186.クソ酔っ払い共
王都への旅 7日目。
今日も訓練に勤しむ我等が一行。
取り敢えず旅の行程としては、順調そのもの。
だが、ココからが本番だ。
アナが言うには。王都に向かう道中で魔物の襲撃が1番多い地帯に入るそうだ。
馬車の出窓から、マリアさんの手が出てきてある方向を指さした。早速お出ましの様だ。
馬車を止め、魔物の襲撃に備える。
マリアさんは呪いの副産物で、ある程度は魔物の方向が分かるという。マリアさんが黙って一点を見つめると、大体その方角から魔物が襲って来る。
原理は分からないが、そういうモノとして捉えるしかない。
「あっ。あの魔物は結構高く売れるから、あんまり傷付けないでね」
アナさんからの指示が入る。⋯⋯そうね。昨日は俺が魔法の選択をミスったせいで、1匹以外はスライムの餌になったしな。
俺はポーションをグイッとあおると一言。
「不味い! 〈深淵の弩砲〉!!」
4体のダチョウに腕の生えた様な魔物に向けて、黒い矢が殺到する。
⋯⋯。
ふっ⋯⋯。今度はシャロの出番はなかったな。流石に頭は狙えないので、首の根元を狙ったのは正解だったな。
3体は首が引きちぎれて死んでいる。
馬車から降り、死骸を確認しに行く。
首の残っている1体は、何本か胴体に当たっていたので、それで死んだのだろう。
しかし。なに、この魔物⋯⋯。ダチョウの羽の部分がムキムキの腕に変わっている。食えんのこれ? 手羽先的な?
取り敢えず〈収納魔法〉の中に仕舞い、馬車へと戻る。
「まあまあかな。頭に当てれば胴体は無傷でまるまる残ったと思うよ?」
確かに頭に当てていれば、胴体は無傷だった。ギルドに売る時は、傷が付いてると当然減額されたりするからな。この魔物は首を跳ね飛ばすのが正解か。それぞれの魔物にあった討伐方法があるか⋯⋯。冒険者というか美食屋みたいだな。俺にノッキング技術が有れば⋯⋯。ノッキンダメージノッキン、これ以上はダメだな。
別の事を考えよう。
「アナ。この魔物って食べられるのか?」
「食べられるよ。ステーキにして食べるのが一般的かな。お肉の味が強くて美味しいよ」
「そうか。次の野営地で解体して食べてみるか」
「本当? 楽しみだな〜」
隣に座りながら嬉しそうにするアナ。可愛い。
その後、数度の襲撃を受け、何とか日暮れまでに野営地に着くことが出来た。
「つ、疲れた⋯⋯」
「あたしもー」
俺とシャロは野営地地面に座り込んでいた。いや、座り込んでいるとアナとマリアさんが気を利かせて、夕飯の準備を始めてしまう。
俺は気力を振り絞り立ち上がると、昼間狩った胴体にいくつか穴の空いたダチョウを捌くことにした。
「どう捌くんだこれ」
正直鳥系の魔物は解体した事がなく、魔物を目の前にして立ち尽くす。
そうしていると背後から声を掛けられた。
「おう、兄ちゃん。もしかして鉱山都市の馬車に乗ってた奴か?」
声のする方に振り返ると、なんか見覚えのある様な無いような⋯⋯。鉱山都市の馬車?
⋯⋯⋯⋯⋯⋯あ!
