表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/306

3.異世界の街は初めて入るので。

 馬車に揺られながら街道を進んでいると。

 カールさん達の目指す街[ドレスラード]が見えてきた。


 道中教えて貰った事だが。

 今居る、国の名前が[アガーレムヴ王国]というらしい。


[アガーレムヴ王国]には王都の他に11の大きな街が有り。それぞれ6家の貴族が治める。

 他にも街があり貴族が治めているが、国を代表する街が王都+6家の街との事だ。

[ドレスラード]はそのうちの1つであり。代々風の属性を持つ貴族が治める街だという。


 遠目からでも分かる位大きな石壁が街をグルリと取り囲んでおり。周りには広大な畑が広がっていた。


 そのまま街道を進み。

 街の入り口までやってきた。


 石壁を見上げると。高さは15メートル位ありそうな壁が聳え立っていた。適当に数字を思い浮かべただけなので当たっているかはわからないが。それくらい大きな壁だ。


 大きな門の前には鎧を着た人間が4人居り。出入りしている人をチェックしていた。


 どうやら冒険者、商人、その他で列が分かれているらしく。俺達は商人の列に並び順番を待った。


 これまた街道の途中で教えてもらっていた事だが。街に住む人は全員この水晶に自分の魔力の波長を登録する決まりとなっている。

 魔力の波長とは簡単に言えば指紋の様な物で。一人一人違うそうで、どんな手段を使っても変える事や消すことが出来ないという。


 他の街とも魔法で同期しており。

 指名手配されている者は赤く。

 過去に犯罪を犯し釈放された者は黄。

 そういった過去が無い者は青。


 青の場合はそのまま通ることができる。


 黄の場合は街に来た目的や過去の罪状を調べた上で入れるかどうかを決める。


 赤の場合は色の強弱があるらしく。指名手配の内容で度合いが変わるという。

 本人が知らぬうちに手配されている場合もある為。色の強弱で待機している兵が捕獲し、牢屋に一旦ぶち込んでから調べるという。因みに、一番赤く光ると問答無用で処される。


 もっとも一番赤く光るのは有名な指名手配犯位なので。そんな奴が素直に正面から来る事は無い為。一番赤く光ることは数える程度しか起きていないらしい。


 10分程待ち、俺達の番になった。

 カールさんから順番に手をかざしていき青く輝いていく。

 この世界に来たばかりなので赤や黄にはならないだろう。


 5人の真似をして俺も手をかざすと。

 白く輝きだした。

 カールさん達5人と門番が驚いていた。


「「「「「ま、街にも入ったことが無いのか」」」」」


 カールさん達5人がなぜかハモってそう呟いたので。笑ってその場を誤魔化した。


「ヘヘヘ⋯⋯」


 当然そのまま街に入れるわけもなく。


 俺は別室へと連れていかれた。


 カールさん達が事情を門番に説明をしてくれたので、水晶へ自分の魔力の波長を登録することになった。

 その最中に、俺自身からも登録してない理由を聞かれたので道中考えた設定通りに。山奥で暮らしていたので外界と関わりがなかったと告げると。そういう事もあるかと納得された。一定数そういう奴らが居るのか⋯⋯。


 無事に登録を終えて解放され。外に出るとカールさん達が待っていてくれた。


「やっと来たか。それじゃカールさん。俺達はこれで依頼完了ということで失礼しますね」

 マルコさんがカールさんにそう告げると、依頼完了のサインをもらい自分たちの荷物をまとめ始めた。


「おうソラ。冒険者になるならギルドに登録しろよ!」

「またな」

「ギルドの建物はあの建物だから間違うなよ」

「困ったことが在ったら相談に乗るからな」


「短い間ですがお世話になりました」

 そう告げシルバーファングの面々と別れ。そのままカールさんの店へと向かった。


 カールさんのお店は中規模の店で何かの専門店ではなく色々な品を扱っていた。

 約束通り着ていた制服と商品を交換することにした。


 絹の服上下×2と革の胸当て。革の小手に脛当てといった安価な防具に。木に魔物の革を貼った木盾。

 武器は片手で扱えるショートソードを選んだ。


 選んだ商品を差し引いた分の服の代金も貰えたし。カバンの中に入っていた筆記用具もこの世界にはない物なので。それなりの値段で売れた。


 カールさん曰く、新米冒険者らしい恰好とのこと。


 これ以上の装備を選ぶと今後の生活費も無くなってしまう為。この辺が良いだろう。頑張ってもっと良い装備を揃えられる様になろう。そう心に決めた。


「ありがとうございました」

「またのお越しをお待ちしております」

 カールさんに礼を述べ。俺は店を後にし、冒険者ギルドを目指すことにした。


 ◇


 冒険者ギルドへ向かう道中。街を眺めながら歩いた。 

 見た目はファンタジーとかでよくある中世ヨーロッパの様な木造造りの建物が多くあった。

 目的地である冒険者ギルドの建物も木製で、壁に立て掛けている旗には冒険者ギルドのマークである鳥が羽ばたいてる姿が描かれてた。自由に飛び立て的な意味なのかな?


