表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】  作者: ノエ丸
ダンジョンソロアタック編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

333/345

329.買い出し終了……!

 三人と合流した俺とアウラお嬢様は市場を歩き、ダンジョンへ潜るための準備を進めた。


「ソラ、あれ買ってー」

「もう盾持ってるだろ。ダメです」

「えー見た目がいいんだよー」


 シャロが指差す露天には盾が並べられていた。

 どう見ても実用性皆無な装飾が施されているので、おそらく観賞用の盾なのだろう。

 値段は……高ぇな。無理無理。


「あら、これが欲しいの? (わたくし)が買って差し上げますわ」

「え!? いいんですかー?」

「ええもちろん。ダンジョンでは貴女が前に出て守ってくださるのよね? その褒美とでも思ってくださいまし」


 アウラお嬢様は盾を露天から取ると、そのままシャロに盾を手渡して歩き出した。

 俺と店主が顔を見合わせ、店主が俺に向けて手を差し出した。

 ……あれ、お金は……あっ、俺が払う感じなの? 嘘でしょ?


「あ、アウラお嬢様! 代金を支払い忘れてます!」


 俺の言葉に足を止めると、不思議そうな顔をして言った。


「代金は後ほどセバスが払いますわよ?」


 クソっ! 考えが貴族と同じだ……!

 ……この人、貴族だったわ。

 俺は市場のシステムをアウラお嬢様に説明し、代金をこの場で支払う必要があると伝えた。


「あら、そうでしたの。ではこちらで足りますわよね?」


 そう言って〈収納魔法(アイテムボックス)〉から金貨を取り出し、店主に渡そうとした。待て待て待てー!

 再度アウラお嬢様を止め、渡す額が多すぎると伝えた。


「……面倒ね。生憎これより下の硬貨は持ち合わせておりませんのよ」


 さすが貴族だ。

 最低額が金貨とは恐れ入った。

 そんなことよりも、店主が「早く払えよ」という顔をしている……仕方ないか。


「ここは俺が立て替えますので、後で払ってくださいね」

「では後程アリシアに持って行かせますので、受け取るように」

「わかりましたよ……」


 俺は代金を店主に渡し、軽くなった財布を〈収納魔法(アイテムボックス)〉へと仕舞った。

 ちなみにアリシアとは、メイド喫茶アネモネを運営しているメイド長の名前だ。

 まーた睨まれると思うと気が重く……ならないな。俺はいたってノーマルだけど、最近ちょっと癖になってきている気がする。



 ◇


 買い出しも無事に終わ……っていないな。

 アナとアウラお嬢様が度々揉めるので、なかなか進まない。

 クマさんの指示した食材は買えたが、それ以外の物が買えていない。

 特にポーション類に関しては、アナが笑顔で虹色に光るポーションを買ってきた。


「売れ残りが安くなってたから全部買い占めておいたよ。ソラ、これ好きでしょ?」


 全然好きじゃないし、むしろ見たくもないが……アナの笑顔の前では、俺は首を縦に振るしかなかった。


「超好きー、ありがとー」


 俺は虹色に光る瓶を〈収納魔法(アイテムボックス)〉の奥底に仕舞った。

 このポーションは味も七色に変わるせいで飲みたくないんだよな。

 トリコに出てくる虹の実みたいに、旨い方向に持っていけなかったのだろうか……。

 それはそうとベジタブルスカイで、トリコが今まで食べてきた野菜の事を「腐っている」なんて乏していたのはいただけないよね、食材への感謝はどこ行ったんだっていう。

 俺もこのポーションを飲んだ時、今まで飲んだポーションのありがたみを知ったよ。

 傷さえ治れば味なんてどうでもいいと思っていたが、味は重要な要素の一つだと気付けた。

 薬膳餅の小松の気持ちが何となくわかった気がした。


 ……何の話だったっけ。

 そうそう、アナとアウラお嬢様の話だったな。

 正直この二人は仲が良いのか悪いのか、よくわからん。

 さっきまでバチバチにやり合ってたと思ったら、次の店では普通に接している。

 わからん……俺には女子の気持ちが分からない……。

 とりあえず、残りは消耗品くらいだしこのまま何事もなければいいのだが……。


 俺のそんな思いとは裏腹に、俺たちに忍び寄る影が――。



 誰も来ねえや。

 こういう時に限って、この状況を打破してくれる人物が現れない。

 心なしか俺たちを避けているようにすら思える。

 顔見知りの冒険者が居たので近寄ってみたが、「オレのそばに近寄るなああーッ」と叫んで逃げた。お前はディアボロか?