「解体の人!!」
「解体の人って、ちゃんと名前は有るんだがな。まあいい。ソレ解体したいのか?」
「あ、はい。肉が美味いらしいんですけど、鳥系は解体した事が無くて」
「そうかそうか! 前と同じで美味いもん食わせてくれたら解体してやるぞ? どうだ?」
「おお! 是非お願いします!」
解体の人は早速ダチョウの魔物を解体し、いくつかの部位に切り分けた。
「ココは1番脂が乗ってて美味い所だ。ココはその逆で赤身が多く肉の味が強い。ココはコリコリとした食感が楽しめるぞ。あとは魔石だが⋯⋯。ダメだな。かなり削れてるから売り物にならんな。どうやったらこうなるんだ? ああそうか、魔女が居たな」
各部位の説明を聞きながら、使い道を考えていたので聞き流すことにした。
取り敢えずこれだけあれば、残りの日数分も問題無いな。
「ありがとうございました」
「おう。俺はあっちに居るから出来上がったら持ってきてくれ。じゃあな」
「一緒に食べないんですか?」
「勘弁して下さい」
解体の人は、足早に自分の仲間の元へと戻って行った。そんなに怖いのか。よく声掛けられたな。
まあいいか。早速調理開始だ。
確か⋯⋯、胡椒は焼く15分前位にするんだったな。それで、塩は焼く直前に。あとは肉に馴染ませる為、揉み込んで。
ついに出番だ魔道コンロ。
焚き火じゃ、均一に火が通りにくいからな。焼き加減は⋯⋯、分からん。最初はウェルダンで焼いてみよう。
いけそうならミディアム、レアも試してみよう。⋯⋯レアは怖いな、ミディアム辺で止めとこう。
魔道コンロに魔石をセットし、火をつける。おお〜、文明的〜。
熱したフライパンに、赤みの多い部位を乗せる。良い音だ。
取り敢えず片面をしっかり焼き。ひっくり返して残りもしっかりと火を入れる。
よし焼けたな。
まな板の上に乗せ蓋をして少し休ませ、4等分に切り分けそれぞれの皿へと肉を盛る。味見用だから、こんなもんでいいだろう。
「「「「いただきまーす」」」」
「うまー!」
「おいしー」
「おいしいです~」
ふむ。こんな感じか。確かに美味い。肉の味がしっかりしているな。これなら塩と胡椒だけでも問題無い。うまー。
次はミディアムで焼いてみよう。
さっきよりも焼き時間を短くして。少し寝かせてから切り分ける。
切った断面がほんのりピンク色の状態。いい感じだ。
一口噛めば口の中に肉汁が溢れる。血生臭さは殆んど無い。ガツンと肉! という味が伝わってくる。
うまい~~っ‼
取り合えず、これと同じのを解体の人に持ってけばいいか。
解体の人の分を持って行った後に、他の部位も4人で楽しんだ。ガハハハ。ステーキを食べながら飲む酒は美味い!
⋯⋯い、何時の間に酒を!?
気付けば酒の瓶がテーブルの上に有ったので、間違ってコップに入ってしまったのだろう。仕方ない仕方ない。野営地で飲酒何てもってのほかなのに!! コップに入ってしまったのなら飲むしかない。勿体ないから。
頬を赤らめたアナが、野営地を囲む様に氷の壁を作り出した。
「アッハッハッハ。これで夜通し見張る必要なくなったし、皆呑んじゃえ~!!」
「アナちゃんさすがー!!」
「ひゅーひゅー」
俺等が騒いでいると、解体の人が寄って来た。
「お、おい。いいのか? そんなに吞んで。見張りはどうするんだ?」
「アナが氷の壁作ったんで大丈夫ですよ! あなたも吞みましょう! 肉もまだまだ一杯ありますよ~! さあ!」
「⋯⋯⋯⋯そうか。魔女の温情と云う奴だな。分かった! 付き合ってやる! お前等、俺等も呑むぞ!」
「「「おおおお!!」」」
その後の宴会でダチョウの肉が丸々1匹分消えてしまった。
その光景を見ていた勇者がポツリと。
「クソ酔っ払い共め⋯⋯」
王都への旅は続く。
酔っ払いの笑い声が夜空を彩る。
それはほんの少しの息抜き。
そして次の日後悔する。
頭の痛みを抱えながら。
もう二度と飲まない⋯⋯と。