 扉を開け中に入ると、そこには様々な冒険者が居た。


 フルプレートの鎧を着ていたり。肌の露出の多い服を着ている人や獣人にエルフ。ドワーフなど、まさに異世界ならではの人種があふれていた。


 おお~! これぞ異世界!

 そんな事を思いながら。扉の前でその光景を見ていた俺に。


 声を掛けてきた人物がいた。


「よお。やっと来たか」

 シルバーファングのリーダーマルコさんだ。

 俺がカールさんのところで装備を整えて、ギルドに来ると分かっていたので待っていてくれたとの事。


 初めて会った異世界人が皆良い人過ぎて、俺は軽く感動していた。

 ちなみに他の3人は家族の元へ帰還の報告に行ったと。マルコさんが教えてくれた。


「よし! じゃあさっそく冒険者の登録をしようじゃないか。付いてきな」

「はい。お願いします!」

 俺は素直にマルコさんの後を着いて行き。受付の様なカウンターに向かった。


「ようアイリ。新人を連れて来たんだが面倒見てやってくれないか?」

 受付の所に居る女性にマルコさんが気軽に話しかける。


 金髪でロングヘアーの奇麗な女性が居た。この女性はアイリというらしい。日本にはいない系統の顔立ちだ。


「あらマルコさん。珍しいですね。新人さんの面倒を見るなんて」


「そうだ。山育ちで生活魔法すら覚えてなかった常識知らずだからな。色々と教えてやってくれ!」

 ハッハッハと笑いながら俺の背中を叩くと。アイリさんに俺の事を託しそのままどこかへ行ってしまった。面倒を見るとは⋯⋯。


「初めまして。ソラといいます。冒険者に登録したいのですが。試験とかあったりするんですか?」

 そう告げると。アイリさんは微笑みながら応えてくれた。


「試験はありませんよ。登録自体は誰でも出来ますが。いくつか注意事項を守ってもらい、ギルドや街の不利益になる行動をとらなければ大丈夫ですよ」

 おお! ならさっそく登録をしておこう。


「それなら登録します!」

 俺は冒険者になる意思が有る事を告げると。アイリさんが説明を始めた。


「はい。では先ず、この紙にお名前と職業をお書きください。その後に魔力の属性を診断いたしますが。事前にわかってる場合は自己申告でも構いませんよ」


 言われた通り。取り合えず名前を書いてみた。

 日本語の時と同じ感じで書いてみたが不思議と、この世界の文字に変換されて書くことが出来た。良かった。読み書きも出来ない子にならずに済んだ⋯⋯。


 職業に関しては新人の為。後から追加しても問題ないとの事。

 属性に関しては。調べた事が無いのでわからないと伝える。


「それでは。測定する魔道具を取ってきますので少々お待ち下さいね」

 一度アイリさんは裏に引っ込み。水晶を持って戻って来た。


 此処でも水晶が出てくるのか。水晶に手をかざすと。


 水晶は。



 黒く光り出した。




 それは光さえも飲み込むような黒。

 まるでそこだけ空間が抜け落ちたように、ポッカリと黒い穴が空いている様だった。


 ⋯⋯異世界に来たんだし、光属性とか全属性とかそんな感じの展開じゃないの? 俺はそんなことを考えていた。


「他の色は見えない⋯⋯ですね。属性は闇だけですね。珍しい。私初めて見ました」


 どうやら俺の魔力は闇属性だった様だ。


「闇ですか⋯⋯。迫害されたりしませんよね?」

「大丈夫ですよ。珍しいというだけで。闇属性を持っている冒険者の方は普通にいますから」

「そうですか」

 ひとまず胸を撫でおろした。


「他にはどんな属性があるんですか?」

 そうアイリさんに質問してみると。


「そうですね。基本の属性となるのは[火水風土光闇]の6つですね。大抵の人は火水風土の中から2種類の属性を持っている方が多いですね」

「という事は光と闇はレアなんですね?」

「はい。光属性は教会に勤める方に多い傾向ですね。光+他の属性といった感じですね。闇属性の方も同じように、他の属性を持っている方がほとんどですね」


 基本は2種類の属性で、色々な組み合わせがある感じか。


「なので1種類の属性に特化している方や。3種類以上属性を保有している方というのは珍しいんですよ」

「なるほど⋯⋯」

 俺は闇の力で無双するしかないようだな⋯⋯。少し楽しくなってきた!