 まあいいさ、さっさと買い物を済ませよう。


 結局俺たちの買い物は日が暮れるまで続いた。



 ◇


 買い物を終え、帰宅した俺たちは、アウラお嬢様と共に食卓を囲んでいた。


 部屋の中にはカレーの良い匂いがした。

 クマさんが寸胴鍋に並々と入ったカレーを持ってくると、山盛りの米が盛られた皿を手に、シャロとマリアとボスが沸き立った。

 順番にルーをかけると、食事を開始した。


「やっぱりコレ、うめぇですわぁ……!」


 アウラお嬢様の言葉が壊れた。

 上品にカレーライスを食べる仕草はまるで、絵画から抜け出してきたと錯覚するほどのものだったが、一口食べるごとに「うめぇですわぁ」と言っている。


 そうして食べ進める中、アナが「トイレ」と言って席を立つと――。


「シェフをお呼びになって」


 アウラお嬢様は、おもむろにクマさんを呼び出した。

 片付けをしていたクマさんが顔を出すと、


「もし宜しければ、我が家でその腕を奮ってみません?」

「何度も言うが、断る。食いたいならいつでも来るといい。歓迎はするぞ」

「……晩餐会を開く際は、シェフとしてお呼びしても?」

「そういうのはアレックスに頼むといい。何度頼まれようと、オレは貴族連中に媚を売る気はないんでな」


 そう言ってクマさんはキッチンに戻って行った。

 雫と旅をしていた時に、悪徳貴族を殺し回っていたしな。

 クマさんは貴族に対して割と冷めた態度をとっているようだ。


「貴方からも、何か言っていただけないかしら」


 アウラお嬢様は俺を見て、助け舟を出すよう言ってきた。

 まあ、ぶっちゃけ無理だよね。

 俺もクマさんの料理を手放す気はないので、素直に答えた。


「無理ですよ。ああいうクマさんなんで、諦めてください。他のことなら力になりますから」

「……そうですか。では代わりに今度、我が家が主催する舞踏会にパートナーとして参加してもらいますわね」

「え、なんで――」

「貴方自身の口から、力を貸すと言いましたわよね?」

「そ、それとこれとでは話が違うんじゃ……」

「何も変わりませんわよ。日程は追って伝えますわ」


 なんかとんでもないことを約束されてしまった……。


「ただいま……どうしたの?」


 戻ってきたアナは場の空気を読み、怪訝な顔をした。


「ソラがアウラ様のパートナーとして、舞踏会に出るんだってー」

「……………………は?」

「あらあら、もうバレてしまいましたわね」


 サラッとシャロが舞踏会の事をバラすと、アナの目から光が消え、首を傾げながらアウラお嬢様を無言で見つめた。

 その様子を見て、可笑しそうに笑うアウラお嬢様。

 マリアと共におかわりを求め、キッチンへ向かうシャロとボス。


「表に出ろ」

「ええ、宜しくてよ。食後の運動にはなるかしら?」

「は? 殺す」


 俺が制止する間もなく、二人は家の窓から外へ飛び出して行った。


 玄関使えよ。


 これで今日何度目だろうか……。

 さすがにお互い本気の戦いはしないが、そのおかげで今日の買い出しは時間が掛かった。

 気が済んだら戻ってくるか。



 そう思っていたが――。


 ドゴンッ!! と外から大きな音が響いた。

 まさかと思い、俺はすぐに外へ飛び出し、二人の名を叫んだ――!


「アナ! アウラお嬢様!」


 玄関から飛び出した俺の目の前には、猫のように首の後ろを掴まれた二人の姿と、それを持つママの姿があった。


「あっ……、二人が喧嘩を始めたから止めてくれたの? そっかー、さすがママ。ありがとうー」


 俺の目の前に気を失った二人を下ろすと、ママは隣の敷地へ戻って行った。


「おやすみママー!」


 俺が手を振ると、ママも手を振り返してくれた。

 ……さて、二人を部屋まで運ぶか。

 俺は家の中に向かって声を掛けた。


「シャロ、マリアー、ちょっと手伝ってくれー!」


 こうして俺たちの夜は更けていった。

お嬢様言葉ムズいんで、砕けた感じにしたいですがタイミングが中々ないっすね。


あとこの世界の硬貨は銅貨、銀貨、金貨の三種類だけですし、金貨一枚いくらとかの細かい値段の設定はしません。物語的に重要じゃないので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
流石ママ…!!ママすごい!ママやさしい!
ママ超優しい でもよく考えなくても今の状態ってママにとっても安らげる時間だろうしね。子供等が怪我しないようにする位の事はするよね。
おそらく不意打ち且つ殺気無しとは言え、 その二人の意識を刈り取るとは、さすママすぎるぜ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