210.青春アミーゴ
ちびっ子にカツアゲされ、俺は4つの魔石を失った。
翼が倒した魔物の魔石だが、王国から支援を受けてるこの人たちには必要ないんじゃない? そう思って懐に入れたのだ。結果奪われてしまった。
そして奪われた魔石はちびっ子の懐へとしまわれた。
「魔石は私がもらうことになっているのよ、実家に仕送りもしないといけないし」
何も言えなくなる事情はずるいと思う。俺はニノの頭を撫でまわした。
「やめてよね!」
はっはっは。なかなかからかい甲斐のある奴だ。
俺たちは先を進んだ。
◇
その後、6階層目を踏破し。次いで7、8、9階層と順調に進んでいった。
途中ゲバルト派の人たちと交流し、情報を得る。
どうやら、このダンジョン内に『大帝の牙』とかいう連中は居ないそうだ。無駄な争いはしなくてすみそうだな。
それでもゲバルト派の人たちは、しばらく巡回を続けるそうだ。敵対する組織が居なくても魔物を殺すと言っていた。頭ゲバルトかよ。
そんなわけで、俺たちは最下層の10階層目に突入していた。
この階層までくると、さすがに迷宮のようになっていた。
なっていたのだが、攻略済みのため。アインがボス部屋までの道のりを知っている。
そう、ダンジョンの最下層には必ずボスが居るらしい。
このボスという存在は、ボス部屋に必ずリスポーンする魔物のことを指す。時々レアな上位種もいるらしいが、確率はかなり低いそうなので、それについては心配しなくてもいいだろう。
ボスがリスポーンしていいのか? という疑問もあるが、そういう世界なんだ。細かいことを気にしていると頭がパンクする。
それに、リスポーンにはそれなりに時間がかかるらしい。そのせいで、ダンジョンのボス部屋前に順番待ちの列ができるとか。なんというか、夢もへったくれもない光景だ。
とはいえ、ボスを倒した後には宝箱が必ず現れるという。
内容はピンキリだが、それでも確実に報酬が手に入るという事実に、冒険者はダンジョンに潜るのだという。
正直な話、俺もその1人だ。
ダンジョンに潜った理由も、一攫千金を夢見たからだ。シャロともそんな話をしていた。
とんでもなくレアな魔道具を手に入れ、それを売った金でより強い装備を買ったり、旨い物を食べたりする。そんな話を時々していた。
夢を語るだけならタダだ。元の世界でも同じだ、宝くじで1等を当てたら「何に使おう」そう考えるのは誰だってする。家を買ったり、好きな物を腹いっぱい食べたり、欲しい物を片っ端から揃える。そんな妄想は誰にでもあるものだ。
冒険者は自分の命をBETし、高額な報酬を得る。ここはそういった世界だ。
俺も何度となく命の危機にさらされてきた。さっきだってダンジョンの罠に命を脅かされた。……俺が勝手に踏んだ? 知らんな。過去は振り返らない主義だ。
そんなわけで、俺たちは今。このダンジョンのボス部屋の前に居た。因みに先に3組いるので4番目だ。
3組の冒険者たちが、先程からチラチラ見てくるので、俺はアナの前に立ち壁になる。
いや、ホント気にしなくていいんで。ここまで来て順番譲られるのは居た堪れなくなる。ホント気にしないで、ちゃんと待ちます。
ちゃんとそれとなく声に出してアピールもする。あくまで仲間との雑談風を装って。
「いやー、ボス部屋前で休息を取れるのはいいなー。先に3組も居るし、十分休めるよなー」
「どかそうか?」
やめて、ホント止めて。俺はアナの肩を両手で掴み、座る様に誘導する。
「お、お腹空いてない? シャロ! マリアさん! お腹空いてるよな! 少し飯食おうぜ!」
「えー? まあいいけどー」
「私もいいですよ~」
よし。これで時間が稼げる。おっ、一番前のパーティが入って行った。よしよし。
その後、全員で軽食を摂り。少しばかりの休憩を取った。
ダンジョン内でスープの良い匂いをさせるのはどうかと思うが……まぁいいか。
◇
目の前のパーティが、ボス部屋に入っていった。
ついに俺たちの番が来る。
そこで俺はある思いをみんなに伝えた。
「みんなちょっと頼みたいことがあるんだが、いいか?」
「どうしたの空」
全員を代表して、翼が返事をした。
「ボスなんだが……俺と翼の2人で戦ってもいいか?」
俺は翼と一緒に戦ってみたいんだ。道中はパーティー毎の戦闘だったので、機会がなかった。
どうせ全員で部屋に入るんだ、危なくなったら加勢してもらえばいい。
「いいんじゃない? ここのボスはハイオークなんだし。それに私もいるから、万が一なんて起きないと思うよ」
「……そうだな。危なそうなら加勢する。それでいいな?」
「ああ。翼もいいか?」
「もちろん。僕も空と一緒に戦いたいと思っていたからね」
さすが翼だ。俺と同じことを考えていたか。
そう。俺たちは2人で1つだ。地元じゃ負け知らず……そうだろ、翼。
俺が山Pでお前が亀梨。お前が修二で俺が彰。…………やっぱり俺が亀梨でもいいか?
