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異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】  作者: ノエ丸
目指すは王都編

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190.武闘都市コンクリフト

 

 王都への旅 11日目。


 魔道都市を出発してから1日が経った。


 飛空艇に乗ろうと思っていたが、値段が馬鹿みたいに高く、諦めるしかなかった。

 しかも昨日、魔道都市を出発してしばらくすると、俺達の頭上を飛空艇が飛んでいった。

 さすがに圧巻だった。飛行機が飛ぶのは何度も見たことがある。だが、船が空を飛ぶ光景は、後にも先にもこれが初めてだろう。

 いつか乗ってみたい。その光景を見ながら、俺は思った。でもやっぱり、5日の工程を1日に減らすだけで、あの値段を払うのは無理だ。

 勇者も値段を聞いて。「アホか」と言っていた。

 実際アホでしょ。見栄の為だけに大金を払う。それが貴族だという。


 魔道都市は色々とすごいところだった……。

 都市のいたる所で魔道具が稼働していたが、あの動力は一体どこから来ているのだろうか。

 冒険者ギルドから、魔石を買い取っていたりするのかな?

 もしかしたら、俺の知らない方法で効率よくやっているのかもしれない。

 そんなことを考えていても仕方ないか。


 今は、目の前の事に集中するしかない。


 俺は、8個の的を睨みながらそう思った。あの野郎、数を倍に増やしやがった……。

 勇者が魔道都市を出た辺りで急に、「的の数、倍ね」とか言い出してこうなった。


 不規則に動く8個の的。

 王都に着くまでに、最低でも1回は成功しなければならない。

 取り敢えずは、今までと同じやり方でやってみるしかないか。


 俺は魔法を発動し、的に向けて撃ち出した。


 ◇


 街道を走りながら、訓練を続けていた。

 魔法を1発、2発と撃ちながら、馬を操る。もう慣れたものだ。もっとも、ただ真っ直ぐ走らせているだけなのだが。

 それにしても、馬車の数が増えてきたな。

 俺達が乗っている馬車は、馬が1頭だけなので速度はわりと遅めだ。だからか、俺達の馬車を追い越していく馬車が増えてきていた。


 たしか後4日くらいで王都に到着するんだっけ。やはりと言うべきか、王都に行く馬車は多いんだな。


 今日も3台の馬車に追い越された。

 別に焦る必要は無い。俺達は急ぎの旅じゃないんだ、ゆっくり行こう。


 今日もいい天気だ。



 王都への旅は続く。


 ◇


 王都への旅 12日目。


 街道を馬車で進み。

 次なる目的地が見え始めた。


 魔導都市を出た際に、アナから聞いた情報によると。

 王都の途中には、もう1つ都市があるという。


 その名も『武闘都市コンクリフト』


 都市の至るところにコロシアムがあり、毎日武闘大会が開かれていた。

 力こそが全てという風潮が根付いた街。

 大会で優勝し名を上げるため、各地から猛者が集まり、血と暴力が渦巻く街。


 そんな街だが、観光地としての人気は高いらしい。

 毎日どこかで大会が開かれているので、客が飽きることはないのだろう。

 賭け事も盛んだとか。


 魔道都市とは正反対のような所だ。


 その武闘都市には、日暮れまでには着くだろう。

 女性陣は興味無さそうだが、俺は違う。

 俺も男だ、武闘大会に興味が有る。実際出場するかは別として、やはり1度は出てみたいよな。自分の力がどれほどのものなのか試したい。だって男の子だもの。男とはそういうものだ。


 いざ! 武闘都市コンクリフト!


 ◇


 おお、なんというか……すごい外壁だ。

 武闘都市に近づいて、最初に目に入ったのは、ボロボロの外壁だった。

 魔物の襲撃が多いわけではなく、外壁を使って、勝手に技の練習をする連中がいるかららしい。さすがは武闘都市と言うべきか。住人は脳筋しかいないのかもしれない。


 門で手続きしている人達も、強そうな見た目をしている。コロシアムに参加するためにやってきたのだろうか。


 街にはいる人達がそれなりにいたので、入るまで結構時間がかかってしまった。

 時間は……そろそろお昼か。宿を借りてから、遅めの昼飯にしますかな。




「すごいな……」

 街の中央には、見上げるほど大きなコロシアムがそびえていた。

 外にいても歓声が響き渡るほどの熱気だ。

 道行く人々も、歴戦の猛者という風格を漂わせていた。この人達があの中で戦ってるのか。


 それにしても、すごい街だな。

 中央の大きなコロシアムのほかにも、小さいコロシアムがいくつもある。

 さらに至るところで、賭け事が行われている。内容は単純で、どちらが勝つか予想するものだ。喜ぶ者もいれば、頭を抱える者もいる。賭け事はやらない方がいいな。


 とにかく宿を探さねば。

 手頃な宿を求めて、俺達はしばらく街中を歩いた。しかし……どこも高い! 観光地だからか? 他の街の3倍ってどういうこと?

