っていたので、今後料理は作らないと宣言したら黙った。
代わりにハンバーガーを大量に作らされた。
なんで?
そんな事が有ったので、今日はシャロとゴブリン狩りに行くことになった。
アナは用事があるとかで朝一で、どこかへ行ってしまった。
[白金]ランクは忙しいんだなと思った。
俺達はゴブリン狩りをする為に、以前はワイルドボアの生息地となっていた森に来ていた。
未だにゴブリン狩りの熱は冷めていない様で、時々ゴブリンの悲鳴が木霊していた。
「さて、俺達はゴブリンと、ついでにワイルドボアを狩るぞ」
シャロに今日の方針を告げると。
「ねえ、ソラ。最近さ、冒険者の間で噂になってるんだけど、ワイルドボアの上位種が居るみたいよ」
「ワイルドボアの上位種?」
「そっ!って言っても噂程度なんだけどねー。見たって人もチラッと見た位の事しか情報無いし」
ワイルドボアの上位種か⋯⋯。
シャロがこういう情報を話すなんて珍しいな。何時もは行き当たりばったりなのに。
「誰から聞いたんだ?」
「マルコさんから聞いたのー」
あの人からか。ってことは、その可能性も考えながら狩りしないといけないか⋯⋯。フラグか?
周囲に気を貼りながら、狩りを続けた
◇
「〈闇の棘〉!」
黒い棘でゴブリンを串刺しにし動きを止め、直ぐに近づき首を撥ねる。
カルマンさんの剣切れ味良いなー。
ダイアウルフもスパスパ切れてたし、コレは良い買い物をしたな!
「〈シールドバッシュ〉!」
シャロが盾で殴り付けたゴブリンは、吹き飛ばされ木にぶつかり頭を潰していた。グロォ。
俺達はゴブリン狩りを続け、ゴブリンが10匹、ワイルドボアを2匹倒していた。
そろそろ戻ってもいい頃だな、俺はそう考えていた。
「そろそろ戻る?」
シャロも今日は早めに切り上げたいようだった。
「そうだな、もどるか」
俺達は街に戻る決断をした。
街に戻る道中、ワイルドボアの足跡を見つけた。
「⋯⋯なあ、シャロ」
「あー、多分コイツだね」
シャロも見ただけで気づいた様だ。
俺達の眼の前の地面に足跡があった。
よく見かけるワイルドボアのものと同じ形だ。
違いを上げるとしたら⋯⋯。
俺の頭よりも大きい足跡があった。
幸いにも街に戻るルートの反対に向かっていたので、俺達は無言で頷き、駆け出した。
おうちに帰るんだよー!
俺達は無事に街へと辿り着けた。
◇
それから2日程たち、ワイルドボアの変異種が討伐されたという知らせが、ギルドに張り出された。
なんと倒したのはシルバーファングだと云う。
ギルドの前に置かれた死骸を見たが、マイクロバス位の大きさがあった。
これを倒したのかと、感心した。
その日の夜。シルバーファングが、シャロの宿屋で祝杯を上げていた。
「まさか遭遇するとは思わなかったな~」
「だな、イヤー儲けた儲けた」
「今日は飲むぞ~」
「飲むぞ~、アハハハ~」
景気が良いようですな。
俺も今日は疲れたから、もう寝たい。
混ざろうとするシャロを捕まえて部屋に戻す。
そういえばアナはまだ帰って来てないのか⋯⋯。
最近、朝から何処かへ行ってばかりだ。
夜も俺達が寝てから帰って来てるっぽいし。
少し心配だが、本人が何も言わないのでどうしようもない。
今日はもう寝よう。
◇
翌日、シャロの親父さんに店の前の掃除を頼まれた。
⋯⋯また?流石に今回は違うよな。
デカいのが4つ。
〈水生成魔法〉で水を掛け叩き起こす。
「おはようございます」
「「「「おはよう⋯⋯」」」」
「マルコさん以外は、早くご家族の所に帰ってくださいねー」
「ああ」
「悪いな」
「じゃ、またな」
三人は、それぞれの家族が待つ家に帰って行った。
マルコさんはボーっとしてたが、いきなり立ち上がり言う。
「ソラ、今日の夜暇か?」
「夜なら暇ですね」
呑みの誘いだろうか。
そんな事を考えていると、ガッと肩に腕を回し顔を近づけて来た。
「今晩、キレイどころの居る店に行くがどうだ?」
「⋯⋯⋯⋯キレイどころの居る店とは?」
念の為に聞き返した。
いや、そんな⋯⋯。えぇー?、俺まだ17ですしぃ。
俺の予想が当たってるなら。⋯⋯そういう店だよね?
「そういう店だ」
そういう店だそうだ。
「いや⋯⋯、でも俺にはアナが⋯⋯」
「バッカ。お前経験あるのか?無いだろ?失敗したらどうすんだ?なーに、予行練習だと思えばいいんだよ。初めてで失敗したら気まずいだろ~?言わなけれりゃ、バレやしないって」
⋯⋯っく。一理ある、のか?わからん。確かに初めてで失敗する話なんてよく聞く。ぐぬぬ⋯⋯。
悩む俺をマルコさんが一押ししてくる。
「金なら俺が出してやる。儲かったからな。それに、行ってみて気分が乗らなきゃ帰ればいいんだ。そうだろ?」
⋯⋯なるほど?マルコさんの好意を、無下にするのも悪いともとれるな。
行ってみて気分が乗らなければ帰ればいいんだし、それなら⋯⋯。いい⋯⋯か?
