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異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】  作者: ノエ丸
ダンジョンソロアタック編

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336.寂しがり屋

 目を覚ますと、見慣れない光景が広がっていた。


 ……ああ、そうか。ここはダンジョンだったな。

 俺は〈収納魔法(アイテムボックス)〉にロックタートルの甲羅をしまい、周囲を確認する。


 どうやら魔物は侵入していないようだ。

 何も起きなかった事に安堵しつつも、今の状況を改めて認識する。


 一日経ったので、もしかしたらという淡い期待を抱きながらクリスタルに手を触れる。


「…………ダメか」


 昨日と同じく、やはりうんともすんともいわない。

 クリスタルでの移動は諦めて、下に降りるしかなさそうだな。

 

 その後簡単な食事を摂り、身支度を整えた後、指輪に魔力を込め――俺はまだ生きていると伝える。


 ――返事はなし。

 多分寝てるんだろう。

 外が見えないから時間の感覚がわからないんだよな……もしかしたら外はまだ真夜中かもしれない。

 時計でもあればいいんだが、生憎とそんな物は持ち合わせていない。

 

 とりあえず日にちを数える為に、適当に小石を拾い〈収納魔法(アイテムボックス)〉へ入れておく。

 寝て起きたら一日って事で、石の数を増やしていこう。


 石が二つ、今日で二日目だ。



    ◇


 ダンジョンの中は依然として薄暗い。

 忍びの里に向かう時の洞窟の様に、明るい鉱石でもあればもう少しマシなんだろうけど……。

 無い物ねだりをしても仕方がない。


 ダンジョン――仮に十二階層目ということにしておこう。


 慎重に進みながら、見つけた魔物はすぐに倒さず、岩陰に隠れて観察する。


 どうやら目はあるが、あまり機能しているように見えない。

 当ても無くウロウロしており、時折壁にぶつかったりもしている。

 なんか……よくわからん生態をしているな。

 もしかして地上の魔物がここに生えてきているのか?

 ダンジョンに適応した個体が必ずしもいるわけじゃないのかもしれない。


 ……控えめに言って意味わからん。

 ダンジョンに関しては謎が多いというが、ダンジョン内の環境に適応できていない魔物が生えてくるのはどうかと思う。

 まあ、だからといって強い魔物が生えてこられても困るんだが……。

 何事もバランスが大事だよねっていう。


 試しに近付いてもみたが、やはり俺の姿が見えていない様子だった。

 それならそれで、遠慮なくやらせてもらうだけなんだが……。


 ダンジョンを進みながら、反応の悪い個体を潰して回った。

 反応が悪いとはいえ、かなり硬い。

 魔法を何発も当ててやっと倒せるレベルだ。

剣で斬りつけてみたが、切れはするがどうも切れ味が悪い。

 このダンジョンを出る頃には、また剣を壊してしまう可能性がある。


 ……魔力は温存したいが、背に腹は代えられないな。

 基本は魔法を主体にして、問題なく斬れそうなら剣で――という感じでいこう。



     ◇


 き、きつい……なんでこんなに硬いんだよ……。

 出会う魔物は軒並み俺の魔法が効きづらい。

 効いてはいるが、十階層まで出てきていた魔物たちよりも、格段に強くなっている。


 今のところ、怪我はしていないがあやうい場面はいくらでもあった。

 仮にどんどん魔物の強さが増していくのなら……今以上に強くならなければいけない。



 その後、危ない場面はいくつもあったが、何とか切り抜け下へ降りる階段を見つけた。



    ◇


 俺がダンジョン内で転移してから、おそらく一週間が経過した。

 〈収納魔法(アイテムボックス)〉内の石が七個になっているので、多分それくらいは経過しているはずだ。

 眠った回数=一日として記録しているので正確ではないが、別にこだわる必要性もないのでこのままでいい。


 そして今、俺は十五階層へと続く階段の中ほど――クリスタルの輝く場所で休憩をとっている。


 このダンジョン……いよいよもって、訳のわからない代物に思えてきた。


 十三階層は洞窟ではなく、天井も床も石造りのフロアとなり、現れる魔物たちもこれまでとはガラリと様変わりしていた。

 装甲が薄く動きが早い。

 しかも基本的に複数体で現れるため、魔法よりも剣を振って乗りきった。


 十四階層は自分の目と頭を疑った。

 階段を降りた瞬間から、目の前には森が拡がっていたからだ。

 天井もまるでそこに空があるかの様に思えた。


 しかも広い。

 結局下へ降りる階段を見つけるのに、三日も掛かった。

 魔物はワイルドボアに似たやつしかいなかったのが唯一の救いだったし、肉と見覚えのある野菜や果物が森から得られたのはデカイ。


 今日はほんの少しだけ夕食を豪華に出来そうだ……。

 飯を食べたら明日に備えて寝よう。


 不意に指輪が淡い光を放った。


 まだ一週間しか離れていないのに、随分と懐かしい気がする。

 光が消え――再度魔力を込める。


 早く皆に会いたいな……。


 昔は一人でも平気だったんだけどな……随分と寂しがり屋になったもんだ。


 翼や他の友達がいても夜になれば、皆それぞれの家族が待つ家へ帰ってしまう。


 ダメだな……考えがネガティブになってしまう。

 自分で思っている以上に、今の生活に満足しているんだろうな。


 ――あ、ほんとにダメなやつだ。

 メンタルが死ぬ。

 皆に会いたくて仕方がない。

 さっさとこのダンジョンを攻略して、シャロ、アナ、マリアの元に帰ろう。


 俺はロックタートルの甲羅の中に入り、眠りについた。



    ◇


 寝て起きたら少しはメンタルが回復した。

 

 ……よし! 今日も張り切ってダンジョンを攻略だ!!!!


 無理矢理にでも空元気に振る舞い、俺は十五階層へと続く階段を下りた。




 降りた先に待ち受けていたのは、広いフロアが一つ。



 そして、その中央に佇むのは――。



 巨大なヘビの魔物だった。

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