「それでは⋯⋯。お名前はソラ。職業は未定。属性は闇。この内容で冒険者登録を行いますか?」

「はい。それでお願いします」

 属性も分かったので登録を進めることにした。


「⋯⋯はい! では登録はこれで以上となります。初めての登録という事ですので。一番下の[(ブロンズ)]ランクからのスタートとなります」


 一枚のカードを手渡され。アイリさんよりランクの説明を受けた。


「ランクは一番下から。[(ブロンズ)]。[(アイアン)]。[(シルバー)]。[(ゴールド)]。[白金(プラチナ)]の順でランクが高くなっていきます。ソラさんは登録したてなので、一番下の[(ブロンズ)]ランクから始めることになりますので。頑張ってくださいね」


 手渡さたカードを掲げ。おぉっと声を漏らしっていると。ガラの悪い男達が寄って来た。


「坊主。冒険者になったらまずすることがあるよな?」

「そうだぜ。ちょっと面貸しな~」

「へっへっへ。な~に悪いようにはしねぇよ」


 筋肉モリモリマッチョマンが3人寄って来た。


 これが新米冒険者への洗礼というやつか⋯⋯。アイリさんへ助けを求めようとするも、さっさと別の作業へと移っていった。


 Oh⋯⋯。


 ガタイのいい3人の冒険者に囲まれ。壁際まで連れていかれた。

 俺はチワワの様に震えるしかなかった。


「此処が[(ブロンズ)]ランクの依頼が掲示されている掲示板だ」

「最初は街の雑用や薬草採取なんかおすすめだぜ~」

「へっへっへ。あんまり欲を出して実力に見合わない依頼を受けると大変だから気を付けな」


 めっちゃ親切な人達だった。


 その後冒険者ギルド内ツアーに連れまわされた。


「あそこが[(アイアン)]ランク以降の依頼が貼られる所だ。

 坊主も早くそこで依頼を受けれるようになれよ?」

「うす」


「此処が訓練所だ~。大抵誰かしら暇な奴が戦闘訓練してるから色々教わりな~。俺達も暇な時は相手してやるぜ~」

「勉強させていただきます!」


「へっへっへ。此処がギルド内にある無料で泊まれる部屋だ。大部屋で雑魚寝するだけの部屋だから金が無い時はここを利用しな」

「分かりました!」


 その後も。ココが図書館。ココがトイレ。といった感じでギルド内の説明をしてくれた。


 見た目に反して良い人達だった。

 恐らくアイリさんもそのことを知っていたから任せたのだろう。せめて一言位は欲しい。


 先輩方に別れを告げ冒険者ギルドを後にする。


 今日の宿を決めなければならない。流石にギルドに泊るのは不安があるしな。


 日が暮れるまでまだ時間はあるし街を散策しながら探すことにした。

 街をブラブラ歩いてると。またも声を掛けられた。


「おっ。ソラじゃないか。登録は終わったのか?」

 振り返り声の主を確認すると。鎧を脱いで私服姿のマルコさんがそこにいた。


「なにしてるんだ?」

「今日泊る所を探してるんですよ」

 宿屋を探していることを告げる。


「宿屋を探してる?ならおすすめの所があるぞ。ついてきな!」

 快諾してくれたマルコさんの後を付いていく。


「着いたぞ。ココがおすすめの[キャリー亭]だ!」

 移動の最中、ギルドであった事を話していると。すぐに宿屋へと辿り着いた。事前にされた説明では。朝晩のごはん付きでリーズナブルに泊まれる宿だそうだ。


 マルコさんは宿に入り主人であろう男の人に声を掛け俺の紹介をしてくれた。


 こっちも筋肉モリモリでデカい⋯⋯。


「ソラといいます。暫く泊まりたいのですが部屋空いてますか?」

「ああ。良いぞ。1部屋空いてるから、そこを使うといい」

 制服と手持ちのあれこれを売った金がまだある。

 1泊あたりの値段を聞くと。1ヶ月位なら働かなくても泊まることが出来そうだ。

 料金前払い制で。まとめて払ってもいいので1週間分を先に払う事にした。


 宿屋は食堂も併設されているのでマルコさんとはそこで別れ。泊まる部屋へと案内された。

 3畳くらいのスペースに木製の簡単なベッドと机と椅子が置いてあるだけの部屋だった。これが異世界クオリティ⋯⋯。


 鍵も内側から掛けれるようになっている。もっとも貴重品は〈収納魔法(アイテムボックス)〉で持ち歩けるので。部屋に荷物を置くことはほとんどないだろう。


 少し部屋で休んだ後。夕食を食べに食堂にいくとマルコさんは飲んだくれていた。

 夜は食堂が酒場になるのだそうだ。


 夕食は野菜とウサギ(魔物)肉のスープと硬いパンだった。

 スープの味は薄目。

 硬いパンはスープに浸して柔らかくしてから食べた。意外とウサギ肉が旨かった。


 初めての異世界飯はそこまで拒否反応を示すものではなかった。あとマルコさんはぐでんぐでんに酔っぱらっていた。うーん。コレが異世界の大人⋯⋯。


 食事を終え部屋に戻った俺は、怒涛の一日を過ごした疲れが一気にきたのか。

 硬いベッドに横たわると、そのまま眠りに落ちていった。


 スヤァ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
悪いようにしなかった3人組はマッチョとモヒカンとスキンヘッドかな^_^
貨幣の価値を説明しないところに好感を持てました! どうせ後で使うことのないにものを長々説明する小説が多いので珍しくて感想を書きました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