悩む俺にマルコさんが告げる。
「夜、迎えに来るからな。その時までに結論出してりゃいいさ。それじゃ、今夜⋯⋯な」
そのままマルコさんは帰って行った。
⋯⋯くそっ。俺はどうしたら。
正直、興味が無いと言えばうそになる。
アナに抱き着かれた時とか良い匂いするし、体柔らかいしで、抑えるのが大変なんだ。
それならいっそ、ココで経験して余裕を持つべきか⋯⋯。
⋯⋯夜迎えに来るんだっけか、それまでに結論を出しておこう。
夜になった。
あれ?昼間の記憶が⋯⋯。
いや、何かしらの作業はしていた記憶は有るが全然覚えていない。
そして俺は宿の外でマルコさんを待っていた。
結論、行ってみて気分が乗らないという事にして帰ろう作戦を決行する事にした。
見るだけなら問題無い訳で、まぁね?そういう世界も一度は見ておこうっていう奴よ。
⋯⋯遅いな。当たりはすっかり暗くなっていた。
時計なんて物はないので、今が何時かもわからないが、結構待っている気がする。
「おー、悪いな。結構待たせちまったか?」
「全然、今来たところです」
やっと来たマルコさんに、俺は待ってないアピールをした。
「そうなのか?なら、早速行くか、着いてきな!」
「はい!」
今日のマルコさんの背中は、大きく見えた。
街を2人で歩いていく。
普段足を踏み入れないエリアに向かっていた。
俺が普段行く所は、市場か冒険者ギルドと宿屋の周辺だしな。
こういう所は初めてだ、心なしかガラの悪い人達が増えてきた気がする。
マルコさんはどんどん進んでいく。
おぉ、次第に布の面積の少ない女性が増えて来た。
そういう店が多いエリアに入ったようだ。
ええ?ちょっ俺には刺激が⋯⋯。
元の世界で映像を見たりはしたが、実物となると話が違う。
手の届かない映像と違って、こっちは手を伸ばせば触れる距離だ。
そんな中をマルコさんがどんどん進んでいく。
⋯⋯すごい。見向きもしていない。これが⋯⋯大人の男か!
そしてマルコさんは一つの店の前で立ち止まり、俺に向き直り言う。
「着いたぞ。此処が俺のおすすめの店だ」
「こ、ここが!」
俺は息を飲む。ココがそういう店!
初めて見る、そういう店はオーラを放っていた。
「よー、来たぞ~」
マルコさんが軽いノリであいさつをした。
それに対して、貫禄のある女の人が答える。
「あら、マルコじゃないの。
久しぶりね、聞いたわよ大物狩ったんだって?」
「ああ、今日は楽しませてもらうぞ~。
それと今日は、後輩を連れて来たからな、サービスしてやってくれないか?」
「そうして欲しいならちゃんと金を払いな。で、その後輩ってのは後ろの坊や?」
女の人はマルコさんから、覗く様に俺を見た。
ん?何で顔をしかめるんだ?。
「あー、マルコ。悪いが、その坊やはうちじゃ相手出来ないよ」
「え?!」
「は?なんだそりゃ」
俺とマルコさんは同時に驚いた。
「うーん。ここいらの店じゃ黒髪の男は断る様にって、元締めから指示が来ていてね。悪いけど、坊やは相手出来ないよ」
⋯⋯え?なにそれ、俺何もしてないのに。
え?黒髪だから?なにそれ⋯⋯。
⋯⋯いや、そうか。
アナもこういう気持ちだったのか。
髪の色だけで排除される人間の気持ちを俺は、今やっと感じる事が出来た。
ああ、クソ。こんな理由で知るなんて。
明日から、アナにどんな顔をして会えばいいんだか⋯⋯。
あからさまにテンションを落としている俺を、マルコさんはフォローする様に言った。
「いや、コイツは問題とか起こさない奴なんだよ。どうにかならないか?」
「ならないよ。あたしらも死にたくないんでね。これ以上ごねるなら。マルコ、あんたも出禁だよ」
そう告げられたマルコさんの判断は早かった。
「すまない、ソラ。俺に出来る事はこれ以上無さそうだ。今日はもう帰えりな、後の話は俺がつけておく」
⋯⋯コイツ、俺を見捨てたな?いや、まぁ良いんだが。悲しみが吹き飛んだわ。
素直に帰るか。
多分俺の知らない所で黒髪の奴が何かやらかしたんだろう。
まぁ、もともと気分が乗らないってことで帰る予定でしたし?予定調和ですから何も問題ないっすね。ホントニ。
なので俺は言う。
「マルコさん、俺元々帰るつもりでしたから。これで失礼しますね」
そう言って直ぐに踵を返しその場を駆け出す。⋯⋯クソゥ!
俺はそのまま宿屋まで走り。
異世界に来て初めて枕を濡らした。