 これにはアナも首を傾げた。


「前はこんなに高くなかったんだけど……」

「なにか理由でもあるんですかね〜」

「あっ。あれ見てー」

 シャロが、ポスターのようなものを指さす。そこには……。


『歴代優勝者大集合! 我こそナンバーワン決定戦!!』と書かれた看板があった。

 これのせいか?

 あとで知ったことだが、年12回の大会で優勝した者と、前年の優勝者による計13名でトーナメントが行われるらしい。しかも開催日は5日後だ。これのせいで、宿屋はどこも値段を釣りあげてるらしい。

 理屈はわかるが、やはり自分が被害に遭うとムカつくな。……今日は、街の外で野営するしかないか。


 そう思ったが、アナは違ったらしい。

「うーん。仕方ないね、あそこに泊まろうか」

「あそこ? 宿の心当たりでもあるのか?」

「宿というか……まぁついてきて」

 どちらにしろ、当てがないのでアナを頼るしかないな。

 俺達はアナの後ろをついて行った。


 ◇


 なるほど。

 目的地に着いて、俺はアナの考えを理解した。

 なぜなら、目の前には更地が広がり、テントや長期間暮らしていそうな人々がいたからだ。


 よし。ここをキャンプ地とする!



 アナの話では、この更地は街側が野営用に用意した土地らしい。要するに、金の無い連中はここで寝ろということらしい。実際、かなりの人数がいる。

 多分これからどんどん人が増えてくんだろうな。場所取りだけしとくか。


 俺達は、野営地の端に小屋と馬車を並べて設置した。さすがにど真ん中には置けないしな。


 設置を終え、昼飯を食べに街へ戻ろうとしたその時、ガタイのいい男がこちらへ歩み寄ってきた。


 なんだ? もしかして、この野営地には何かルールでもあるのか? そう思った。


 男は言った。


「お前。血濡れの魔女だな?」

 どうやらアナに用があるみたいだ。アナはそれを無視して街に向かおうとした。視線すら向けないのはさすが過ぎる。


「……待ちな」

 男はアナの目の前に躍り出る。


「お前。血濡れの魔女だな?」

 男はもう1回やり直した。アナさんの返答は?!


「……」

 無言で男を避け、そのまま歩き出した。


「ま、待ちな!!」

 さすがに男も声を荒らげた。ガン無視だもんね。なんか邪魔なのあるな、くらいにしか思ってなさそう。


「血濡れの魔女! 俺としょうぶえええええ!!」

 男は地面から飛び出した氷の柱に吹き飛ばされた。男は結構な距離を飛び、そのまま地面に落ちた。あ、起き上がった。


 男は地を蹴り、一瞬で距離を潰した。

 手にはいつの間にか、剣が握られていた。男はアナに向けて剣を振り下ろす。すると、アナと男の間にシャロが割って入り、男の剣を受け止めた。


 男の顔は驚いていた。アナも同様に目を見開き「へー」と呟く。

 男が再度剣を振るうも、シャロは全て盾で防ぎきった。

 す、すごい成長してるぅー!? 俺も驚いた。

 シャロの活躍を目の当たりにしたアナはひとつ頷き杖を取り出すと、切っ先を男に向け唱える。


「〈氷の嵐(アイス・ストーム )〉」

 杖の先端に青い魔法陣が浮かび上がり、凍てつく風が渦を巻き、吹き荒れる雪と氷の欠片が容赦なく男を襲う。男は数歩後ろに下がり、何とか持ちこたえているようだ。氷の嵐が止み、残ったのは全身傷だらけの男が1人。男はまだやる気のようだ。


「結構頑丈だね」

 アナはそう言うと、杖で男の頭を殴りつけた。それがトドメになり、男は倒れ気絶した。


 アナは杖をしまい、シャロの頭を撫で回した。あれに反応できるとは……シャロ。お前、強くなったな。

 いつの間にかシャロに追い越されつつある事実に、俺は震えた。強くならねば……。


 そのことを胸に刻み、俺達は昼飯を食べに向かった。

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