「すまんな翼。お前が山Pで俺が亀梨だ」
「え? あ、うん。わかった……なにが?」
「ふっ……さあ! 行こうぜ!」
「わかったよ。行こう!」
俺たちはボス部屋の扉を開いた。
◇
ボス部屋は、それなりに広い空間が広がっていた。
部屋の中央に1匹の魔物が佇む。
豚のような頭をした人型の魔物、オークだ。
ゴブリンと並ぶ、ファンタジー世界の御三家のような人型の魔物。普通のゴブリンより体が大きく、ハイゴブリンと同じくらいの背丈だが、横幅がかなり違う。ハイゴブリンよりずんぐりしており、言い方を変えればデブだ。
そして、手には剣を持ち鎧も着ていた。
ゴブリンと違ってオークは装備が豪華だな。俺はそう思った。
「おい……あいつはオークナイトだ!」
アインが言った。
「ここのボスはハイオークじゃないのか?」
アナがここのボスはハイオークだと言っていた。……ということは引き当てちゃったか?
「オークナイトはハイオークの上位種だ。滅多に起きないハズレを引いちまったらしい」
そうか。これが低確率で起こるというボス部屋のレアパターンか。ある意味もっているな。
扉のすぐ側にいるので、オークナイトは部屋の中央に佇んだままだ。何故かは知らないが、ボスはある程度近づくか、攻撃を与えないと襲ってこない。ちなみに罠を設置しようとすると問答無用で襲いかかってくる。多分敵意とか、そういうのに反応しているのかもしれない。
さてどうしようか……さっき翼と2人で戦いたいと言ったが、上位種が出てくるとは……。
「空。行こうか」
「……ああ。いっちょ、あの野ブタをプロデュースしますか!」
翼がやる気満々なので俺も乗ったが、なに、野ブタをプロデュースって、ノリに任せて訳分からんことを口走ってしまった。あのオークをプロデュースしても、人気者になんてなれないだろ。
せめて性別を変えてこい。あとはいい感じに「磨けば光るじゃん」的な女の子になってから出直してこい。
……ん? なんか翼が興奮してるな。多分俺と一緒に戦えるのが嬉しいんだろう。
「翼。冷静になれよ、ミ・アミーゴ」
「ごめん嬉しくてつい……ミアミーゴ? あっ! さっきから変なこと言うと思ったらそういうこと?」
「変なこととは失礼だな」
「いや、いきなり僕が山Pとか言われても……」
「今はそんなこといいんだよ。目の前の敵に集中するぞ!」
「はいはい、わかりました」
翼はやれやれといった感じで、高そうな剣と盾を構える。
俺も同様に盾を握り、剣を鞘から抜き放つ。
この世界に来てからの初めての共同作業だ。行くぜ!
まずはオーク入刀からじゃあああ!
俺と翼は、オークナイト目掛けて駆け出した。
KATーTUN解散は悲しいですね。




