表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】  作者: ノエ丸
厄災到来編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

312/344

308.目指すはママ

 

 ……おいおいおいおい。この爺さん今なんて言った?

 緑の魔物が近くに居座っている? そう言ったのか?

「シャロ。今の聞いたか?」

「え、うん。緑の魔物が近くに居るんだってねー」


 緑の魔物――それはこの世界に存在している元転移者の成れの果て。

 正確には『深淵の使徒・マザーフォレスト』。


 この異世界に来て出来た、俺の第二のママである。


 え? 説明になってない? なってるでしょ。俺の第二のママだよ。

 それ以上でもそれ以下でもない、俺の! 第二のママだ!!!!

 証明終了、Q.E.D.である。


 こうしちゃいられない。

 俺は一刻も早くママに会いたい気持ちを抑えられそうにない。バブみでおぎゃりたいのだ。


 踵を返して、村の入口へ向かおうとした時――ガシッと腕を掴まれた。

「なんだよシャロ」

「どこ行く気ー?」

「ママに会いに行くんだが」

「明日でもよくなーい?」

「だめ?」

「だーめー」

 ダメらしい。

 ダメなら仕方がない、今日は休んで明日の朝一……日の出前に出発しよう。

 そうと決まればやることは一つだ。


「お前ら! 飯食ったら寝るぞ!!」


 ◇


 なんか知らんが起きたら縄で縛られてた。

 な、なんでだ?! そんなプレイをした記憶はないぞ!?


 馬車の中でビタンビタンと跳ねているとドアが開き、シャロが顔を出した。

「起きたみたいだねー。ソラさー、朝一に一人で行く気だったでしょー? 皆が起きるまでそのままでいてね」

 そう言うと、バタンと扉を閉められた。


 くそぅ、シャロには見抜かれていたようだ。バレてしまったものは仕方がない。大人しく全員が揃うまで待つとしよう。


 なーんて言うと思ったか! おらっ〈深淵の砲弾(アビス・シェル)〉!!

 撃ち出した漆黒の砲弾を最小範囲で展開し、ダメージ判定のある端っこギリギリで当てると、縄の一部だけを消滅させた。

 よしっ、土壇場での俺の底力を甘く見たシャロが悪い。


 馬車の窓からササっと抜け出すと――。


「どこへ行かれるのですか~?」

 マリアが居た。

 俺は馬車の中へ戻り、大人しくすることにした。



 皆で朝食を食べ、爺さんに別れを告げる。

「それじゃあ俺たちは、もう行きますね」

「うむ。一日だけじゃったが、久しぶりに来たのがお前さん方で楽しかったわい。何時でも来なさい、歓迎しよう」

「はい!」

 爺さんと握手を交し、歩き出す。


 さあ、行こうか――ママの所へ!


 ◇


 馬車で街道まで戻り、モルソパへと歩みを進める。


 ママに会うのは久しぶりだな。元気にしているだろうか……。

 そんな事を考えていると、隣に座るアナが俺の袖を引いた。

「ソラ……一応確認だけど、本当に危険はない?」

「もちろん。だって俺のママだからな」

 答えになっていない気もするが、仕方ない。だって俺のママだもの。

 俺の言葉を聞いても、アナはどこか不安そうだった。

「気になることでもあるのか?」

「気になるっていうか……戦いになったら、私じゃ勝てないと思うから……」


 おいおい、なんで俺たちがママと戦うと思ってるんだ? ああ、そうか。前回はアナがいなかったな。

 あの時一緒にいたのはシャロとマリアだけで、アナには話だけを聞かせたんだったか。

 ……そう考えると、今度アナをママに会わせるのか。

 な、なんか緊張してきたぞ。

 別に俺たちが明確にそういう間柄ってわけじゃないんだが。

 まるで実家に彼女を連れてくるみたいな緊張感がある……連れて来た事ないけど。

 一応ママの事を、アナにはもう一度知っておいてもらう必要があるな。


「アナ。一応もう一度言っておくが……ママは俺と同じ異世界から来た人間だ」

 そう……ママは俺と同じ日本から来た異世界人だ。

 日本に自分の子供を残し、この世界に召喚された女性。

 俺は夢の中で――ママの記憶を見たから、その悲しみや絶望を知っている。


 もう二度とその手に抱く事のない我が子を探して、今もこの世界を彷徨っている。


 だがそんな中、俺はママと出逢った。

 なぜか赤ちゃん判定をくらった俺は、ママに抱き上げられ、しばらくの間バブらせてもらった。

 その結果おぎゃったのだ。

 この人は俺のもう一人の母親なのだと。

 そう本能で感じた。

 どこぞの赤いヤツとは違い、俺の母になってくれた女性だ。


 そして俺はママの加護を得た。

「深淵」という名の加護。

 それにより俺の魔法が、威力マシマシ殺意チョモランマになった。

 たぶん、俺を心配してそうしてくれたんだと思う。

 ……なんか説明が長くなったが、今の一言でアナには伝わっただろう。


「……ソラも死んじゃったらあんな風になるの?」

「多分、な」

 この世界、何故か転移者が死ぬと「使徒」という存在になる。

 たしか雫が確認しただけで五体の使徒が居るそうだ。

 今後ママ以外に出会う事はないだろう。

 聞いた感じ全員男っぽいし。

 俺から会いに行く事もないだろう。


 そんなわけで、俺も死んだら使徒になる。

 たぶんコレは避けられない宿命みたいなものだろう。

 それなら、死ぬその瞬間まで面白おかしく生きぬこうと思う。

 俺は言った。

「大丈夫だ。もしも俺が先に死んでも……アナたちを守る使徒になるさ。多分だけど、きっとそうすると思う」


 何となくだが、そんな気がする。

 出来たら、ママたちも使徒という呪縛から解放してあげたいんだよな。


 雫のように……俺の魔法で魂を消滅出来たのなら……きっと。


 アナは何も答えず、俺に体を寄せた。

 それがアナなりの答えなのだろう。


 ◇


 街道を進む俺に、ある物が目に入った。

 馬車を止め、確認する。


「この先、緑の魔物の生息地」


 そう書かれた看板が立っていた。


 ……そうか、いよいよママに会えるんだな。

 俺は隣に居るアナの手を握り、声を掛けた。

「この先にママが居る。アナ、一緒に来てくれるか?」

 握った手を握り返し――アナは答えた。

「うん。私はソラとずっと一緒にいたいから……行くよ――、緑の魔物の元へ」

「ああ……!」


 俺たちはママに会うために、馬車を走らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やっぱり将来の嫁をちゃんとママに紹介しておかないとだよね
ママへの無条件の愛が重いwww いやまぁ事情全部知ってるなら気持ちはわかるけど。 ソラが寿命を迎える前に一緒につれて行ってあげて欲しいね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